イノベーション創出とデザイン思考

ビジネスモデルにイノベーションを起こす

Topic82 デザイン思考においても事業の価値に対する視点は、当然に必要なこと

デザイン思考のプロセスは共感(Empathize)して、潜在的な欲望がどこにあるのかを洞察することから始まります。

 

一連のデザイン思考のプロセスを解説すると経営資源の強みや弱みに対する視点は必要ないのかと疑問を持たれる方が居られます。
デザイン思考を用いようともビジネスであることは変わりはないです。
市場動向や経営資源に対する視点は当然に必要です。

 

デザイン思考は人間中心設計が基本にあります。
人間が持つ欲望を洞察することが起点となります。
テクノロジーや市場動向が起点になっていないと言うことであって、市場動向や実現可能性を見ないわけではないのです。
人々が何を求めているのか?を最優先としているのです。
デザイン思考には、有用性を最優先課題としているところに特徴があります。
有用性を最優先課題としているがゆえに、プロトタイピングで早くかたちにして、有用性を確認するプロセスを重要視します。

 

当然ながら、事業として実現可能なのかは欠かせない検証ポイントです。
そのために、ビジネスモデルキャンバスは有用なツールとなります。

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Topic81 直感やひらめきを論理で否定しない、論理的に正しいことが全てではない。

アイデアを出すときは自由な雰囲気をつくることが重要です。
突飛としか思えないアイデアこそ大切にすることです。

 

論理的に飛躍があるから、論理的に話しが通じないからと言ってアイデアを否定しないことです。
論理的に否定をしてしまったら、その人からは新しいアイデアは二度と出てこないでしょう。

 

ここで厄介なのが、「論理的に正論」であることです。
否定する人は、正しいことを言っているので、自分が正しいと思い込みから抜け出すのは難しいです。
相手を論破し、相手が何も反論ができないとなれば、なおさらのことです。
そこには、優越感、支配欲、征服欲さえもあり得るでしょう。

 

自分以外の人のアイデアは否定せず、それに便乗してもっと良いアイデアを出せないかと発想をします。
ビジネスとして成り立つアイデアかどうかを考えるのは後回しにしても遅いことはないです。
それよりは、せっかくのアイデアを潰してしまうことでビジネスチャンスを失うことになるかもと考える方が賢明です。

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Topic80 想定外なことをする利用者に着想、そこには潜在的なニーズがある

マニュアルにはない様な使い方をしている。
通常ではあり得ないとしか思えないことをしている。
マニアな人ほど独自な何かをしていることは珍しいことではないです。
エクストリームユーザーと言われる、どちらかと言えば少数派の人たちです。
そこには潜在的なニーズがあります。

 

どうして、そんな行動をする必要があるのでしょうか?
ここで、「なぜ」「なぜ」・・・の問いかけをします。

 

アンケートやインタビューは潜在的なニーズを発見するには有効とは言えませんが、このようなときは有効です。
そのような行動をする理由には、本人しか分からない何かがあるかも知れないのです。
その理由こそが、片付けたい何かなのです。

たいていの人がプロダクツやサービスがいけてなくとも順応していますが、
中には自分なりの何かをして、いけてないことに対応していることがあります。

 

例えば、ビニール傘は似たり寄ったりで間違えやすいです。
そこで、間違えられないように目印を付けている人がいます。
間違えられないようにすることが、片付けたい何かなのです。

 

たいていの人が順応しているからと納得していては、
新しいニーズを見つけることはできないのです。

 

極端なことをする利用者の行動を知ること、
それは行動観察からです。

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Topic79 商品開発をするときに目指すべきは必要最小限の機能、その必要最小限の機能とは?

リーンスタートアップで成功するには、必要最小限の機能に絞り込むことからです。
必要最小限の機能のことをMVP(Minimum Viable Product)と言います。

 

Minimumとは何か?

 

それを見極めるのは困難です。それは主観的なことだからです。
誰にとっての主観なのか?
新商品の企画をする人の主観ではありません。
お客さんやお客さんになるかも知れない人の主観なのです。

 

お客さんやお客さんになるかも知れない人とは誰なのか?
どんな人なのか?
それを具体化するのがペルソナです。
そこで、ペルソナに対して共感(Empathize)をするのです。

 

ペルソナにとって必要最小限の機能とはどんなことなのか?
それは仮説に過ぎず、実際にリリースをしてみて確認されるものです。
なので、リリースそのものも実験と捉えて、実験から学ぶのです。

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Topic78 商品開発の出発点は顧客の課題を見つけること。「こんな商品が欲しかった!」と言わせてしまうことができるか?

