イノベーション創出とデザイン思考

ビジネスモデルにイノベーションを起こす

Topic 67 どんなUVP(Unique Value Proposition・独自の価値提案)を提供していますか?それには注目されるだけの理由が必要

自社が競争優位を獲得するには、下記の条件を満たす必要があると言われています。

 

重要性:顧客にとっての高付加価値のベネフィットを提供すること
独自性:競合ブランドは存在せず、自社ならではのベネフィットを提供すること
優越性:同じベネフィットを提供する競合ブランドがあろうとも、他社より優れていること
伝達性:顧客にとって目に見えるように見える化されていること
防御性:模倣困難性が高いこと、高い参入障壁があること
支払可能性:顧客にとって支払い可能な価格設定であること
収益性:ビジネスの継続に必要な収益を確保できること

 

その中でも、「独自性」がUVPにあたるところであろうが、単に「独自性」があれば良いと言うわけではないです。
「重要性」「優越性」「伝達性」「支払可能性」がないことには注目はされないでしょう。
さらに、ビジネスの継続においては「防御性」「収益性」があることも必要となります。

 

お客さんやお客さんになるかも知れない人の立場となって、どんなポジショニングをとるかは、ベネフィットと価格の2軸で捉えることができます。
ベネフィットとは、体験価値と言えます。
どんな望ましい未来を体験として提供し、それに対してどれだけの対価を頂きますか?
お得感は、ベネフィットが価格を上回っているときに感じるものです。
価格をどのように設定するのかが、いかに重要であるかは言わずもがなです。

 

ベネフィットと価格はトレードオフの関係でもあります。
多くのベネフィットを低価格で提供して、ビジネスの継続が可能かどうかは十分な検討が必要です。
ベネフィットは上質であることと読み替えても良いです。
高品質な価値を提供するには、それなりのコストが必要となることが多いです。
そのコストを回収するためには、必然的に高価格となると言うことです。

 

ベネフィットで攻めるのか?価格で攻めるのか?
トレードオフの関係にあることの両方を求めると「二兎を追う者は一兎をも得ず」になりかねないのです。

 

例えば、100円均一ショップのように、リーズナブルな価格で提供される商品で済ませてしまって良い場面もあります。
100円均一ショップで提供される品質水準でこと足りることもあります。
なので、少ないベネフィットで安価なポジショニングでもビジネスとして成り立つのです。

 

お客さんやお客さんになるかも知れない人にとってのニーズの本質を知るには、どんな状況にあるのか、コンテキスト(context)を知ることも必要ってことです。
同じ人でもコンテキストによって、ニーズが変化するのです。

 

必要最低限の価値を提供して、安価な価格で商品を提供していることがあります。
いわゆるブルーオーシャン戦略です。
ブルーオーシャン戦略はコストダウンと顧客価値の両立を実現しています。

 

LCCやQBハウスです。
LCCであれば、目的地にまで移動ができること。
QBハウスであれば、短時間に整髪ができること。

このように必要最低限のことが価値として提供されて、その代わりに安価であれば、十分なベネフィットを感じる人もいるのです。
ベネフィットと価格のようにトレードオフの関係にあることでも、やり方次第では両立が可能ということです。

 

その一方で、高価であっても、何から何まで行き届いたフルサービスを求める人もいます。
世の中の人は一様に価値を関じるわけではないのです。

 

競合他社と同等のベネフィットを提供しながらも安価であれば、価格競争では優位となるでしょう。
ですが、安価とする必要があるかどうかはよくよく検討するべきです。
安価であれば、集客力が高まるかどうかは、顧客セグメントをどこに定めるかにもよります。

 

どんなコンテキストにある人をねらうのか?
どんな価値観を持った人をねらうのか?

 

ベネフィットと価格を2軸とした場合に、どこにポジショニングをするのかの答えを導くときの問いかけとなります。

 

ポジショニングとは、お客さんやお客さんになるかも知れない人からどのように見えるかです。
自社として、ここにポジショニングがあるといくら言ったところで、外から見て、そのように見えなければ何の意味もないのです。
注目されるには、外から見て、どのように見えるかどうかが重要なのです。

同業他社と比較して異なっているように見えないことには、独自性があるとは言えないのです。注目されるだけの理由もないのです。

 

自社のことばかりで、外からの視点が足りてないことはないでしょうか?


参考文献 コトラー、アームストロング、恩藏のマーケティング原理 実践リーンスタートアップ

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Topic 66 マーケットに対してどんな視点を持つのか、4P分析から破壊的イノベーションにつなげることはできない

サービスやプロダクツのマーケティング戦略をたてるときに、よく登場するのが4P分析です。
いわゆるマーケティング・ミックスです。
マーケティングで必要なことを4つのPで分析をするものです。

 

Product(製品)
Price(価格)
Place(流通)
Promotion(プロモーション)

 

この分析方法は、サービスやプロダクツを提供する側の視点によるものです。
お客さんやお客さんになるかも知れない人の立場にはなっていないということが懸念としてあります。
かなり本質的に懸念されるべきことです。

 

そこで、4つのCで分析する手法があります。
お客さんやお客さんになるかも知れない人からの視点による分析手法です。

 

Customer solution(顧客価値)
Customer cost(顧客コスト)
Convenience(利便性)
Communication(コミュニケーション)

 

お客さんやお客さんになるかも知れない人が望んでいる未来は、今の問題を解決することです。
それが、顧客価値です。
ただ単に問題が解決すれば良いわけではありません。
そこには、顧客コスト、利便性、コミュニケーションも伴う必要があります。

 

顧客コストとは、どんなことでしょうか?
それは、「お金」「手間」「時間」です。
対価としてもらう「お金」だけがコストではないと言うことです。
いくら売り上げて、いくら利益を出すのか?そればかりに気持ちが向いていませんでしょうか?
なので、「手間」「時間」の視点が抜け落ちてしまうのです。
利便性とコミュニケーションは、体験価値を提供するものです。

 

さらに、4P分析については、市場のことが分析可能であることが前提となります。
持続的イノベーションのように、既に出来上がっている市場をターゲットにするには都合が良い分析手法と言えます。
既述したように4P分析は、顧客からの視点になった分析手法ではないこともあります。
なので、破壊的イノベーションのように、新しい価値で新市場を開拓するときには、向いている分析手法とは言えないのです。

