イノベーション創出とデザイン思考

ビジネスモデルにイノベーションを起こす

Topic 46 セブンプレミアムは「手軽さ」と「上質さ」のトレードオフであるという固定観念を捨てて実現した

コンビニエンスストアの価値はどんなところにあるでしょうか?
価値とは選ばれる理由です。
コンビニエンスストアで買い物をする理由は何ですか?と問われると「手軽さ」「便利さ」と答える方が多いのではないでしょうか。
 
流通業者が独自に開発した商品のことをプライベートブランドと言います。一方で、メーカーが開発した商品のことをナショナルブランドと言います。
プライベートブランドはナショナルブランドより割安感があります。
ところが、セブンプレミアムはプライベートブランドでありながらも割安感による「手軽さ」を最優先としないことに基本コンセプトがあります。
それよりは、「上質さ」を優先して追求することにしたのです。
消費者は、「手軽さ」だけでも、「上質さ」だけでも満足しないと発想したのが発端とのことです。
お客さんの立場で発想するとすれば、割安でなかろうと良いものであれば買うと言うことです。
コンビニエンスストアを利用するお客さんで「上質さ」を求めている人は少数派です。そこであえて「上質さ」を求める少数派をターゲットにしたということです。
 
プライベートブランドとは割安感があるものと言う固定観念を捨てたのです。
人はだれでも何かしらの「パラダイム」に囚われています。
それをあえて捨てて発想することも必要なのです。
 
参考文献 売る力 鈴木敏文(著)

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Topic 45 共感(Empathize)がどうして必要なのか?お客さんの期待に応えるには、お客さんをより深く理解することが必要

プロダクツもサービスもあふれている世の中では、ただ良ければ売れるというわけではないです。単に良いというだけなら十分に世の中にあります。
そこで、より深くお客さんのインサイトを理解して、顧客インサイトに合致した商品を開発する必要性があるということになります。
 
マーケティングでは「顧客インサイトを理解」と言います。「顧客インサイト」とは顧客の気持ちとか顧客の本音の意味で使われています。
「insight」の意味を調べると「洞察、眼識、識見」です。顧客の行動や発言から洞察して顧客の気持ちや本音を捉えると理解できます。
あるいは、「in sight」の意味を調べると「(…の)見える所に、視界に、間近」の意味です。顧客の気持ちを視界に捉えて理解するとすれば意味が通ります。
インサイトの言葉自体は、かなり曖昧な使われ方をしているのは否定できないです。
インサイトを「Think」思考、「Feel」感じる、「Interest」興味や関心、「Desire」望む、あたりに置き換えるとしっくりと来ます。
 
昨今では、ペルソナマーケティングと言われるマーケティング手法の活用がいろいろと行われています。
ペルソナとはある特定の人物像のことです。その人物像に的を絞って商品開発をし、マーケティングを行うと言うことです。
顧客セグメントではなく、どうしてペルソナなのでしょうか?
それは、特定の具体的な人物像の方が顧客インサイトを理解しやすいからです。
顧客セグメントのようなザックリとした人物像では共感(Empathize)は難しいのではないでしょうか。
「Think」「Feel」「Interest」「Desire」のような人の内面を理解する行為が共感(Empathize)なのです。
そのためには、 特定の人物像を想定する必要があるということです。
 
共感(Empathize)するには、ゲイン(gain)とペイン(pain)の2方向からアプローチをする方法があります。
ゲインとは得たいこと、ペインとは無くしたいことです。
自社のお客さん、あるいはお客さんになるかも知れない人には、どんなゲイン(gain)やペイン(pain)があるでしょうか?
 
ゲイン(gain)とペイン(pain)については、こちらでも述べています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/07/24/074029
 
共感については、こちらでも述べています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/06/25/094823

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Topic 44 お客さんの声を大切にしていますか?知らず知らずのうちにお客さんに見捨てられています!