ペルソナマーケティングとは?と問われて、教科書にあるような感じで答えるとこうなります。

ターゲット像を明確化した、ペルソナと呼ばれる「架空の個人情報」を持つユーザを設定し、
その特定のユーザが満足する製品やサービスをデザインするマーケティング手法のこと。
ペルソナとは顧客ターゲットのうち、最も重要で象徴的な顧客モデルのこと。

 

そこで、こんな風に言われることがあります。

「特定のお客さんに対してビジネスをしているわけではない」

 

特定のひとりのお客さんを満足させることができないのに、多くの人に受け入れてもらうことができるでしょうか?
ヒット商品は、一人ひとりの満足の積み重ねです。

 

デザイン思考では、共感する行為が重要なプロセスとなります。
このときに大雑把な顧客セグメントに対して共感することは困難です。
また、大雑把な顧客セグメントであればあるほど組織内で共通認識を持って商品を開発することが出来なくなり、
万人受けを狙った平凡な商品になってしまうのです。

 

ターゲットとする顧客のイメージが明確であればあるほどに商品コンセプトに尖がりが出来てきます。

 

世の中の多くのことが正規分布になると言われます。
正規分布によれば、約7割の人は似たり寄ったりと言うことになります。
その約7割を顧客ターゲットに定めて、ペルソナにすれば良いのです。

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Topic77 持続可能なビジネスとは?社会や環境に対して配慮するのも企業の責務

目先の売り上げや利益の拡大ばかりではなく、長期的な戦略も必要なことは言わずと知れたことです。
安くて便利だからと言って、人体や環境に対して害をなすような物質を使って良いわけではないのです。
たとえ法規制の範囲内においてもでしょう。
そこに企業としての姿勢を垣間見ることができます。

 

事業拡大のために社会や環境を壊してしまっては元も子もないです。
企業は社会や環境があってこそ成り立っているからです。

 

今治市に本拠地をおくIKEUCHI ORGANICは、オーガニックコットン100%のタオルを生産しています。
風で織るタオルで有名な同社は環境に負荷をかけないことに基本コンセプトがあります。
工場やオフィスで使用する電力の100%を風力発電でまかなっているとのことです。

 

お客さんやお客さんになるかも知れない人に共感(empathize)するときに、このような価値に対しても考慮することも必要なのです。

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Topic76 価格を設定するときの3つの視点、必ずしも便益を受ける人から儲けるのではない

カフェを利用するときのことを想定してみます。
カフェでは、ドリンクを飲む人が、その場でリアルタイムに代金を支払います。
極々当たり前な光景です。

 

ところが、実際のビジネスでは必ずしも、そうではないのです。

 

Googleで便益を受けている人は何かを調べる人です。
でも、その人は代金を支払ってはいないです。
Googleは広告主から代金をもらっています。
このようなビジネスモデルを三者間市場モデルといいます。
誰から儲けるかの視点です。

 

フリーミアムでは無料でサービスを提供しています。
無料で多くの人に利用してもらって、プレミアム(有料)なサービスを利用するユーザを獲得して収入を得ます。
サービスを提供しはじめてから収入を得るまでにタイムラグがあります。
会員制のサービスでは、サービスを提供する前に入会金や会費で収入を獲得します。
いつ儲けるかの視点です。

 

吉野家の牛丼は、かなりの格安です。
それは牛丼そのもので儲けることを想定していないからです。
オプションメニューで儲けているのです。
格安にすることで来店客を増やして、オプションメニューでしっかり儲けています。
何から儲けるかの視点となります。

 

誰(who)、タイミング(when)、何(what)の視点です。

 

ここで考えたいのが、やたらと格安にすれば良いのではないということです。
商材によっては高くてもさほど需要が減少しないモノもあります。
例えば、冬の季節の白菜です。白菜は鍋料理には欠かせない食材です。
このような商材をあえて安くしなくても大きな需要を見込めます。

 

価格の変動によってどの程度需要が変化するかを「需要の価格弾力性」といいます。
「需要の価格弾力性」を考慮して価格を設定することが求められます。

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Topic75 顧客価値と事業価値の2つの視点を持つ、どちらが欠けていても事業の継続はあり得ない