 

事業計画を立てるとします。
必ず、ターゲットとする顧客セグメントが登場します。
要するに、顧客セグメントありきなのです。
市場規模や採算性を評価し、
顧客セグメントに対して、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)を策定します。
ターゲットにするべき市場が分かっていることが前提なのです。

 

ビジネスをするときは「計画」ありきなのです。
ビジネスの現場では、「計画」を策定して、PDCAを繰り返していないでしょうか?
その計画をたてるには、「分析」のプロセスが必要となります。
「分析」を行うべき顧客がどこにいるのかが分かっていることが前提となります。

 

マーケティング活動のマネジメントをどう進めるのか?
一般的に、分析、計画、実行、コントロールのプロセスがよく示されています。

 

Plan(計画)
Do(実行)
Check(評価)
Action(改善)

 

ここで、評価と改善がコントロールにあたる部分です。
要するに、従来から良く示されているマーケティング活動とは、PDCAサイクルそのものなのです。

 

ところが、破壊的イノベーションでは、そもそも分析のプロセスを行うことができないのです。
分析を行うべき顧客がどこにいるのか、それが分からないからです。
なので、失敗と学習を繰り返して、答えを探るプロセスを実行することになるのです。

計画ありきのビジネスプランをいくら頑張っても破壊的イノベーションと言われるような目新しいものは、なかなか生まれてはこないのです。

 

筆者は、デザイン思考とは、PDCAサイクルを短時間で進めることでしょ?
と、言われることがあります。
それは、違います。

 

デザイン思考のプロセスは、いくつか示されているが、だいたいは同じです。
「共感」「問題定義」「創造」「プロトタイピング」「テスト」の順と捉えて頂いて大丈夫です。
このプロセスを繰り返して、顧客がどこにいるのか?顧客の真のニーズは何なのか?を探るのです。

 

繰り返す行為が、PDCAサイクルでもデザイン思考でも行われるが故に、
デザイン思考とは、PDCAサイクルを短時間で進めることだと誤解されているのでしょうか?

デザイン思考は、計画より実行を優先します。やってみることが優先です。

 

デザイン思考とは、どこにあるのか分からないニーズを探るためのプロセスです。
分析をして、計画を立ててのようなプロセスではないのです。
多くの人が不満に思っているようなことや誰も気がついていない意外な盲点にあるような潜在的なニーズを見つけるプロセスなのです。
そのために、失敗と学習を繰り返すのです。
その結果として、今までにないイノベーションが生まれるのです。

デザイン思考は、PDCAによるマネジメントとは異なります。


マーケットに対しては、もうひとつの視点も持つ必要があります。
競合他社からの視点です。

 

ここで活用できるのが、3W1Hです。

 

Who(どの会社が)
What(どんな商品を)
Whem(どんなターゲットに対して)
How much(いくらで売っているのか)

 

この4つの情報を起点にして、必要性に応じて情報を付加すれば良いのです。
例えば、オムニチャネルやSNSの活用ようにチャネルをどう構築するかは、重要論点になることが多いです。
であれば、When(どこで)を付加情報として追加するといった具合です。

 

マーケットに対しては、3つの視点を持つ必要があるということです。

 

自社からの視点
顧客からの視点
他社からの視点

 

他社からの視点において、自社商品と違っているでしょうか?
何か新しいでしょうか?

 

それこそがイノベーションです。

 

それが、自社製品が選ばれる理由となるのです。
あえて、自社製品を選ばなければならない理由がないと、結局のところはコモディティ化となって、価格競争につながるのです。

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Topic 65 アンケートで新しいニーズを知るのは難しい、それは消費者は自分が何が欲しいのか分かっていないから

Apple社を創業したスティーブ・ジョブズの言葉に、
「多くの場合、人は形にして見せてもらうまで自分は何が欲しいのかわからない」とあります。

 

この言葉の通りで、人は体験してみて初めて、その価値に気がつく生き物です。
ガラケー携帯しかなかった時代に、アンケート調査をすればスマートフォンのニーズに気がつくことができたでしょうか?
だれもが「NO」と答えるのではないでしょうか。
今となっては、世の中はスマートフォン一色になっています。
それは、スティーブ・ジョブズがスマートフォンを形にして見せたからです。

 

これは、顧客に対するヒアリングにおいても然りです。

 

ADSLも光ファイバーも普及していなかったころに、どちらを望みますか?とアンケート調査をしたところ、多くの人が光ファイバーと答えたとのことです。
ところが、アンケート結果とは裏腹に、光ファイバーはなかなか普及しなかったのです。

 

ADSLを使ってみれば、快適にインターネットを楽しむことができたからです。
ADSLを体験していないころでは、単純に通信速度が速いであろう光ファイバーの方が良いと多くの人が答えたのです。

当然と言えば当然です。


でも、光ファイバーほどの通信速度は望んではいなかったのです。
いわゆるオーバースペックと言ったところでしょう。

 

ここでの教訓は、ニーズの本質を知るには、お客さんやお客さんになるかも知れない人がどんな状況にあるのか、コンテキスト(context)を理解することが必要だと言うことです。
要するに、光ファイバーの通信速度を求めないといけない状況にないと言うことだったのです。

 

そもそもアンケート調査やヒアリング調査の設計をするときには、何を解明したいのか、その問題が明確になっている必要があります。
お客さんやお客さんになるかも知れない人にとっての問題とは何か?
お客さんやお客さんになるかも知れない人は、どんな未来を望んでいるのでしょうか?
何を明らかにしたいのか?
それが分かっていることがアンケート調査やヒアリング調査の設計の前提となっているはずです。

 

解くべき問題が明確になっているとは、言い換えれば、お客さんやお客さんになるかも知れない人のニーズが分かっているということなのです。
それが分からないので、従来からのマーケットリサーチによるアプローチでは、限界があるのです

 

アンケート調査やヒアリング調査をしたとしても現状の改善にはつながるでしょうが、新しいニーズを発見することは、なかなかできないのです。
アンケート調査やヒアリング調査では、過去を知ることはできても、未来を知ることはできないからです。

 

破壊的イノベーションを起こすとなれば、なおさらです。
フィルムカメラが全盛だった頃にフィルムカメラのユーザーにデジタルカメラが欲しいか?と問いかけも、デジタルカメラが欲しいとは答えなかったでしょう。

