イノベーション創出とデザイン思考

ビジネスモデルにイノベーションを起こす

Topic 9 どこの市場で戦うのか?「out of the box」での発想が必要

タクシーで移動したくても、なかなかタクシーを見つけることができない。
ホテルを予約しようとしても、どのホテルも満室で予約が取れない。
こんなことで困ったことはありませんか?

そこに目をつけたのがUberやAirbnbです。
Uberは、移動したい人と自動車のオーナーをマッチングさせます。
Airbnbは、宿泊したい人と空き部屋を短期間で貸したい人をマッチングさせます。
 
従来のタクシー会社やホテル会社が従来の延長でPDCAサイクルを回しても出てくる発想ではないです。
デザイン思考では「out of the box」に答えがあるといいます。
これまでと同じ社内や業界の成功体験の中に居ては新しいビジネスの発想は生まれないのです。

UberやAirbnbは「所有」ではなく「共有」することに着眼点があります。
資源を奪い合うのではなく、今ある資源を共有することの発想がイノベーションの源になっています。
また、スマホの普及で、On-Demand による即時対応が可能な環境があることが、このようなサービスの土壌となっています。
今話題になっているInstacartは、買い物をして依頼主にデリバリーをする買物代行サービスを提供しています。
買い物をする時間がない人と空いた時間でお金を稼ぎたい人をマッチングさせます。
UberやAirbnbに着想を得たビジネスモデルと見ることができます。
 
Uber、Airbnb、Instacartは、
何かしら困っている人とお金を稼ぎたい人をマッチングさせることでマーケットの空白地帯の発見につなげています。

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Topic 8 ビジネスとしてやっていけるのか?

優れている価値提案には3条件が備わっていると、1回目の投稿で述べました。
 
・Desirability 価値提案はターゲット顧客の欲望を満たす
・Viability 価値提案を受け入れ、継続が可能なマーケットが存在する
・Feasibility 価値提案を実現するだけの経営資源を調達可能
 
今回は、この条件について視線を変えて述べたいと思います。
Viabilityは、企業の内部環境にも目を向ける必要があります。企業会計に対する視点です。
ステークホルダーに分配ができるだけの利益を確保することが可能なのか?
事業を継続するのに必要なキャッシュ(運転資金)を確保できる仕組みがあるのか?
将来のビジネスにつなげる内部留保は確保できるのか?
 
Feasibilityは、特に人財面は今後ますます厳しくなることが予想されます。
昨今の労働市場を鑑みると、少子化で労働人口が減少して人手の確保が厳しい状況は加速するでしょう。
さらに、国内産業では、長年のデフレ経済により、設備投資、人財への投資が十分になされておらず、生産性は低下している現状があります。
少ない人財でもやっていけるように必要な投資を行い、生産性を上げることが必要です。
 
顧客の欲望を満たすアイデアの発想をすると共にビジネスとしてやっていけるのか、企業の内部環境を検証するプロセスが必要です。
ビジネスモデル・キャンバスは内部環境の検証にも便利なツールです。
 

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Topic 7 果てしない人の欲望

狩野モデルによる顧客満足度の変化についてです。
狩野モデルでは、提供する価値を3通りに分類して顧客満足度を評価します。
 
・Must have 必須 
・Linear 線形
・Exciter 魅力的、刺激的 
 
「Must have 必須」これがなければ、話しにならないようなことです。あれば当たり前と評価され、不十分であれば不満を感じさせます。
「Linear 線形」あればあるほど、長ければ長いほど、広ければ広いほどに嬉しいことです。待ち時間のように短いほどに顧客満足度が上昇するようなこともあります。
「Exciter 魅力的、刺激的」無いからといって不満を感じさせることはない、あるいは仕方ないと受け取る価値です。あれば、顧客満足度を著しく上昇させます。
 