かつては、製品志向で良いモノをつくれば売れる時代がありました。
プロダクトアウトの発想です。
今となっては、モノを売る時代は終わっています。
体験価値を売る時代です。
体験価値を一義的な目的として商品開発をするとなると顧客志向に傾注しがちになります。
市場に提供する価値提案とマーケットのニーズがアンマッチしているようではどうしようもないです。
かと言って、競合他社のことを考えなくて良いわけではないのです。
競合他社のこともふまえた事業価値の構築に対しても力を注ぐ必要があります。
要するに、顧客価値と事業価値の2つに対してバランスよく力を注ぐことです。

 

古典的な経営戦略論に3C分析があります。
3Cとは、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)を指しています。
Customerとは、市場が魅力的なのか?
Competitorとは、競合他社の脅威に対抗し得るのか?
最後に、Company(自社)に対して、ビジネスとしてやっていけるリソースがあるのか問いかけます。

 

顧客に対しても競合他社に対してもバランス良く注視する市場志向でビジネスを行うことが必要なのです。

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Topic74 ミルクシェイクを購入する理由は何か?ミルクシェイクはニーズではなく、ニーズを満たすための手段

イノベーション理論で有名なクリステンセン氏は、ミルクシェイクの売り上げを拡大するにはどうしたらいいのかの相談を受けたことがあるとのことです。
そこで、どんな状況でミルクシェイクを購入する人が多いかと行動観察をすることにしました。
すると、1人で来店してミルクシェイクのみを購入し、しかも自動車の利用者が多いことに気が付きました。

 

どうして、そのような人がミルクシェイクを購入する必要があるのでしょうか?

 

それは、自動車で通勤するのは退屈なことであるので、運転中の退屈しのぎには、ミルクシェイクが持って来いの商品だったのです。
例えば、ドーナツであれば手がべたつきます。バナナだとあっという間に無くなってしまいます。これでは、運転中の退屈しのぎには向かないです。
ほどよく長持ちして、運転しながらでも飲みやすいのがミルクシェイクだったのです。
この事例では、ニーズの本質を知るには、購入する人がどんな状況にあるのか、コンテキスト(context)を知ることが必要なことが分かります。
その状況に応じて、共感「Empathize」をするのです。「Empathize」とは、より能動的に相手のことを思うことです。

 

この話しのポイントは、ミルクシェイクがニーズではないと言うことです。
「運転中の退屈しのぎ」がニーズなのです。
「運転中の退屈しのぎ」に適したミルクシェイク、あるいは、他の何かの商品を開発をすれば良いと結論づけられます。

 

この店では、ミルクシェイクの売り上げを拡大するためにアンケート調査をしていたとのことです。
そのアンケート調査で、どんな味を好むのかを調べたりと色々と試みましたが、売り上げを拡大するには至りませんでした。
アンケート調査では、「運転中の退屈しのぎ」がニーズであるとは気づけなかったのです。

 

ニーズについては、お客さんやお客さんになるかも知れない人の声を聴けば答えが得られるわけではないのです。

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Topic73 顧客体験価値を提供するのは「人」、従業員満足度が顧客満足度につながる

印象に残るフレーズがあります。
このフレーズを知ったときに、とても納得感がありました。
そして、忘れられないフレーズです。

 

People will forget what you said,
people will forget what you did,
but people will never forget how you made them feel
人は、あなたが言ったことを忘れてしまう
人は、あなたが何をしたかを忘れてしまう
でも、人は、あなたがその人をどんな気持ちにさせたかは忘れない
マヤ・アンジェロウ (アメリカを代表する黒人女性詩人)

 

これは、ビジネスモデルの価値提案を考えるときの教訓です。
自分が顧客になったときのことを思い出してみます。
満足度が高くなるのも、低くなるのもスタッフの対応次第です。
せっかく、素晴らしい商品を開発しても、それを提供するスタッフがいけてないと顧客満足にはつながらないのです。
裏を返せば、商品がいけてなくともスタッフの対応次第では、それを補って余りあることもあります。

 

教育プログラムを充実させ、従業員満足度を高くすることは優先度が高い経営課題と言うことになります。
どんな企業でもスタッフの教育は主要活動であると言うことです。
即戦力とばかり言う企業が順調に業績拡大していますでしょうか?
即戦力の効果は、目先の一時的なもので終わっていませんでしょうか?