自社のプロダクツやサービスに対しての忠誠心の高い顧客のことをロイヤルカスタマーと言います。ロイヤルカスタマーになってくれたお客さんは競合他社に心移りをすることはないのです。
クレームの連絡があったときは、クレームの対応次第でロイヤルカスタマーにしてしまうチャンスなのです。
クレームに限らず、問い合わせに対してきっちりと対応をすれば、お客さんから信頼を得られ、気持ちは大きく近づくことになります。
 
シンディ・アルバレス氏が著した「リーン顧客開発 ―「売れないリスク」を極小化する技術」にお客さんから問い合わせがあったときに4つの「A」で対応することが述べられています。
・Apologize 謝る
・Admit 非を認める
・Ask 質問する
・Appreciate 感謝する 
 
そもそもお客さんに電話をさせるような事態にしてしまったことは、デザインとしていけてないのです。
素直に非を認めて、お客さんが話しやすいようにするのです。お客さんに非があるように思わせるなんてもってのほかです。
そこで、どのような状況で、どのような使い方をしたのか話しを聴くチャンスができるわけです。お客さんの声にはイノベーション創出のヒントがあるかも知れません。
ほとんどのお客さんがサイレントマジョリティです。何も言うことなく、自社のプロダクツやサービスが見捨てられてしまうのです。
問い合わせを頂けたことに感謝をする気持ちが必要です。
 
筆者は、とある会社のカスタマーサポートに電話をしたところ「そのような事象の問い合わせは受けたことがないです」と言われたことがあります。だから対応するのは難しいような様子でした。
その後は、その会社の製品とは関わらないことにしています。
他社製品に乗り換えて、カスタマーサポートも親切な対応であり、良かったと思っています。
 
カスタマーサポートは、お客さんに対する姿勢を量るには、あまりにも分かりやすいバロメーターです。

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Topic 43 ニールセンのユーザビリティ特性、プロダクツの開発は使う人の立場になることが最重要課題

ニールセンはユーザビリティには5つの特性が備わっている必要があると説いています。
プロダクツに不満が生じるときは、次のうちのいずれかがいけてないと言われると納得感があります。これらの項目は人間の本質的な願望として満たされて当然と考えるべきでしょう。
・学習しやすさ 
 簡単に学習が出来ること。分厚いマニュアルは読みたいとは思いません。
・効率性が良い 
 使い方を覚えてしまえば生産性が良く、効率的にやりたいことが出来ること。
・記憶しやすい 
 しばらく使わなくとも、次も悩むことなく、すぐに使えること。人間は忘れる動物であることを前提に。
・間違いにくい 
 エラーの発生率は小さく、エラーが起きてしまっても回復可能で、致命的なエラーは起こらないこと。簡単にエラーが起きてしまうのはデザインがいけてないということ。
・主観的満足度
 楽しく使えて、満足感を得られること。体験価値は欠かせません。
 
D.A.ノーマン氏が著した「誰のためのデザイン?」には、印象深いフレーズが多く登場しますが、その中に人間中心デザインであるためには、使う人の「願望」「ニーズ」「能力」に合致する必要があると述べているフレーズがあります。
製品は人が使うことが大前提です。人間中心デザインはデザイン思考の基本です。
機能を実現することばかりに囚われて、人が使うことが前提になっているとは言えなくなっていませんでしょうか。

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Topic 42 お客さんからの声は十人十色です。そこで、どのように対応しますか?

日頃、仕事をしていればお客さんからいろいろな声が聞こえてきます。
十人十色です。それぞれに置かれた状況、コンテキスト(context)によりけりでもあります。
 
ぞれぞれに違ったニーズがあるように聞こえたとしても、実は同じモノを求めているのかも知れません。
逆もしかりです。同じモノを求めているように聞こえたとしても、それぞれに違うニーズがあるのかも知れません。
 
居酒屋を例にします。
居酒屋でお酒を飲む人は様々ですが、楽しいひと時を求めているのは同じです。
居酒屋を宴会の会場として利用する行為は同じでも、そこで何を成し遂げたいかはお客さんによって異なります。
 
要するに、お客さんの声をそのまま受け取らないことです。
どうして、そんなことを言っているのか、一歩踏み込んで、何を求めているのか?お客さんのニーズは何なのかを考えるプロセスが必要なのです。

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Topic 41 デザイン思考は新市場の開拓に向いていないのか?