 

フィルムカメラ全盛の時代に、デジタルカメラのような新しい商品のニーズがどこにあるのかを発見するにも、ターゲットにするべき顧客セグメントがどこにあるのかも分からないと言う根源的な問題があります。
なので、従来通りに計画を立てて、PDCAサイクルを回してのような具合では、破壊的イノベーションは生まれてはこないのです。

 

デザイン思考では「out of the box」に答えがあるといいます。
これまでと同じ社内や業界内の成功体験の中に居ては、新しいビジネスの発想は生まれては来ないのです。
従来のタクシー会社やホテル会社が従来の延長線上でPDCAサイクルを回せば、UberやAirbnbのような発想が生まれたでしょうか?
従来のタクシー会社やホテル会社がいくらアンケート調査やヒアリング調査をしても、そのような答えは導けないでしょう。

 

先ほど、ニーズの本質を知るには、お客さんやお客さんになるかも知れない人がどんな状況にあるのか、コンテキスト(context)を知ることが必要だと述べました。
このコンテキストは、時間の経過と共に変化をします。
例えば、コンビニエンスストアに行くとしても、朝と昼と夜とでは求めているものが異なっているでしょう。

 

ここにもアンケート調査やヒアリング調査の限界があるのです。過去と現在と未来の状況の変化でニーズが変化するのです。

 

日本マクドナルドでの出来事です。
お客さんにどんな商品が欲しいかと聞くと、オーガニック、ダイエット、ローカロリーなどのメニューが並ぶが、サラダを出しても売れなかったと言うことです。
昨今では、多く人の根源的な欲求として健康志向があるでしょう。
お客さんに聞けば、健康志向の商品が欲しいと答えが返ってくるでしょう。
ですが、マクドナルドにいる状況で、健康志向の食べ物を望むでしょうか?
ハンバーガーやフライドポテトをむさぼり食べたくて、マクドナルドに行くのではないでしょうか。

 

何を望んでいるかを知るには、お客さんやお客さんになるかも知れない人に対しての共感(Empathize)が第一歩となるのです。

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Topic 64 ひとくちにイノベーションと言ってもいろいろ、企業のマネジメント層が可能性に気がつけるかどうか

イノベーションを分類してみます。
誰もが知るところの有名な分類の方法が下記です。

 

・持続的イノベーション
・破壊的イノベーション

 

持続的イノベーションは、既存市場の延長上にあるイノベーションです。
例としては、デジタルカメラの画素数、手ぶれ防止機能、防水機能です。

 

破壊的イノベーションは、今までに存在しなかった市場、価値観、ライフスタイルを形成してしまうようなことです。
例としては、フィルムカメラに対するデジタルカメラです。

 

デジタルカメラが登場したばかりのころは、フィルムカメラで撮影した画像の質感には、遠く及ばないとバカにされていたのを覚えています。
まったくもって、デジタルカメラには興味はないといったところです。
破壊的イノベーションは既存市場にいる人たちには受け入れてもらえない特徴があります。
もうひとつ特徴として、それ以前の商品と比較して性能が劣ることがあります。
デジタルカメラは現像する必要がなく、その場で写真を楽しんだり、写真を加工したりするライフスタイルを創り出しました。
このような可能性に気がつけるどうかです。

 

先ほどと似て非なる分類の方法が下記です。

 

・エボリューション 進化
・レボリューション 革新的

 

エボリューションは、例えば、液晶テレビに対する4Kテレビです。
レボリューションは、例えば、ブラウン管テレビから液晶テレビです。
エボリューションであろうが、レボリューションであろうが、既存市場にいる人たちをターゲットにし得るのです。
液晶テレビに対する4Kテレビであっても、ブラウン管テレビから液晶テレビであっても、既存市場にいる人たちにとっては、買い替え需要であることには変わりはないです。

 

イノベーションは組み合わせだとも言います。
例えば、スマホとカメラの組み合わせです。スマホはいつも持って歩いているものです。
そのカメラで撮影して、その場でSNSで情報発信をするのは日常の光景となっています。
いまどき、スマホのカメラがあるし、デジタルカメラをわざわざ購入する必要があるの?という議論さえもあります。
さらには、アプリとの組み合わせです。スマホで撮影した写真を可愛く加工するアプリがあります。
そのアプリで可愛く見えるように加工した写真をSNSにアップする女性は結構な数います。

 

デザイン思考によって生み出されるイノベーションは、マーケットを起点としています。
それは、人間中心設計が基本にあるからです。
その一方では、テクノロジーを起点としたイノベーションがあります。
インターネットの普及のようなテクノロジーを起点としたイノベーションでは、今までにない市場、価値観、ライフスタイルを形成してしまうことがしばしばあります。
インターネットは、コミュニケーションのありようを変えてしまいました。
SNSの普及へとつながり、個人による情報発信やコンテンツの提供が容易となりました。

まさに、ライフスタイルの変化です。

 

イノベーションは自分たちの生活をより良く、楽しくしてくれる可能性を秘めているのです。
企業のマネジメント層が、その可能性に気がつけるかどうかなのです。

 

既存市場のトップシェアを持つ企業は、なかなか新商品に乗り出すことができないものです。
既存のお客さんの声を聴けば、先ほどのフィルムカメラとデジタルカメラの例のように、新商品であるデジタルカメラを望んではいないからです。
既存のお客さんの声を重要視すれば、当然に既存商品の改良に注力することになるでしょう。
ところが新興勢力の企業によって、デジタルカメラの性能が日進月歩でアップしたのです。
気が付いたときは、既にとき遅しです。
デジタルカメラに対して、なんら眼中になかった人も、今となっては、すっかりとデジタルカメラのユーザーです。

 

いわゆるイノベーションのジレンマです。

 

デジタルカメラを発明したのはコダックです。
皮肉なことに、コダックはデジタルカメラの台頭によって市場から淘汰されたのです。
コダックは写真フィルムの覇者です。
その成功体験が写真フィルムにこだわるに至らしめたのです。

 

歴史からも学ぶことができます。
旧日本海軍は航空機の有用性を真珠湾攻撃で証明したにもかかわらず、巨大戦艦主義から抜け出すことができませんでした。
それは、日露戦争での成功体験によるところがあるのです。

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Topic 63 集客商品と収益商品の組み合わせで、客数と客単価を確保する

 

売上高=客数×客単価

 

ビジネスモデルを発想するときの基本中の基本の式です。
その客数と客単価をどうやって確保しますでしょうか?