 

筆者は、とある仕事で千疋屋総本店のスタッフの方の生の声を聞かせて頂く機会がありました。
千疋屋総本店は高級フルーツがメインとなる価値提案です。
かなりの高価格で販売しています。
それでも売れるのです。

 

その要因に従業員満足度が高く、スタッフが千疋屋総本店の魅力の虜になっていることもあるのは間違いないと感じました。
従業員満足度が高ければ、特に意識しなくとも必然的に接客もよくなるものです。
だとすれば、当店のファンも安定的に増えることでしょう。

 

価値提案と顧客セグメントの関係はビジネスモデルを考えるうえで重要です。
それは、価値提案が素晴らしければ良いわけではないのです。

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Topic72 ニーズとは、どんなことなのか?ニーズとは何かに欠乏を感じていること

ニーズを理解するとは言っても、そもそもどんな概念なのかを理解するのは難しいようです。

 

マズローは、人間の欲求を5段階で表現しました。

 

・「生理的欲求」 生きていくための基本的・本能的なこと
・「安全欲求」 安全であることや安心したいこと
・「所属と愛の欲求」 何かの集団に属していたいこと
・「承認欲求」 だれかに認められたいこと
・「自己実現の欲求」 自己表現や自己実現をしたいこと

 

まずは、「生理的欲求」「安全欲求」を満たされてから、「所属と愛の欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」につながります。
欲求は、「物質的欲求」と「精神的欲求」とに分類して捉えることもできます。
飢えや渇きからの解放や快眠などの「生理的ニーズ」、認められたい、評価されたいなどの「心理的ニーズ」とで分類することもできます。
ひとくちに欲求と言ってもさまざまです。

 

コトラーは、顧客ニーズを理解するうえで、「ニーズ」「ウォンツ」「需要」の3段階に分類して説いています。

 

・「ニーズ」 人間に本質的に備わっているもの
・「ウォンツ」 ニーズを具現化したもの、具体的な商品
・「需要」 ウォンツに対して購買力が伴っていること

 

ランチするとします。
空腹を感じていると言うことは、欠乏を感じていると言うことです。
この欠乏している状況がニーズです。

次にニーズを満たすために、ランチをどうやって済ませるかとなります。
時間がないとなれば、ファストフードが選択肢に入るでしょう。
ミーティングをかねてのランチとなれば、静かでゆっくりとできる雰囲気がある店が候補となるでしょう。
このように具体的に何を選択肢とするかが、「ウォンツ」となります。
そこには、ライフスタイルや文化的背景、社会的背景が影響することになります。

・文化的背景とは、健康志向の高まりのようなブーム、宗教、人種などです。
・社会的背景とは、職業、役職、所得、教育水準などです。

 

さらに、購買力がともなっている状態が「需要」となります。
購買力が伴うには、提供する価値提案が想定価格を上回る必要があります。

 

クリステンセンは、その商品が欲しいから買うのではなく、何かしらの用事を片付けるための手段として商品を雇うのだと言います。
商品を雇うと言われてもピンとこないかも知れません。

 

「水が欲しい」とすると、どうして「水が欲しいのか?」と問いかけるのです。
その答えはさまざまでしょう。

・のどの渇きをいやすため
・水分補給のため
・ひと息を入れたいため
・美容のため
・健康のため
・気分転換のため、などなど

 

釣りざおが欲しくて、釣りざおを購入する人はいないのです。
魚を釣ると言う行為を楽しむために、釣りざおを購入するのです。
そのためには、魚釣りのグッズを開発するメーカは、魚を釣ると言う行為を楽しむニーズを満たすには、どうすれば良いのかを考える必要があります。

 

ニーズの本質を知るには、どんな状況にあるのか、どんな背景があるのか、コンテキスト(context)を知ることが必要です。
コンテキストによってニーズが異なってくるからです。
裏を返せば、ニーズを満たすことが出来れば、水である必要もないのです。
水が欲しいのであろうから、水の製品を開発するのではなく、水によって満たされたいと感じていることに応える商品を開発すれば良いと言うことになります。

 

東京から大阪に移動するとします。移動が片付けたい用事です。
そのときに、新幹線を利用しようが飛行機を利用しようが、移動ができてしまえば良いと捉えることができるのも同じことです。

 