市場を大きく2つに分けるとします。
・既存の市場
・新市場
 
デザイン思考の根源的なところは「人間中心」「人間が起源」にあります。
なので、お客さんの声を聴いたり、お客さんの様子を観察したりします。
今いるお客さんを対象にすれば、既存の市場に対するイノベーション創出となりましょう。
 
そこで、デザイン思考は新市場の開拓に向いていないのか?と問われるとすれば、答えは「NO」です。
新市場の開拓にも使えるメソッドだからです。
 
デザイン思考のプロセスは、いくつか示されているが、だいたいは同じです。
「共感」「問題定義」「創造」「プロトタイピング」「テスト」の順と捉えて頂いて大丈夫です。
 
ポストイットを例にします。
発端は教会にいる人の行動観察からです。
教会にいる人が本に挟んであるしおりを落としている様子を見たのが始まりです。
言うまでもなく、挟んであるだけなので落としてしまうのです。誰もが経験があると思います。
 
ポストイットに至る経緯がデザイン思考のプロセスになっています。
「共感」、教会にいる人に対しての共感で、挟んであるしおりが落ちなければ快適に本を読むことができるはずと気づきを得る。
「問題定義」、挟んであるしおりが落ちないようにする。
「創造」、貼ったり、はがしたりを繰り返して行えるしおりを開発する。
 
もとはと言えば、強力な接着剤を開発するはずが、弱い接着剤を偶然に開発してしまって、どうしたらいいのかと思っていたときの発想とのことです。
ポストイットはしおりの役目にとどまらず、メモ用紙やブレインストーミングのアイデア出しなどにも使われています。
ポストイットをしおりと言う人はいないです。ポストイットはポストイットです。しおりとしても使える便利な事務用品と言うことなのです。
今となっては、ポストイットは事務所に欠かせない存在であり、ポストイットの市場ができています。
 
マーケテイングリサーチをすれば、ポストイットの需要を発見することができたでしょうか?
きっと、答えは「NO」です。
 
デザイン思考は、マーケテイングリサーチでは発見できない需要を顕在化するメソッドです。
メソッドなので、それを活用する人次第なのです。それはデザイン思考に限った話しではないですね。
 
以前、革新的なイノベーションでなくともデザイン思考は活用できることを投稿しました。
こちらもご参照ください。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/08/02/080951

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Topic 40 ガーリーテストによる持続的な競争優位性を求める方程式

ベンチャーキャピタリストであるビル・ガーリー氏が提言するガーリーテストがあります。
そのガーリーテストに持続的な競争優位性の項目があります。
持続的な競争優位性は、「顧客価値×独自性×模倣困難性」で求められるとのことです。
 
顧客価値とは、顧客にとってのメリットやベネフィットです。
独自性とは、顧客から見て異質な存在に見えるかどうかです。どれだけ尖がって見えるかです。
模倣困難性とは、競合他社のただ乗りリスクの回避です。
 
この式の顧客価値と独自性と模倣困難性は、VRIO分析のVRIに置き換えて見ることが可能です。
VRIO分析とは、経営資源の力を量るバロメーターです。
・Value(経済価値) 市場に対して経済的な価値を生み出せるのか?
・Rarity(希少性) 経営資源を保有する競争相手は少ないのか?
・Inimitability(模倣困難性) 経営資源を他の競争相手が模倣するのは困難か?
・Organization(組織の有効活用性) 経営資源を活用できる組織を保持できているのか?
 
