イノベーション創出とデザイン思考

ビジネスモデルにイノベーションを起こす

Topic72 ニーズとは、どんなことなのか?ニーズとは何かに欠乏を感じていること

ニーズを理解するとは言っても、そもそもどんな概念なのかを理解するのは難しいようです。

 

マズローは、人間の欲求を5段階で表現しました。

 

・「生理的欲求」 生きていくための基本的・本能的なこと
・「安全欲求」 安全であることや安心したいこと
・「所属と愛の欲求」 何かの集団に属していたいこと
・「承認欲求」 だれかに認められたいこと
・「自己実現の欲求」 自己表現や自己実現をしたいこと

 

まずは、「生理的欲求」「安全欲求」を満たされてから、「所属と愛の欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」につながります。
欲求は、「物質的欲求」と「精神的欲求」とに分類して捉えることもできます。
飢えや渇きからの解放や快眠などの「生理的ニーズ」、認められたい、評価されたいなどの「心理的ニーズ」とで分類することもできます。
ひとくちに欲求と言ってもさまざまです。

 

コトラーは、顧客ニーズを理解するうえで、「ニーズ」「ウォンツ」「需要」の3段階に分類して説いています。

 

・「ニーズ」 人間に本質的に備わっているもの
・「ウォンツ」 ニーズを具現化したもの、具体的な商品
・「需要」 ウォンツに対して購買力が伴っていること

 

ランチするとします。
空腹を感じていると言うことは、欠乏を感じていると言うことです。
この欠乏している状況がニーズです。

次にニーズを満たすために、ランチをどうやって済ませるかとなります。
時間がないとなれば、ファストフードが選択肢に入るでしょう。
ミーティングをかねてのランチとなれば、静かでゆっくりとできる雰囲気がある店が候補となるでしょう。
このように具体的に何を選択肢とするかが、「ウォンツ」となります。
そこには、ライフスタイルや文化的背景、社会的背景が影響することになります。

・文化的背景とは、健康志向の高まりのようなブーム、宗教、人種などです。
・社会的背景とは、職業、役職、所得、教育水準などです。

 

さらに、購買力がともなっている状態が「需要」となります。
購買力が伴うには、提供する価値提案が想定価格を上回る必要があります。

 

クリステンセンは、その商品が欲しいから買うのではなく、何かしらの用事を片付けるための手段として商品を雇うのだと言います。
商品を雇うと言われてもピンとこないかも知れません。

 

「水が欲しい」とすると、どうして「水が欲しいのか?」と問いかけるのです。
その答えはさまざまでしょう。

・のどの渇きをいやすため
・水分補給のため
・ひと息を入れたいため
・美容のため
・健康のため
・気分転換のため、などなど

 

釣りざおが欲しくて、釣りざおを購入する人はいないのです。
魚を釣ると言う行為を楽しむために、釣りざおを購入するのです。
そのためには、魚釣りのグッズを開発するメーカは、魚を釣ると言う行為を楽しむニーズを満たすには、どうすれば良いのかを考える必要があります。

 

ニーズの本質を知るには、どんな状況にあるのか、どんな背景があるのか、コンテキスト(context)を知ることが必要です。
コンテキストによってニーズが異なってくるからです。
裏を返せば、ニーズを満たすことが出来れば、水である必要もないのです。
水が欲しいのであろうから、水の製品を開発するのではなく、水によって満たされたいと感じていることに応える商品を開発すれば良いと言うことになります。

 

東京から大阪に移動するとします。移動が片付けたい用事です。
そのときに、新幹線を利用しようが飛行機を利用しようが、移動ができてしまえば良いと捉えることができるのも同じことです。

 

P&Gにファズリーフと言う商品があります。
洗濯機では簡単に洗えない布製品を清潔に保つと言う用事を片付けてくれる商品です。
洗濯機で洗う行為をしなくとも、除菌・消臭でできてしまう優れものです。
P&Gは消費者に密着して、消費者に共感(Empathize)することで、消費者が、どうであれば嬉しいのか、どうであれば嫌なのかを洞察して、新しい価値提案を生み出しています。

 

洗濯機では簡単に洗えない布製品を清潔に保ちたいというのは、潜在的に存在していたであろうニーズです。
消費者に対していくらマーケットリサーチをしたところで、スプレーで除菌・消臭をしたいとは答えは返っては来なかったでしょう。
そこに、アンケート調査などの従来型のマーケットリサーチには限界があるのです。

 

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