P&Gにファズリーフと言う商品があります。
洗濯機では簡単に洗えない布製品を清潔に保つと言う用事を片付けてくれる商品です。
洗濯機で洗う行為をしなくとも、除菌・消臭でできてしまう優れものです。
P&Gは消費者に密着して、消費者に共感(Empathize)することで、消費者が、どうであれば嬉しいのか、どうであれば嫌なのかを洞察して、新しい価値提案を生み出しています。

 

洗濯機では簡単に洗えない布製品を清潔に保ちたいというのは、潜在的に存在していたであろうニーズです。
消費者に対していくらマーケットリサーチをしたところで、スプレーで除菌・消臭をしたいとは答えは返っては来なかったでしょう。
そこに、アンケート調査などの従来型のマーケットリサーチには限界があるのです。

 

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Topic71 その見積もりにどれだけの正当性がありますでしょうか?見積もりの精度には限界があることを知る

プロジェクトにおいては、見積もりは欠かせない存在です。
見積もりがないことには、スケジュールも立てられないし、そもそもプロジェクトにゴーサインを出して良いものかの判断もできないです。

 

見積もりと言えば、下記の3つの事柄でしょう。

 

・どれだけの予算が必要なのか?
・どれだけの時間(期間)が必要なのか?
・どれだけの人手が必要なのか?

 

見積もりの単位として、「人日」「人月」があるように、必要とする時間(期間)や人手が即ち予算と捉えることもできます。

 

見積もりの精度をあげるには、それに比例して、どんな目的で何を開発するのかを精度高く取り決める必要があります。
しかし、開発当初に綿密で漏れなく、本来の目的を達成できるように何を開発するのかを取り決めてしまうのは、ほぼ不可能と言っても過言ではないです。
なので、見積もりというのは、どれだけ労力をかけたところで、その精度の高さが100%になることはあり得ないと認識するべきということです。

それに伴って、言えることは計画に必要以上の労力もかけないということです。
計画立案に多大な労力をかけるよりは、行動第一として行動した結果から学習することで、少ない労力で早くから結果につながるようにするのです。
デザイン思考、アジャイル、リーンスタートアップにおいて、同じ考え方です。

 

長くPDCAサイクルの考え方が浸透しており、P「計画」が重要視されて来ました。
その「計画」を守ることが目的化してしまっていることが多くあります。
「計画」を守ることは至極当然なこと!と言ってしまえば正論に聞こえますし、反論のしようがないように思えるからです。
それは、無意識のうちにかも知れません。
プロジェクトの管理者にとっては、「計画」を守ることが評価ポイントになっていることもあるでしょう。

 

何かの工期が遅れると、それが如何にも悪いことのように糾弾しているのを聞いたことはありませんでしょうか?

 

リスク、言い換えれば不確実性の要素を多かれ少なかれ含んでいるとするならば「計画」を守ることを目的化するべきではないのです。
とうてい人間的とは言えない「計画」になってしまっているにもかかわらず、その「計画」を守らせようとプロジェクトメンバーに強いることで悲劇が起こっているのです。

 

ときとして、仕事を終わって職場から帰ろうとすると、「何で他の人の仕事を手伝わないのか?」というプロジェクト管理者がいます。
そのように言う根拠は、チームで仕事をしているのだから、手伝うのは当然だろうと言うことです。
ここまでとなると、仕事をテキパキとこなす人が損した気分にもなるでしょうし、チームとしての雰囲気も好ましくないことになるのは必至です。
ますます生産性は落ちてしまうことになります。
仕事の評価を時間でしか推し量れないプロジェクト管理者の典型だと思います。


「とにかくスケジュール通りに進めなければ」
「とにかく遅れを取り戻さなければ」

 

と、計画を守り切ることが目的化されてしまっていて、計画通りにコトが進んでいることにしか興味がないのだと思われます。

 

本来は、サービスやプロダクツを開発することが目的なはずです。
必要最小限の製品、MVP(Minimum Viable Product)からスタートし、いち早くお客さんと一緒に学ぶ機会を得ます。
見直すべきところは見直して、プロジェクトとしての最適解を見出す不断の行動が必要と言うことではないのでしょうか。

 

プロトタイピングも同じことが言えます。
建築家の方は、短時間にラフなスケッチを作成して、お客さんと打ち合わせをしてイメージを合わせます。
その後においては、模型を作成します。
それで、さらに進んだイメージ合わせをします。
ラフなスケッチや模型の作成は、プロトタイピングの行為そのものです。
いち早くお客さんと一緒に学ぶ機会を持つことが、建築家の日常になっていると言えます。
このような取り組みが、見積もりの精度を上げることになるわけです。