顧客価値、独自性、模倣困難性は「人」にも依存するものでもあります。
接客の重要要素に、「目配り」「気配り」「心配り」があります。これは言うまでもなく属人的であり、相当の教育と経験がなければ高いレベルに上げることはできず、模倣は困難です。
お客さんに対して、この店ならではと独自性を感じさせ、体験価値を提供するものです。
また、製造業であれば従業員が持っているノウハウや技術は他社が真似できるものではなく、顧客価値、独自性、模倣困難性を生み出す源泉となります。
 
「人」を大切にして、育てることは企業の成長に欠かせないのです。
従業員による日々の試行錯誤が継続的なイノベーションにつながるのです。
試行錯誤こそがデザイン思考そのものとも言えます。
 
デザイン思考の根源的なところは「人間中心」「人間が起源」にあります。
ここでの「人間」とは、お客さんに限ったことではないのかも知れないのです。
 
メリットとベネフィットについては、こちらでも述べています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/08/01/083346
 
VRIO分析については、こちらでも述べています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/08/04/073328
 

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Topic 39 弱みの克服よりは強みを伸ばすことに注力する

自社の経営資源を検証したときに、強みはこんなところにある。ここが弱みになっているとかあると思います。
全てにおいて強みがある経営資源を保有しているとか、なかなかあるようなことではないです。
 
そこで、弱みの克服に必要以上に力を入れないことです。
かけられるコスト(お金・時間・手間)は有限です。
弱みは致命的にならない程度に留めておけば良いのです。
それよりは、強み(キーリソース)を強化して活かすことにコストをかけて、より尖がった価値を生み出す方が有効です。
弱みを克服することに力を入れ過ぎると、強みを弱めかねないことにもなります。
 
ある特定の事実(ファクト)を見てもそれが強みなのか弱みなのかは経営戦略によりけりでもあります。
アマゾンはロングテールでありとあらゆるジャンルの書籍を取りそろえて、インターネットによる無店舗で販売しています。
一方で、蔦屋書店は店舗販売です。取り扱う分野を絞り込み、特定のジャンルの専門書店とし、コンシェルジュによる相談や提案などを行うことによる徹底した対面販売を実施しています。
アマゾンと蔦屋書店は、もとより経営戦略が大きく異なりますが、経営資源の観点からすれば、全くの真逆でありながらも、それぞれに成功を勝ち取っています。
 
今ある経営資源をどう活かすかなのです。
 
補足です。アマゾンが実店舗を持つ動きがありますが、これまでの歴史という観点から述べました。

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Topic 38 VRIO分析は経営資源の力を量るバロメーター

経営資源は、ヒト・モノ・カネのような有形資源に、ノウハウや情報のような無形資源も加えて検討をします。
 
経営資源に対して、次にある問いかけをします。
・Value(経済価値) 市場に対して経済的な価値を生み出せるのか?
・Rarity(希少性) 経営資源を保有する競争相手は少ないのか?
・Inimitability(模倣困難性) 経営資源を他の競争相手が模倣するのは困難か?
この3つの問いかけに全て「YES」となって、優れた経営資源を保有していることになります。
 
・Value(経済価値)に対して「NO」であれば、競争劣位となります。
・Rarity(希少性)に対して「NO」であれば、競争均衡となります。
・Inimitability(模倣困難性)に対して「NO」であれば、一時的な競争優位となります。
 
次に組織に対して、問いかけをします。
Organization(組織の有効活用性) 経営資源を活用できる組織を保持できているのか?
この問いかけに対して「NO」であれば、競争力ある価値を創造できるとは言えないことになります。
 
ポイントになるのは、最後に組織に対しての問いかけがあることです。
どんなに優れた経営資源を保有していても、組織がいけてなければ、競争優位とはならないのです。
 
どんなビジネスモデルを描いたとしても、そのビジネスモデルを実行するのは組織です。
どんなアイデアでも活かせるかどうかは組織にかかっています。
組織をどうデザインするかは大切です。
そして組織を構成するのは、言うまでもなく「人」です。
ビジネスの基本は「人」にあるのです。
 
少し補足します。
VRIO分析のようなフレームワークは現状把握のチェックリストになる有効なツールです。
フレームワークはロジカルシンキングで言うところのMECE(漏れなく、だぶりなく)とするものです。
このようなツールも適宜取り入れることは、デザイン思考でも有効であり、デザイン思考とロジカルシンキングは対立軸にはないと言うことです。

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Topic 37 デザイン思考では問題定義と創造で発散と収束を繰り返す