「Must have 必須」は何を差し置いても最優先に取り組むべきことです。かといって、一定以上充実させたところで顧客満足度はそれほど大きくならないです。
次に「Linear 線形」を可能な限り充実させます。「Must have 必須」は過剰にならないようにして、「Linear 線形」に力を入れるべきです。
「Exciter 魅力的、刺激的」の優先順位はいちばん低くて良く、余力があれば実施するようなことです。
 
ですが、昨今のようにモノやサービスがあふれた世の中では、魅力的であったり、刺激的な体験価値を提供しないことには、なかなか顧客満足を得られない現実もあります。
さらにやっかいなことに、月日の経過と共に人の満足度は狩野モデルのグラフの上から下に移動するのです。
今は、「Exciter 魅力的、刺激的」に分類されるような価値提案であっても、やがては「Must have 必須」となり、あって当たり前になる性質があるのです。
人の欲望は正しく果てしないのです。
 
どんな新しい体験価値を提供するのか?
そのためにもEmpathize(共感)を通じて、絶え間ない潜在的な欲望の気づきが必要となるのです。

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Topic 6 顕在化したニーズと潜在的なニーズ、人には2種類の欲望がある

欲望は2種類に分類できます。
 
・顕在化した欲望
・潜在的な欲望
 
顕在化した欲望は、顕在化したニーズ、潜在的な欲望は潜在的なニーズと読み替えて頂いても大丈夫です。
 
顕在化した欲望は目に見えている欲望です。
例えば、オフィス街でのランチです。お昼時になるとコンビニエンスストアに長蛇の列ができることからも目に見えて明らかです。
誰の目から見てもそうだよねと言えるような欲望です。
 
一方で、潜在的な欲望はなかなか容易に見つけることができないです。
潜在的な欲望には2種類あると言えます。
 
・多くの人が不満に思っているようなこと
・誰も気がついていない意外な盲点にあるようなこと
 
このような欲望を見つけるには、顧客の様子を観察することが有効なことがあります。
コピー機のコピー開始ボタンが緑色なのは行動観察から生まれたアイデアです。
コピー機を操作するのに四苦八苦している様子をみて、どのボタンを押せばコピーが開始できるのか分かりやすくしたのです。
確かにコピー機の操作パネルには様々なボタンが有り迷いやすいです。
このような困りごとを解消することが潜在的な欲望の一例となります。
 
別の言い方をするとすれば、 プロダクツやサービスよりも人を中心としたところに着眼点がなければ、潜在的な欲望を見つけるのは難しいと言うことです。
商品やサービスよりも人を中心としたところに着眼点を持つためには、お客さん、あるいはお客さんになるかも知れない人に積極的に関心を持つことが大切です。そのためにお客さんの声を聴いたり、お客さんの行動観察をするのです。
デザイン思考の原点とも言えることです。
 

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Topic 5 何にコストをかけていますか?

コストは3つあります。「お金」「時間」「手間」です。
そして、コストに関してはふたつの見方があります。

・不本意ながらもコストをかけてしまっている
・あえてコストをかけている

「不本意ながらもコストをかけてしまっている」のはどうしてでしょうか?
そこにはコストをかけざるを得ない何かが潜んでいます。
「あえてコストをかけている」のはどうしてでしょうか?
そこにはコストをかけるに値する何かが潜んでいます。

そこに顧客にとっての潜在的なニーズがあります。
その潜在的なニーズを見つけることが問題定義なのです。
デザイン思考でポイントになるのは問題定義です。なぜならば、問題定義を外すと、その問題の解決策がどんなアイデアであろうとも無意味なものになるからです。

顧客はどんなことに「お金」「時間」「手間」をかけているでしょうか?

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Topic 4 それってニーズですか?