 

工事が始まってからも現場に足を運び、必要とならば修正を行います。
デザイン思考で言うところのピボット(微調整)の行為です。

 

建築家は、建物や空間のデザイナーです。
デザイナーの思考プロセスを広くビジネスに活かすことが、デザイン思考、アジャイル、リーンスタートアップです。

 

見積もりは不確実なものでしかないのです。

 

人間的にプロジェクトを推進することを心掛けている管理者の方も居られることは付け加えておきます。

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Topic70 新商品開発における2つのリスク、新商品に関するリスクとプロジェクトに関するリスク

新商品を開発するにあたりリスクとなることは、大きく2つに分類することができます。

 

・新たに開発するプロダクツやサービスに関すること
・新商品開発プロジェクトの進行に関すること

 

リスクとは、不確実性という意味です。
日常生活において、リスクと言えば、何か悪いことが起こりうる可能性の意味と捉えることが一般的ですが、ビジネスにおいてのリスクとは、振れ幅が大きくて安定していないことを言います。

 

・どんなプロダクツやサービスを開発すれば良いのか?
・どのようにプロジェクトを進行すれば良いのか?

 

その最適解がなかなか定まらないのです。
とり得る最適解の振れ幅が大きいがために、当初の見積もりを大幅にオーバーして、結果的にコストアップとなるのです。
システム開発においては、このようなことは日常茶飯事であり、筆者が知る限りでは少なくとも国内においては約30年間は、このようなことを繰り返しています。

 

国内の多くのシステム開発プロジェクトではウォーターフォールと言われる開発手法が取り入れられています。
ウォーターフォールとは、文字どおり水が高いところから低いところに流れるが如く、直線的に開発を進める手法です。
始めに要件定義を行います。要件定義では、何を目的にして何を開発するのかを定めます。
さらに並行して見積もりも実施します。いつまでにどれだけのコストをかけるかです。

 

ウォーターフォールは、開発当初に要件定義と見積もりが限りなく完成度が高くできるなら上手くいくでしょう。
ところが、そうはならないのが現実です。

 

どんなプロダクツやサービスを開発するのかが不確実なままで、見切り発車されてしまう、あるいは見切り発車をせざるを得ないことが日常的なのです。
要するに、プロジェクト開始の当初からウォーターフォールでなり得てないのです。
ウォーターフォールが人間的ではないのは、プロジェクト開始の当初で決めるべきことを決めてしまうことが前提であることにあります。
その前提こそが人間的ではないことのゆえんです。

 

ウォーターフォールは政治的な要因でも阻まれます。
スケジュールどおりに開発が進んでいると見せると言う思惑です。
実質的に要件定義が終わってなくとも、要件定義が終わっていることにして、肝心なところを先送りにしてしまうのです。
要件定義を実施する担当者のマインドにも依存します。
要件定義で決めるべきことを次の工程以降で決めれば良いとしてしまう風潮が生まれることは珍しくないです。

 

どうやって開発を進めるのか?
具体的にどうやって開発するのかは、要件定義の次の工程となる設計工程で検討されます。
要件定義で何を目的にして何を開発するのかも定まらないうちに設計工程に入ってしまうことが、いかに危ういかは言わずと知れたことです。
なので、システム開発の現場では様々な悲劇が起きている現実があります。

 

そこで、注目を集めているのがアジャイルです。
アジャイルは、ウォーターフォールのように直線的にプロジェクトを進めることはしないのです。
前述した2つのリクスに対しての学習を繰り返しながらプロジェクトを進めます。
ウォーターフォールによるところの非人間的なアプローチを排除する試みなのです。

 

学習をする機会を繰り返し持つことが、最も有効なリスクヘッジとなると言うことです。
いくらお客さんと打ち合わせを重ねたところで、当のお客さんにしても何が欲しいのか分からないのです。
お客さんと一緒に学習することが求められることが前提にあります。
お客さんに答えを求めても答えは出てこないとする考え方は、デザイン思考と同じ思想に立脚しています。

 

何を目的にして何を開発するのかを決めることの優先順位が高いのは、アジャイルにおいても同じことです。
ただ、その全てにおいて、最初に決めてしまうことを前提としないことがウォーターフォールとは異なるのです。
このような考え方は、システム開発に限らず、プロダクツやサービスの開発においても適用が可能とするのがデザイン思考です。

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Topic 69 新事業の3つのリスク、デザイン思考のメソッドで価値提案のことばかりを考えていませんでしょうか?

