イノベーション創出とデザイン思考

ビジネスモデルにイノベーションを起こす

Topic 66 マーケットに対してどんな視点を持つのか、4P分析から破壊的イノベーションにつなげることはできない

サービスやプロダクツのマーケティング戦略をたてるときに、よく登場するのが4P分析です。
いわゆるマーケティング・ミックスです。
マーケティングで必要なことを4つのPで分析をするものです。

 

Product(製品)
Price(価格)
Place(流通)
Promotion(プロモーション)

 

この分析方法は、サービスやプロダクツを提供する側の視点によるものです。
お客さんやお客さんになるかも知れない人の立場にはなっていないということが懸念としてあります。
かなり本質的に懸念されるべきことです。

 

そこで、4つのCで分析する手法があります。
お客さんやお客さんになるかも知れない人からの視点による分析手法です。

 

Customer solution(顧客価値)
Customer cost(顧客コスト)
Convenience(利便性)
Communication(コミュニケーション)

 

お客さんやお客さんになるかも知れない人が望んでいる未来は、今の問題を解決することです。
それが、顧客価値です。
ただ単に問題が解決すれば良いわけではありません。
そこには、顧客コスト、利便性、コミュニケーションも伴う必要があります。

 

顧客コストとは、どんなことでしょうか?
それは、「お金」「手間」「時間」です。
対価としてもらう「お金」だけがコストではないと言うことです。
いくら売り上げて、いくら利益を出すのか?そればかりに気持ちが向いていませんでしょうか?
なので、「手間」「時間」の視点が抜け落ちてしまうのです。
利便性とコミュニケーションは、体験価値を提供するものです。

 

さらに、4P分析については、市場のことが分析可能であることが前提となります。
持続的イノベーションのように、既に出来上がっている市場をターゲットにするには都合が良い分析手法と言えます。
既述したように4P分析は、顧客からの視点になった分析手法ではないこともあります。
なので、破壊的イノベーションのように、新しい価値で新市場を開拓するときには、向いている分析手法とは言えないのです。

 

事業計画を立てるとします。
必ず、ターゲットとする顧客セグメントが登場します。
要するに、顧客セグメントありきなのです。
市場規模や採算性を評価し、
顧客セグメントに対して、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)を策定します。
ターゲットにするべき市場が分かっていることが前提なのです。

 

ビジネスをするときは「計画」ありきなのです。
ビジネスの現場では、「計画」を策定して、PDCAを繰り返していないでしょうか?
その計画をたてるには、「分析」のプロセスが必要となります。
「分析」を行うべき顧客がどこにいるのかが分かっていることが前提となります。

 

マーケティング活動のマネジメントをどう進めるのか?
一般的に、分析、計画、実行、コントロールのプロセスがよく示されています。

 

Plan(計画)
Do(実行)
Check(評価)
Action(改善)

 

ここで、評価と改善がコントロールにあたる部分です。
要するに、従来から良く示されているマーケティング活動とは、PDCAサイクルそのものなのです。

 

ところが、破壊的イノベーションでは、そもそも分析のプロセスを行うことができないのです。
分析を行うべき顧客がどこにいるのか、それが分からないからです。
なので、失敗と学習を繰り返して、答えを探るプロセスを実行することになるのです。

計画ありきのビジネスプランをいくら頑張っても破壊的イノベーションと言われるような目新しいものは、なかなか生まれてはこないのです。

 

筆者は、デザイン思考とは、PDCAサイクルを短時間で進めることでしょ?
と、言われることがあります。
それは、違います。

 

デザイン思考のプロセスは、いくつか示されているが、だいたいは同じです。
「共感」「問題定義」「創造」「プロトタイピング」「テスト」の順と捉えて頂いて大丈夫です。
このプロセスを繰り返して、顧客がどこにいるのか?顧客の真のニーズは何なのか?を探るのです。

 

繰り返す行為が、PDCAサイクルでもデザイン思考でも行われるが故に、
デザイン思考とは、PDCAサイクルを短時間で進めることだと誤解されているのでしょうか?

デザイン思考は、計画より実行を優先します。やってみることが優先です。

 

デザイン思考とは、どこにあるのか分からないニーズを探るためのプロセスです。
分析をして、計画を立ててのようなプロセスではないのです。
多くの人が不満に思っているようなことや誰も気がついていない意外な盲点にあるような潜在的なニーズを見つけるプロセスなのです。
そのために、失敗と学習を繰り返すのです。
その結果として、今までにないイノベーションが生まれるのです。

デザイン思考は、PDCAによるマネジメントとは異なります。


マーケットに対しては、もうひとつの視点も持つ必要があります。
競合他社からの視点です。

 

ここで活用できるのが、3W1Hです。

 

Who(どの会社が)
What(どんな商品を)
Whem(どんなターゲットに対して)
How much(いくらで売っているのか)

 

この4つの情報を起点にして、必要性に応じて情報を付加すれば良いのです。
例えば、オムニチャネルやSNSの活用ようにチャネルをどう構築するかは、重要論点になることが多いです。
であれば、When(どこで)を付加情報として追加するといった具合です。

 

マーケットに対しては、3つの視点を持つ必要があるということです。

 

自社からの視点
顧客からの視点
他社からの視点

 

他社からの視点において、自社商品と違っているでしょうか?
何か新しいでしょうか?

 

それこそがイノベーションです。

 

それが、自社製品が選ばれる理由となるのです。
あえて、自社製品を選ばなければならない理由がないと、結局のところはコモディティ化となって、価格競争につながるのです。

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