デザイン思考のプロセスは、いくつか示されているが、だいたいは同じで、
「共感」「問題定義」「創造」「プロトタイピング」「テスト」の順と捉えて頂いて大丈夫です。
ここで少なくとも「問題定義」と「創造」で発散と収束の繰り返しが必要です。
 
そもそも解決するべき問題は何なのか?
解決するべき問題とは、顧客ニーズです。
昨今のようにサービスもプロダクツも満たされている世の中では、自分自身にどんなニーズがあるのかも分からないのです。
言い換えれば、お客さんにニーズを問いかけても答えは返ってこないのです。
そこで、問題定義フェーズでは、ニーズを見つけるための発散と収束が必要となります。
次に創造フェーズでは、問題の解決策を見つけるための発散と収束となります。
 
英国デザイン協議会は、問題定義での「探索」と「定義」による発散と収束と創造での「展開」と「提供」による発散と収束が必要としています。
これをダブルダイヤモンドモデルと言います。
 
問題定義と創造のフェーズでは、とにかくアイデアを出します。
量が質の高いアイデアを出すのです。
 
発散と収束の繰り返しは、組織のマネージャーをイラつかせるものかも知れないです。
マネージャーは自由な発想を求めながらも予算とスケジュールの制約を求めるのです。
さらには、新しいアイデアを求めながらも失敗を認めないことがあるのです。それはマネージャーの保身かも知れません。
リソースは有限なので、組織の力学とのジレンマが発生することが多々あります。
往々にしてこのジレンマがイノベーション創出を阻んでいます。
 
「優れたアィデアを手に入れるいちばんの方法は、アィデアをたくさん持つこと」
ノーベル賞受賞 ライナス・ポーリング
 
参考文献 誰のためのデザイン? D. A. ノーマン(著)

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Topic 36 デザイン思考は革新的なイノベーションのためのメソッドなのか?

イノベーションには2種類あります。
・エボリューション 進化
・レボリューション 革新的

デザイン思考は革新的なイノベーション創出のためにあるのか?
製品を進化させることには向いていないのか?と問われるとすれば、答えは「NO」です。
既存の製品を進化させるためにも使えるメソッドだからです。
 
デザイン思考のプロセスは、いくつか示されているが、だいたいは同じです。
「共感」「問題定義」「創造」「プロトタイピング」「テスト」の順と捉えて頂いて大丈夫です。
 
曲がるストローを例にします。
発端は子どもに対する行動観察からです。
ストローで飲みにくそうにしている子どもの様子を見たのが始まりです。
子どもは背が低いのでストローに口が届かないのです。
 
曲がるストローに至る経緯がデザイン思考のプロセスになっています。
「共感」、子どもに対しての共感で、ストローを使って快適に飲みたいはずと気づきを得る。
「問題定義」、子どもでもストローで飲みやすくする。
「創造」、ストローが曲がるようにしてみてはどうか。
更に、製品化となるまでに試行錯誤があったとのことです。
 
曲がるストローは、正しく、ストローの進化です。そして、新しい価値を生み出しています。
 
マーケテイングリサーチをすれば、曲がるストローの需要を発見することができたでしょうか?
きっと、答えは「NO」です。
 
デザイン思考は、マーケテイングリサーチでは発見できない需要を顕在化するメソッドです。
それは、革新的なイノベーションに限らないのです。

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Topic 35 メリットとベネフィットの違いを認識してビジネスをしていますでしょうか?

メリットとは、サービスやプロダクツから得られる利点です。
ベネフィットとは、サービスやプロダクツから得られる体験とその感情です。
 
温泉旅館を例にします。
 
・天然成分たっぷりの温泉
・1部屋ごとに専任の中居が担当
これは、機能です。提供している事柄そのものです。プロダクツの性能も機能に位置付けられます。
 
・疲れを癒す、肌に良い
・いき届いたサービスを満喫できる
これは、機能から得られるメリットです。
 
・肌にうるおい、肌に自信
・思い出となるとっておきの時間
これは、メリットから得られるベネフィットです。言い換えれば体験とその感情となります。
 
機能とメリットとベネフィットは因果関係でつながっているのです。
 
どんな価値を提供していますか?と聞かれて、機能そのものを答えていませんか?
確かに機能価値と言う価値の分類はありますが、昨今のようにサービスもプロダクツも満たされている世の中では、メリットやベネフィットを価値と捉える必要があります。
プロダクツに関して言うならば、使いもしないような機能がいろいろとあったとしても価値はないです。
むしろ機能を必要最小限とし、シンプルな方が価値を感じる人もいることでしょう。
 