 

店頭にそんな安い値段で売って元が取れるのか?と思うような激安商品が並んでいるのを見たことがあると思います。
もうけがほとんどないか原価割れで売っている商品です。
ロスリーダーと言われる集客の手法です。
お店の中にいかにして、お客さんを呼び込むかの常套手段です。
お店に中には、利益率が高い収益商品が多くあります。
ロスリーダーを誘い水にして、客数を確保して、店内の商品で客単価を確保するのです。

 

このような例はたくさんあります。
居酒屋では、お客さんの来店があまりないであろう時間にハッピーアワーと称して、ドリンクを割安で提供していることがあります。
それは1杯目だけとして、2杯目と料理で収益を確保すれば良いのです。
客数と客単価を確保できていますよね。

 

ロスリーダーは、採算度外視の例ですが、ほどよく集客商品と収益商品を組み合わせている光景はよくあることです。
やみくもに集客商品と収益商品を取り入れてしまえば良いのではないのです。
集客商品と収益商品の組み合わせを「3対2」とするのが良いとも言われます。

集客商品が多すぎれば、客単価を確保できなくなります。
逆に収益商品が多すぎれば、客数を確保できなくなります。
その絶妙とも言えるバランスが集客商品対収益商品の比率「3対2」と言うことです。

 

飲食店であれば、サイドメニューやトッピングの利益率を高くしていることもあります。
メインの料理は安く設定して、集客力を高めます。そのうえで魅力的なサイドメニューやトッピングでもうけるのです。
お客様感謝デーを設けて、その日は採算度外視のメニューを提供して、お客さんとの関係性づくりをしている例もあります。

 

サービス業であれば、オプションメニューです。
いろいろと勧められて、オプションメニューも頼むと高くなってしまった経験はないでしょうか?
基本料金での提供は必要最小限として、オプションメニューで魅力的な商品を提供するのです。

 

こんな例もあります。コストコホールセールです。
コストコホールセールは多くの熱狂的なファンの獲得に成功しています。
最大の要因は、高品質な商品の品揃えであるにもかかわらず安値で提供し、高い顧客満足につなげていることです。
どうして、安値で高品質な商品を提供しながらも利益を出すことが可能なのでしょうか?
最大の理由は、会員制にしていることにあるのです。
年会費を獲得するのに実質的に経費を必要としないので、そこでしっかりと稼いでいるのです。
なので、店内で販売する商品でさほど儲けなくとも商売として成り立っているのです。

 

高品質な商品を割安感で買えてしまうという余りにも当たり前なことがコストコホールセールの価値提案なのです。
このお得感によって、コストコホールセールの熱狂的なファンになってしまった人が多いと言うことです。
お得感を感じもらうことが、ビジネスでの成功にいかに貢献するかの好例と言えます。

 

年会費を獲得することには、もうひとつのメリットがあります。
手許のキャッシュを増やすことができることです。
手許のキャッシュを増やすことは、すなわちは、運転資金の確保ができるということです。
キャッシュが枯渇することが、企業経営に与えるインパクトがどれほどのことかは、言うまでもないでしょう。

 

利益率が異なる商品を取り扱うことをアイデアの発想に取り入れると価値提案の幅が広がります。
さらには、ビジネスモデルをどうデザインするかの幅も広がるのです。

 

大切なのは、お客さんにいかにして、お得感を感じてもらうかです。
お得感とは体験価値です。
ロスリーダーはお客さんを引き寄せるには、有効な手段のひとつです。
ですが、店内での体験価値がいけてなければ、何の意味もないのです。
せっかくのロスリーダーも客単価アップにつながらないことには意味がないと言うことです。
どのような価格戦略としたとしても、顧客目線は必要ということです。

 

安かろう悪かろうでは、お客さんの気持ちを引き留めるのは難しいのです。

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Topic 62 中途半端なことがお客さんを遠ざける、お客さんに対して不必要なリスクを負わせていませんか?

いつも利用しているお店のいつもの営業時間に行ったら閉店していたとしたら、どう思うでしょうか。
飲食店のオーナーにこんなことを言われる方が居られます。

 

「もうお客さんが来ないだろうと思って、店を早くに閉めることがある」

 

これは、完全にお客さんのことを無視しています。
体験価値がどうとか語る以前のことです。

 

要するにお客さんに対して、お店が閉まっているかも知れないというリスクを負わせているのです。
人気店はお客さんの期待を裏切るようなことをしないです。
リスクとは、安心できないことに言い換えても良いです。
安心して利用できることは、価値提案の基本です。
いつも揺るぎなく、いつもと同じく価値を提供することで安心して利用ができるのです。

 

営業していると思って、お店の前まで来たら、営業していない。
そんなことでがっかりとさせてしまうことを是とはしないものです。

 

値段が高いと思うのか、安いと思うかは、どんなことが判断基準になっているのでしょうか?
とてもシンプルなことです。
お客さんが感じる価値が、価格を上回っているかどうかです。

 

得したような気持ちにさせることができるかどうかが、ビジネスが成功するかどうかの分岐点です。
得したような気持ちにさせて、自社のサービスやプロダクツを使うことをクセにしてしまうのです。

 

いつもと変わりなく得した気持ちになってもらえるようなビジネスモデルになっていますでしょうか?
あるいは、目先のことに囚われていませんでしょうか?