料理教室に通う人のニーズは、料理ができるようになることや料理のレパートリーを増やすことです。
その解決策として料理教室があるのです。
 
ニーズは動詞です。解決策は名詞です。
ニーズのことを「顧客の仕事」「顧客のジョブ」と言うこともあります。
顧客がプライベートや仕事で成し遂げたいことがニーズです。
料理教室はニーズではありません。料理ができるようになることや料理のレパートリーを増やすことのニーズに対する価値提案なのです。
「なる」「増やす」動詞ですよね。
 
顧客のニーズは状況によって様々です。たとえば一人でいるときと誰かと一緒にいるとき、さらには誰と一緒にいるかでも、そのときの状況次第でニーズは変わるのです。
どんな状況にあるかをコンテキスト(context)といいます。「文脈」と訳されることが多いですが、「状況」「背景」と訳した方がしっくりとくるでしょう。
コンテキストも踏まえてニーズの発見・洞察につなげることが必要です。
 
あなたが成し遂げたいことは何ですか?
その答えは必ず動詞になるはずです。
 
解決策、言い換えれば、アイデア発想する前に顧客が成し遂げたいことを検討するプロセスが重要となります。そのためにEmpathize(共感)が必要なのです。

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Topic 3 共感マップを使う

共感マップは4つの項目からなっています。
・発言(Say): どんなことを言っているのか?
・行動(Do): どんな行動や態度をとっているのか?
・思考(Think):どんなことを考えて、どんな価値観を持っているのか?
・感情(Feel): どんな感情を持っているのか?
 
顧客は日頃どんなことを言っているのか?どんな行動や態度をとっているのか?個人にフォーカスを当てます。
その中から重要と思われる発言、重要と思われる行動や態度を抽出します。
そこから、本人も意識していないような思考や感情を洞察・発見するのです。
顧客が抱える緊迫感はどの程度ですか?
発言と行動に矛盾があったりしませんか?顧客にしてみれば不本意ながらも、その行動をとっているのかも知れません。
そこには、新しい発想を生むヒントが隠れているのです。
 
「良いデザインとはユーザへの深い理解に根差している」と言います。
顧客に対する共感と顧客からのフィードバックが良いデザインを生む糧となるのです。

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Topic 2 共感とはどんなこと?

共感と聞いてどんなことをイメージするでしょうか。
イメージしてみてください。
 
多くの方が自分の実体験にもとづいて、相手の立場となって思うことをイメージするようです。
実は、共感には2種類あります。
 
・Sympathize 自分の実体験をもとにして、相手のことを思うこと
・Empathize 実体験はないけど、想像の中で相手のことを思うこと
 
筆者は、受験に失敗したことがあります。その実体験から受験に失敗した人の気持ちになれます。
一方で、東北で震災があったときの被災者ではありませんが、想像の中で被災者の気持ちを思うことは可能です。
 
Empathizeはより能動的に相手のことを思うことです。デザイン思考では、Empathizeを求めています。
顧客の立場になってどれだけのことを考えていますか?自分とは立場が異なるお客さんの身になって考えることです。
顧客に対してのEmpathizeが真の顧客ニーズを知る第一歩となります。
 
想像の中で相手の立場に身を置き、その苦しみを自分のことのように感じること。
倫理学者/経済学者アダム・スミスの言葉です。

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Topic 1 優れている価値提案には3条件が備わっている

・Desirability 価値提案はターゲット顧客の欲望を満たす
・Viability 価値提案を受け入れ、継続が可能なマーケットが存在する
・Feasibility 価値提案を実現するだけの経営資源を調達可能
 
マーケットは十分にありそう。自社には実現するだけの経営資源を保有している。

果たして、それだけで昨今の顧客ニーズに応えるだけのビジネスを行うことが可能でしょうか?
古典的な分析手法ではSWOT,3C,PEST,VRIOなどの各種フレームワークが活用されてきました。現在でもビジネスの現場で活用されています。
これらのフレームワークは外部環境、内部環境を分析するのに長けたツールといえます。
それだけで、顧客の欲望を満たすだけのプロダクト・サービスを生み出すことが可能でしょうか?
顧客の欲望を満たすためには、顧客に対する「共感」というプロセスが必要不可欠なのです。「共感」を通じて顧客の欲望を見つけるのです。
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