お客さんには、サービスやプロダクツから今までにない体験とその感情を得ることに期待効果があるのです。
 
自社のサービスやプロダクツからどんな体験があって、どんな感情につながるでしょうか?
 
価値とは体験すること、価値とは感じるものなのです。

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Topic 34 安全と安心の大きな違い、消費者は必ずしも論理的な思考や合理的な判断で買い物をしない

「安全で安心な商品を提供します」と、近所のお店で店内放送しています。
 
「安全」と「安心」は、似ているようで、実のところは大きな違いがあります。
「安全」とは客観的な事実に基づくものです。
厳しい法規制や社内検査をクリアしていることやトレーサビリティの提示は客観的な事実です。
一方で、「安心」は、主観的です。
いくら安全であると客観的な事実を示したところで、安心できないときは安心できないのです。
要するに、事実がどうであろうが何となく安心できないと感じることで、安全とされていたとしても念のために購買しないのです。
安心かどうかは、言い換えればリスクを感じるかどうかです。リスクを感じるようなサービスやプロダクツをあえて購買する必要はないでしょう。
 
「安全」であることは、サービスやプロダクツを提供する側の責任において実施されるものです。
「安心」は消費者が感じるものです。「安心」を感じてもらえないと消費者から見放されてしまうのです。
 
「安心」を感じてもらうには、顧客に対する共感(Empathize)から顧客インサイトを理解し、安心してもらうための行為が必要となります。
「安心」は提供するものではなく、感じてもらうものなのです。
 
なお、外部環境の出来事により「安全」なサービスやプロダクツを提供できなくなることがあるのは付け加えておきます。

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Topic 33 スーパーマーケットチェーンと宅配ボックスの組み合わせ

スーパーマーケットチェーンを展開するライフは、宅配ボックスを全店舗に設置するとのことです。
 
この取り組みは、ライフ、利用者、宅配便業者の間でWin-Win-Winの関係となっています。
3者それぞれのニーズに応えています。
・ライフにとっては、来店動機を増やし、業績拡大につなげる。
・利用者にとっては、荷物を受け取るときに自宅に居なくてよく、買い物ついでに荷物を受け取れる。
・宅配業者にとっては、配送時に不在であることのリスクを解消し、ドライバーの業務上の負担を軽減できる。
 
スーパーマーケットチェーンと宅配ボックスの「組み合わせ」です。
何もかもゼロからの発想でなくとも、現存する何かと何かを組み合わせることで、イノベーションを起こす発想は生まれるのです。
デザインとは、問題を解決することです。ライフの取り組みは、3者にとっての問題を解決する方策と見ることができます。
 

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Topic 32 追加的なサービスには、それ相応に対価をもらっていますか?

宅急便の時間帯指定配送ですが、便利なサービスです。このサービスですが無料であることが妥当でしょうか?
ヤマト運輸のドライバーの処遇改善が話題になっています。追加的なサービスであれば有料として、その分をドライバーに還元するのが当然ではないでしょうか。
 
提供するサービスで何が標準サービスで、何がオプションサービスなのか?
オプションサービス、言い換えれば追加的なサービスであれば、その分の代金をもらうのは当然です。
 
代金を頂くことで過剰にサービスを提供することが抑制できます。
健康保険で自己負担があるのは、健康保険証を持っている人が、過剰に医療サービスを受けてしまうことを抑制する意図があるのです。
長年に渡るデフレ経済で、オプションに該当するようなサービスを無料で提供することが当たり前になっていないでしょうか?
 
サービスデザインで欠かせない問いかけです。
何を標準サービスとしますか?
何をオプションサービスとしますか?

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