 

筆者は喫茶室ルノアールをよく利用します。
この店は、入店してほどほどの時間が過ぎると、日本茶が提供されます。
まだまだお店に居てもらって大丈夫です、好きな時間だけ利用してくださいのサインです。
こんなことをされますとクセになってしまいます。

 

喫茶室ルノアールのドリンクは高いと聞くことがあります。
高いと思いかどうかは人ぞれぞれだとは思います。
安心して自分が利用したい時間だけ利用できて、ゆったりとした座席でパソコンを使った仕事ができるのであれば決して高くないと思っています。
なので、喫茶室ルノアールを頻繁に利用しているのです。

 

いつも利用しているサービス、よく買っているどこかのプロダクツには、価格以上の何かを感じていませんでしょうか?
価値提案とは、そのお得感を提供できるかどうかなのです。

 

岩崎邦彦氏が著した「小さな会社を強くする ブランドづくりの教科書」には、ブランドとはとんがりであると記されています。
低価格で顧客をひきつけていないこと、決してブレることなく、一貫性をもって前に進むことは、強いブランドには欠かせないことだと説いています。

喫茶室ルノアールは決して、低価格で顧客をひきつけていないです。
でも、どこの店舗も繁盛しています。
多くの人がその価格以上の何かの価値を感じていると言うことです。

 

スターバックスのとある店舗にあった告知です。
「混雑時はより多くのお客様が心地良い時間を過ごせますよう、ご相席または席の譲り合い」のご協力を頂いております。
とのことです。

 

混雑となったときは、席を譲らされて、お店から出されてしまうのでしょうか?
スターバックスのお得感を損ねていませんでしょうか?

 

筆者は、スターバックスのファンでもあります。
何年か前までは、こんな告知は見たことはないかと思います。
ドリンク、スタッフの対応、お店の雰囲気、洗練されたデザインの関連グッズもスターバックスのとんがりであることは間違いないでしょう。
サードプレイスを基本コンセプトとして、気がねなく、何時間でもゆっくりできることもスターバックスのとんがりではなかったかと思うのです。
サードプレイスからブレてしまっていると思うことがしばしばです。

 

喫茶室ルノアールでは決して、こんなブレブレはあり得ないですね。少なくとも今のところは。
こんな一貫した‪姿勢がお客さんに安心を感じてもらい、ブランド力を高めているのです。‬

 

売上高=客数×客単価

 

ビジネスモデルを発想するときの極めて基本的な式です。
その客数や客単価を確保するために何をしますでしょうか?何をしないのでしょうか?

 

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安全と安心の観点から消費者の行動について述べています。こちら是非とも、ご参照ください。

nakanomasashi.hateblo.jp

Topic 61 ストーリーテリングをビジネスに取り入れる、ビジネスを語るときに文字、数字、グラフのような情報が主人公になっていませんか?

ストーリーテリングの手法を取り入れて、プレゼンテーションをすることで、聞き手に強く印象付けるのです。
文字、数字、グラフのような情報を羅列するのではなく、ストーリー性をもって語ることで相手の気持ちを引き寄せる試みです。

あなたの会社のマネジメント層は変化を望んでいるでしょうか?
言葉では、新しい取り組みを望むようなことを言っても、いざとなったら新しいことを取り組むことによるリスクの話しになったりしていませんか?
なかなか革新的なビジネスモデルに対しては心を開いてはくれないのが現実だと思います。
そこで、ストーリー性をもって語ることで気持ちを引き寄せるのです。
これは、対外的なステークホルダーに対しても同じことです。

ビジネスモデルキャンバスは、ストーリー性を持ってビジネスモデルを語るツールとしても有効です。
ビジネスモデルキャンバスの9つの要素は密接につながっています。
そのつながりをストーリーで語るのです。

・どんな「顧客セグメント」に対して、
・どんな「価値提案」を提供して、
・顧客に対してどんな「チェネル」でアプローチをして、
・「顧客との関係」をどう構築することで、
・こんな「収益の流れ」を得て、
・それを実現するために、こんな「リソース」を活用して、
・そのリソースを活用して、こんな「主要活動」をして、
・それには、こんな「パートナー」が必要となり、
・それによって、こんな「コスト構造」が必要となる。

すべてがつながりますよね。

 

成功しているビジネスモデルは、ストーリーを語ることができるものです。
ビジネスモデルキャンバスはビジュアルで表現するツールです。ビジュアルで表現することで非常に分かりやすく伝わるのです。

まずは、自分でストーリーを語ってみることです。
ストーリー性を持たせて話してみると矛盾していることや話しのつながりがいけていないことに気がつくことがあります。
誰かに聞いてもらうまでもなく、自分で話すことで何か変だとか、何かが足りてないと気がついた経験がありませんでしょうか?

筆者が開催するセミナーでは、受講生に必ずストーリー性を持たせて話してもらう機会をつくります。
ビジネスモデルキャンバスの9つの要素はお互いに密接な関係があるので、組み合わせて考えることが必要とお話しをしています。
ですが、そのようにいくらお伝えしても、なかなかそうはならないものです。
きっと、頭の中ではつながりが出来ているのだろうなと思います。
それで、だいたいが自分で話しをしてみて気がつくのです。

もちろんのことですが、ストーリーテリングは新商品の紹介にも有効です。
新商品の開発のときに設定したペルソナを想定して説明をするのです。
ペルソナは、新商品であるサービスを利用するときやプロダクツを使用するとき、どんな状況にあるのか、コンテキスト(context)を想定して語るのです。
また、ペルソナ像となるような実在する人にストーリーテリングでプレゼンテーションをして、フィードバックをもらうのも有効となります。
お客さんとなる人が主人公なのです。
お客さんのどんな問題を解決するのでしょうか?
お客さんにどんな未来を提供しますか?
そんなことをストーリーで語るのです。
お客さんが知りたいのは、新商品の機能ではないのです。

とかく人は新しいことに懐疑的な動物です。
今までのやり方が正しいと信じていて、疑うことを知らないのかと思うことさえあります。
その根拠は何でしょうか?
今までがそうだったからでしょうか?
過去の成功体験がそうさせているのか、あるいは、さしたる根拠はないのかも知れないのです。
そのような方を相手にして、プレゼンテーションをすると言うことです。
誠意を持って、そのような方の心をいかにして開くかと言うことに尽きるのです。
そこで、聞き手と会話をしながら、徐々に自分のペースに巻き込むのも有効な手段となります。

参考文献
リーン顧客開発 ―「売れないリスク」を極小化する技術 シンディ・アルバレス(著)
ビジネスモデル・ジェネレーション アレックス・オスターワルダー,イヴ・ピニュール(著)

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Topic 60 ビジネスモデルを知ることの意味、ビジネスにも「型」がある

ビジネスモデルが存在しないビジネスは存在しないです。どんなビジネスにもビジネスモデルはあります。

 

ビジネスモデルとは?の問いに対する答えは、いろいろとありますが、

筆者が問われたときは、「顧客にとっての価値を提供し、企業が利益を獲得する仕組み」と答えます。

 