アッシュ・マウリャ氏が著した「Running Lean 実践リーンスタートアップ」では、スタートアップの時期に3つのリスクがあると説いています。

 

・製品リスク
・顧客リスク
・市場リスク

 

デザイン思考では、顧客のことを学習することが重要論点となっています。
「製品リスク」とは、お客さんやお客さんになるかも知れない人のどんなことを解決するかです。
その「製品リスク」に気持ちが傾いてしまいがちではないでしょうか。
とにかく顧客ニーズがどんなところにあるのか分からないので、そのようになってしまうのは、ある意味では仕方がないことかも知れません。
デザイン思考とは、そもそも人間中心設計が基本的なところにあります。だからこそ、顧客の立場となって、顧客ニーズを発見することが最優先となるのです。

 

ところが、ビジネスとなると「顧客リスク」と「市場リスク」が大きな課題となります。
デザイン思考では、どうやって顧客の課題を見つけて、どうやって顧客の課題を解決するかの方法論はよく語られています。
一方で、「顧客リスク」と「市場リスク」についてはどうでしょうか?

 

顧客リスクとは、顧客セグメントについてです。
ターゲットにする顧客セグメントに対してアプローチするための具体的な手段を構築可能かどうかです。
いわゆるチャネルのことです。
チャネルの役割は、価値を知ってもらう手段、価値を届ける手段、価値を届けた後のフォローアップです。
顧客へのアプローチの手段を構築できないことは極めて深刻なことです。
もとより、ターゲットにしている顧客セグメントが適切かどうかの問題もあります。

 

市場リスクとは、ビジネスとして実現して継続が可能かどうかです。
どうやって収益を確保して、そのためにどれだけのコストが必要かということです。
顧客が支払い可能な金額はいかほどでしょうか?


顧客のことを学習する行為には、「顧客リスク」と「市場リスク」についても必要と言うことなのです。


市場リスクについては、さらに視野を広くする必要があります。
収益やコストに対するリスクばかりではなく、競合他社や代替え品などによるリスクもあるからです。
ここでは、業界分析では定番となっている5フォース分析を活用することが考えられます。

 

・新規参入者の脅威
 高い参入障壁を構築し、模倣困難性が高ければ強いものになるでしょう。
・既存企業同士の競争
 同じベネフィットを提供する競合ブランドがあろうとも、他社より優れていることを維持可能であれば強いものになるでしょう。
・代替品の脅威
 同じ商品であれば、模倣困難性が高くとも、それに代わる商品があれば、その分弱まるでしょう。 
・買い手の交渉力
 UVP(Unique Value Proposition・独自の価値提案)で顧客の問題を解決できるなら強いものになるでしょう。
・供給業者の交渉力
 特定の供給業者や特定の希少資源に頼るしかないとなると常に苦しい立場となるでしょう。  


「新規参入者の脅威」「既存企業同士の競争」「代替品の脅威」については、顧客にとってのスイッチングコストをどれだけ高くするかでもあります。
スイッチングコストが高ければ高いほど、顧客が他社に逃げることを防げるでしょう。

それには、2つのポイントがあります。

 

・自社に対して熱狂的なファンを醸成
・自社に対する依存度を高める

 

スイッチングコストとは、金銭的なコストより精神的なコストの意味合いの方が大きいです。
スイッチングコストとは、他の商品に乗り換えるときの精神的な負担なのです。
AKB48やiPhoneはスイッチングコストを高くすることに成功した好例と言えます。

 

他社が自社よりも優れたベネフィットの提供を可能としても、だからと言って他社の商品に乗り換えるかどうかは別問題なのです。
人間の行動は必ずしも合理的でもなければ、論理的でもないのです。
そこには、感情や直感が伴います。

 

「代替品の脅威」については、やっかいな側面があります。
身近な例では、メールやSNSです。これらは、コミュニケーションにおいて重要な役目を担うだけの存在感となっています。
メールやSNSがなくては、ビジネスにおいても困ることが大きいと言っても過言ではないです。
その分、電話に対しての必要性が低くなっています。
昨今では、AIの登場が様々な業界で脅威となりつつある様相です。
いったい何が、いつの時期に代替品として、とって代わるのか予測がつかないのです。


「買い手の交渉力」「供給業者の交渉力」はBtoBビジネスでは深刻な課題となり得ます。
特定の買い手や供給業者に依存度が高いと、結局は取引先企業の言いなりになるしかなく、ビジネスの継続において立場を弱くします。

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Topic 68 学ぶべきは顧客のこと、顧客にとって必要最小限な機能とは何か?