それぞれの企業に、それぞれのビジネスモデルがあります。

それらのビジネスモデルを抽象化して分類することが可能なのです。

 

例えば、フリーミアムです。基本的な機能は無料で提供して、より利便性が高いような機能は有料で提供するビジネスモデルです。

ゲームアプリではすっかりお馴染みですね。

ビジネスのアプリケーションでも、ドロップボックスがそうです。ビジネスで活用されている方も多いことでしょう。

まずは、より多くの人に利用してもらって、その商品の素晴らしさを体験してもらってから、お金をもらうビジネスモデルです。

 

このように、それぞれの企業レベルで見れば、違っているように見えるビジネスモデルでも、抽象度を上げて、類型化することで、同じビジネスモデルと見ることができるのです。

要するに、似たり寄ったりのビジネスをしている企業がたくさんあるということです。

言い換えれば、ビジネスモデルは模倣が可能ということなのです。

今枝昌宏氏が著した「ビジネスモデルの教科書」では、ビジネスモデルを将棋や囲碁の攻撃パターンや防御のパターンとなる定石になぞらえています。

 

アイデアとは全く無の状態から生まれることはまれです。新しいアイデアは既に存在するアイデアの組み合わせで生まれることが多いのです。

イノベーションは組み合わせだと、となえる方も居られます。筆者もその通りだと思います。

 

ビジネスモデルという概念があることで、成功した企業のビジネスを模倣することが可能となるのです。

なので、ビジネスモデルを知ることには意味があるのです。

 

日本古来の武道の考え方に「守破離(しゅはり)」があります。これは、師匠と弟子との関係を表現するものです。弟子には、それぞれにスキルのレベルがあります。

「守」とは、師匠に言われた型通りにする

「破」とは、自分流により良いと思う型を生み出す

「離」とは、師匠から離れて自由となる、自分の流派をつくれるレベル

 

最初は師匠に言われたことを確実に再現することからです。

これは、ビジネスの世界でも応用することができます。

それは、ビジネスモデルという概念があるからです。

まずは、ビジネスの「型」であるビジネスモデルを知ることからのスタートです。

その「型」を知ってからのイノベーションの発想です。

 

アマゾンのビジネスを模倣するのではなく、プラットフォームビジネスで何か面白いことができないかと発想するのです。

先ほど述べたフリーミアムもプラットフォームビジネスもビジネスモデルのほんの一例に過ぎません。

幸いなことに、ビジネスモデルの類型化は幾多の方々でなされています。それを活用して、どんなビジネスモデルが存在するのかを知ることができるのです。書店に行けば、その手の本を簡単に手にすることができます。

 

ビジネスモデルのことを語ると後付けだからと批判されることがあります。結果的にそのように類型化をしているのであって、理屈ではそうなるかも知れないけど、新しいビジネスのアイデアには使えるの?との疑問です。

このような発想になるのは、何もかもオリジナリティあるビジネスにしないといけないとの先入観があるからではないかと感じます。

「ビジネスモデルを既存の具体的なビジネスを抽象化した概念」とするならば、当然に後から出てくるものでしょう。企業それぞれのビジネスの本質的な部分を抽出して抽象化するのですから、当然に後からになります。

だからと言って無意味なものとなるのでしょうか?

 

抽象化した概念としてのビジネスモデルが整理されているからこそ、成功した企業のビジネスモデルを模倣することができるのです。

これは、あくまでも出発点です。「守破離」の「守」です。そこからどう発展するかが経営者の力量となるのです。あるいは、企業支援者であるコンサルタントの力量でもあります。

 

テレビのビジネスモデルはラジオのビジネスモデルの模倣そのものです。

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ビジネスモデルを知ることの意味については、こちらでも述べています。ご参照を頂ければと思います。

nakanomasashi.hateblo.jp

Topic 59 デザイン思考は顧客開発を行うプロセス、新商品開発は消費者に興味や関心を持ってもらえるかどうかが最大のリスク

新商品開発を進めると同時に顧客開発も進める必要があります。

顧客開発とは、ターゲットを定めて、そのターゲットが解決したい問題を特定する行為です。

ターゲットとする消費者の何かしらの問題が解決されるから、消費者に興味や関心を持ってもらえるのです。

何かしらの問題が解決できることが購入する理由となるのです。

 

自社で開発したサービスやプロダクツは可愛いものです。さぞかし素晴らしく見えるかも知れません。

なのですが、どんなに素晴らしいと思えるサービスでもプロダクツでも、消費者に興味や関心を持ってもらえないことには話しにならないのです。

 

シンディ・アルバレス氏が著した「リーン顧客開発 ―「売れないリスク」を極小化する技術」には、失敗を「計画した投資利益率に届かないこと」と定義すれば、ベンチャーキャピタルの投資先の95%が失敗となるとさえ述べています。もっとも何をもって失敗とするかは、いろいろな尺度があるでしょう。ですが、失敗する確率は成功する確率より高いのは揺るぎない事実なのです。

自社の商品だけは、例外的に売れることはないのです。売れるには、売れるだけの理由が必要となります。

そこで、成功確率を高めるために「アイデア創出」「形にする」「テスト」「学習する」を繰り返して、消費者に興味や関心を持ってもらえる商品にするのです。

これは、デザイン思考のプロセスそのものです。

デザイン思考は顧客開発を行うプロセスなのです。

 

とてもシンプルなことです。

この問いかけに答えることができるかどうかです。

開発したサービスやプロダクツを消費者が購入しなければならない理由は何ですか?

 

「顧客が何を求めているかについて探すのは、顧客の仕事ではない。あなたの仕事だ」

スティーブ・ジョブズ

 

ところで、「新商品開発は消費者に興味や関心を持ってもらえるかどうかが最大のリスク」と表題をつけています。リスクとはどんな意味でしょうか?

リスクと聞いて、どんなことをイメージするでしょうか?

 

何か悪いことが起こることだとイメージされる方々も多いことだと思います。何か想定外に嫌なことが起きたときに備えて保険に入りますよね。保険に入ることでリスクヘッジします。

という考え方からすれば、リスクは、想定外の何か悪いことが起こることで意味は合っています。

 

ですが、ビジネスにおいては、「不確実」なことをリスクと言います。良いことが起こるかもしないのもリスクなのです。何か日常生活でのリスクとはイメージが違うように感じる方もおられることでしょう。

実はとても身近にもあるのです。

「あと、どれだけの年数生きるのか?」です。

老後に備えて年金に加入したり、貯金をするのは長生きすることのリスクに備えるためなのです。要するに、どれだけ長生きするのか分からないというリスクなのです。

 

良いことが起こるかもしれないし、悪いことが起こるかもしれない、どちらに転ぶかわからないのがリスクなのです。商売は水物と言います。それは流動的でどうなるか、なかなか予想通りにならないから、そのように表現するのです。

どれだけ売れるのか、100%確実な需要予測ができるなら、さぞかしビジネスは楽になるでしょう。予想以上に売れるのもリスクなのです。正しく嬉しい悲鳴ですね。

 

デザイン思考で、「アイデア創出」「形にする」「テスト」「学習する」を繰り返すのは、流動的な要素をいち早く取り除くことなのです。

「新商品開発における消費者に興味や関心を持ってもらえるかどうかのリスク」を排除する行為とも言えるのです。

 

新商品を開発するのは、事業を継続して拡大することに意図があるはずです。新製品を開発しても、消費者に受け入れてもらえなければ意味はないでしょう。

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Topic 58 飲食店のオーナーが雑誌などのメディアに取り上げられることを拒む理由、それはお客さんを大切にしたいから

雑誌などのメディアに取り上げられることによる宣伝効果は大きいです。メディアによってはステータスさえ感じることでしょう。
それで、来店客が増えて売り上げが拡大すれば万々歳と言ったところでしょう。

 

ですが、必ずしもそうでしょうか?

 

飲食店のオーナーが雑誌などのメディアに取り上げられることを否とすることは珍しくないです。
飲食店を紹介するインターネットのサイトでも同じです。
それは、既存の上客を大切にしたいからです。

 

メディアに取り上げられて、新規の来店客があったとして、満席となって、既存のお客さんがお店に入れないことを是とはしないのです。
メディアでの紹介が来店動機となっている来店客が、継続的なお客さんになるでしょうか?
優れた飲食店であれば、口コミで来店客が増えるものです。口コミが一番手堅い宣伝なのです。
口コミが生まれるようなビジネスモデルが強いのです。

 

8対2の法則、パレートの法則とも言います。
2割の上客が8割の売り上げとなっているのです。その2割のお客さんのことを大切にするのは当然と言えます。
2割の上客に喜んでもらって、安定的な8割の売り上げを確保することで、飲食店とお客さんとでWin-Winの関係ができているのです。
一流と言われる飲食店のビジネスモデルとはそういうものです。

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Topic 57 顧客セグメントではなくペルソナでなければならない理由、お客さんは統計データではない

顧客セグメントとは、不特定多数の人々がいるマーケットを特定の属性で分類した集団のことです。
顧客セグメントの分類基準としては、下記となります。

 

・デモグラフィック 性別、年齢、所得、職業などの統計データ
・ジオグラフィック 国や地域による地理的なこと
・サイコグラフィック ライフスタイル、趣味嗜好、価値観などの心理的要因
・購買行動 購買金額、利用頻度などの過去の購買履歴

 

そして、分類した顧客セグメントに応じてマーケテイング戦略を行うのです。
自社の製品が大量に売れるとなれば、顧客セグメントに応じた様々な顧客特性を得られるようになるでしょう。

 

ですが、これから新製品を開発するとなれば、話しは変わってきます。
顧客セグメントをいくら設定したところで、どうして、その製品を購入しなければならないのかの答えが導き出せないからです。言い換えれば、購入する本音の理由が見えないのです。
自社の価値提案がマーケットで受け入れられるには、マーケットにいる人々が購入する理由が必要なのです。
その理由を見つけるために、特定の個人であるペルソナを設定するのです。

 

戦略レベルでは、世の中のトレンドを把握することは重要なことです。
ですが、顧客ニーズを発見するには、ペルソナを設定して、共感(Empathize)し、お客さんやお客さんになるかも知れない人の本音を洞察する必要があると言うことです。

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Topic 56 プロトタイピングをすることの意味、失敗することは学習のチャンス

デザイン思考のプロセスは、いくつか示されているが、だいたいは同じです。
「共感」「問題定義」「創造」「プロトタイピング」「テスト」の順と捉えて頂いて大丈夫です。
 
どうして、プロトタイピングのプロセスが必要なのでしょうか?
たくさん失敗する、すばやく失敗することで学びのチャンスを得るためです。
 
プロトタイピングでは、ビジュアル化をします。ビジュアル化することで、下記の効果を得ることが期待できます。
・他の人の右脳を刺激して発想を誘発
・全体像や位置関係をイメージしやすい
・複雑に思えることの整理に役立つ
 
プロトタイピングでは、様々な背景、価値観、考え方を持つ人たちが協働して、プロダクツやサービスのアイデアをより良いものに高めるのです。
そこには、お客さんも巻き込みます。なぜならば、お客さん自身も何を求めているのかが分からないものだからです。
ビジュアル化することで、お客さんが求めているニーズも明確になって行くのです。
 
失敗することを受け入れて、そこから学ぶことを重んじる組織こそ、イノベーションを生むのです。
もちろんですが、失敗の内容にもよりけりです。失敗することで新しい気づきを得て、プロダクツやサービスがより顧客満足度を高めることにならないことには意味がありません。
 
参考文献 21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由 佐宗邦威(著)

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Topic 55 論理的な思考のみではビジネスでの成功はない。直感や感情も必要

論理的思考と言えば、
客観的な事実に基づく根拠があって、一貫性があり、因果関係があるものです。
そこには、個人の直感や感情などと言うものは入る余地はないです。
ビジネスにおいて物事を判断するのに必要なことであります。
 
ですが、それだけで十分でしょうか?
 