デザイン思考、リーンスタートアップ、アジャイル開発のいずれも本質的なところは同じです。
お客さんやお客さんになるかも知れない人のことをいかに素早く学ぶかです。

 

それには、新製品の開発にかける時間をいかにして短くするかです。
スタートアップの時期であれば、なおさらのことです。
起業したばかりのころはリソース(経営資源)が極めて限定的な状況にあります。
そのリソースを使い切るまでに、売れる商品を開発をしないと企業としての存続はないのです。

 

顧客のことを素早く学んで、本質的に求められるニーズを発見する必要があります。
そのために、「あればなお良い」「あってもなくても良い」ような機能はさておいて、絶対必要な機能に絞り込みます。
必要最小限の製品、MVP(Minimum Viable Product)からスタートし、いち早く学ぶ機会を得ます。
なぜならば、リリースすることが何よりも顧客のことを学ぶ機会になるからです。

 

UVP(Unique Value Proposition・独自の価値提案)で顧客の問題を解決することを約束します。
MVPで顧客と約束したことを実現します。

 

「1機能」→「1プロトタイプ」→「1テスト」を繰り返すのが、デザイン思考、リーンスタートアップ、アジャイル開発です。

 

いち早く学ぶべきことを学ぶとは、「学習」「速度」「集中」の全てを満たすということです。

 

・学習がないということは、リソースを食いつぶしてしまっているだけで進歩がないということになるでしょう。
・速度がないということは、成果を出す前に、限りあるリソースを使い果たすことになるでしょう。あるいは、機会を逸して、競合に追い抜かれてしまうことになるでしょう。
・集中がないということは、今しなくても良いこと、あるいは、今する必要のないことにもリソースが食いつぶされることになるでしょう。

 

自社に経済的なメリットをもたらす3つのこと。

・規模の経済
・範囲の経済
・スピードの経済

よく言われています。

 

なかでも、スピードの経済の重要性が高まっています。
スピードの経済とは、ビジネスの環境の変化に素早く対応することです。
昨今では、情報技術の発達により事業をとりまく環境の変化は加速しています。
言うまでもないですね。

 

ビジネスの環境の変化に対応ができていないのでは、市場における地位の存続は危ういものになります。
こういった意味では、スタートアップの時期にある企業に限らす、スピードの経済に対応することは、経営上の重要課題となります。

 

そこには、「学習」と「集中」が伴っていることが必要ということです。
特に、顧客に対する学習です。

 

それには、「共感」が必要です。
「共感」には、2種類があります。「Sympathize」と「Empathize」です。

 

・Sympathize 自分の実体験をもとにして、相手のことを思うこと
・Empathize 実体験はないけど、想像の中で相手のことを思うこと

 

日本語にすると「共感」のひとことになってしまいますが、両者には大きな違いがあります。
デザイン思考のメソッドでは、「Empathize」をすることからプロセスが始まります。

 

「Empathize」は、より能動的に相手のことを思うことです。
お客さんやお客さんになるかも知れない人の立場になってどれだけのことを考えているかに尽きます。
いけてないサービスやプロダクツは、お客さんやお客さんになるかも知れない人の立場になることが足りていないのです。

 

たくさん機能があるプロダクツが世の中にはあふれています。
機能の多さで差別化をしたい意図があるのでしょう。
それって、完全にプロダクトアウトの発想になっていないでしょうか?
使いもしない機能がたくさんあっても嬉しくはないです。
シンプルで必要最低限の機能に絞り込まれていることが、本質的に求められるニーズかも知れないのです。

 

お客さんやお客さんになるかも知れない人のことを「学習」した結果とは言い難いのでは?
と疑問符がつきます。

 

「あればなお良い」「あってもなくても良い」ような機能はバックログに置いておいて、本当に必要なのかを検討してからでも良いのではないでしょうか。

 

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