スティーブジョブズがマウスを見て、これはコンピューターのデバイスとして有用であると判断したのは、必ずしも論理的な思考によるものではないでしょう。
今でこそ、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)が当たり前になっていますが、30年もさかのぼれば、難解なコマンドをキーボードで入力してパソコンを動かすのが当たり前でした。
コマンドを知らなくても扱えるパソコンの普及は、レボリューション、言い換えれば革新的イノベーションの代表格と言えるものです。
その当時、スティーブジョブズのような発想で、マウスをつかったGUIの有用性に気がつくことができた日本のパソコンメーカーは無かったということです。
 
とにかく根拠はないけど、面白そう。
何だか遊び心をくすぐられる。
 
そんな、直感や感情も必要なんです。
消費者は、論理的な思考や合理的な判断ばかりで商品を選んでいるのではないのです。
だからこそ、デザイン思考が注目されているのです。
 
論理的思考による判断と直感や感情による判断をバランスよく取り入れることが必要なのです。
 
消費者が論理的な思考や合理的な判断ばかりで商品を選んでいないことについては、こちらでも述べています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/07/31/141347

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Topic 54 お客さんにとって分かり難いことをしていませんでしょうか?それは、お客さんにとって大きなフラストレーション

自分がお客さんの立場であるときにフラストレーションを感じることはどんなことでしょうか?
人それぞれでしょうが、分かり難いことに対して、フラストレーションを感じてる方は多いのです。
 
料金のシステムが分かり難い
操作の仕方が分かり難い
どこにあるのか分かり難い
いつまで待たされるのか分かり難い
メニューが分かり難い
などなど。
 
分かり難いサービスもプロダクツもたくさんありますよね。
多くの人が何も言わずにイライラしたりモヤモヤしているのです。
ほとんどのお客さんがサイレントマジョリティです。何も言うことなく、自社のプロダクツやサービスが見捨てられてしまうのです。
 
お客さんに分かり難いと思わせないめに、何をしていますか?
 
自社のお客さん、あるいはお客さんになるかも知れない人には、どんなゲイン(gain)やペイン(pain)があるでしょうか?
ゲインとは得たいこと、ペインとは無くしたいことです。それを考えることが大切なんです。分かり難いことはペインの最有力候補です。
そのために、ペルソナを設定して、お客さんやお客さんになるかも知れない人に「共感」するのです。
デザイン思考において「共感」はポイントなのです。「共感」するためにペルソナを設定するのです。
 
「デザイナーは、思いやりを形に表わしていくのが仕事」デザインディレクター 川崎和男
 
ゲイン(gain)とペイン(pain)については、こちらでも述べています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/07/24/074029

 

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Topic 53 ビジネスモデルを知ることの意味、彼を知り己を知れば百戦殆うからず

ビジネスモデルが存在しないビジネスは存在しないです。どんなビジネスにもビジネスモデルはあります。

ビジネスモデルとは?の問いに対する答えは、いろいろとありますが、
筆者が問われたときは、「顧客にとっての価値を提供し、企業が利益を獲得する仕組み」と答えます。
経営戦略をどう具現化するのかがビジネスモデルです。
経営戦略を支えるのがビジネスモデルです。
ビジネスモデルを知ると言うのは、客観的にビジネスを知ると言うことでもあります。
 
3C分析と言われるフレームワークがあります。下記の項目に着目して現状を把握しようとするフレームワークです。
・Customer 顧客
・Competitor 競合
・Company 自社
 
次の3つの問いかけに客観的な視点で答えます。
・誰が自社の顧客なのか?
・競合他社の脅威はどの程度なのか?
・それに対して自社は勝てるのか?
 
「顧客の理解」「競合の理解」「自社の理解」は、ビジネスにおいて、極めて基本的なことです。
競合他社のビジネスモデルと自社のビジネスモデルの理解をしない状態で厳しいビジネスの環境で戦えるはずがないと言うことです。

「競合の理解」とは敵の戦い方を知るということです。敵の戦い方を知らずして、どのようにして戦えれば良いのでしょうか?

 
分析的なアプローチで新しい価値の創造は困難であるでしょう。だからこそ、デザイン思考が注目されているのです。
では、分析的なアプローチは意味がないものでしょうか?
そんなことはないです。
3C分析のようなフレームワークは客観的に現状把握をするためのチェックリストとしては有用であることには変わりないです。
フレームワークはロジカルシンキングで言うところのMECE(漏れなく、だぶりなく)とするものです。
このようなツールも適宜取り入れることは、デザイン思考でも有効であり、デザイン思考とロジカルシンキングは対立軸にはないと言うことです。
 
ビジネスモデルの全体像を俯瞰するには、ビジネスモデルキャンバスが有用です。
9つの項目に当てはめて、その項目間の相互関係を検証することでビジネスモデルを理解します。

競合他社のことも自社のことも同じビジネスモデルキャンバスに表現することで、比較検討することが容易となるメリットもあります。

 
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」 孫子
 

経営戦略の策定は、外部環境と内部環境の分析から始まります。外部環境と内部環境の分析ではSWOT分析が有名ですね。外部環境分析ではPEST分析が有名です。

外部環境の変化では、政治動向、マクロ経済的な動向、ライフスタイルや流行、新しいテクノロジーの登場などが企業経営にインパクトを与えます。これらの動向は戦略レベルでは、当然に検討されるべきものです。

一方で、ミクロな視点も必要となります。それが、先ほど述べた「顧客の理解」「競合の理解」「自社の理解」です。「競合の理解」「自社の理解」は先述したビジネスモデルキャンバスが強力なツールとなります。

 

2つの視点が必要ということになるのです。

・外部環境と内部環境の視点

・マクロとミクロの視点

  

ビジネスモデルとは経営戦略を実現するための具体的な手段です。経営戦略を支えるのがビジネスモデルです。言い換えれば、経営戦略を実現可能とする裏付けであります。

競合他社の経営戦略にはどんな裏付けがあるのでしょうか?

自社の経営戦略にはどんな裏付けが存在し得るのでしょうか?

 

また、「顧客の理解」ではペルソナマーケティングが強力な手法となります。

ペルソナとは顧客ターゲットのうち、最も重要で象徴的な顧客モデルのことです。顧客モデルを設定することで、お客さんやお客さんになるかも知れない人の本音に迫るのです。

 

「自社の理解」は最後です。

自社のことばかりに気持ちや力が偏っていませんか?

自社で何かを始めるまえに、「顧客の理解」や「競合の理解」からです。

市場が魅力的で、競合他社に対抗し得るだけの裏付けが確認できるなら、新ビジネスの開始です。

 

参考文献

グロービスMBAファイナンス

グロービスMBA経営戦略

ビジネスモデルの教科書 今枝昌宏()

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