イノベーション創出とデザイン思考

ビジネスモデルにイノベーションを起こす

Topic 68 学ぶべきは顧客のこと、顧客にとって必要最小限な機能とは何か?

デザイン思考、リーンスタートアップ、アジャイル開発のいずれも本質的なところは同じです。
お客さんやお客さんになるかも知れない人のことをいかに素早く学ぶかです。

 

それには、新製品の開発にかける時間をいかにして短くするかです。
スタートアップの時期であれば、なおさらのことです。
起業したばかりのころはリソース(経営資源)が極めて限定的な状況にあります。
そのリソースを使い切るまでに、売れる商品を開発をしないと企業としての存続はないのです。

 

顧客のことを素早く学んで、本質的に求められるニーズを発見する必要があります。
そのために、「あればなお良い」「あってもなくても良い」ような機能はさておいて、絶対必要な機能に絞り込みます。
必要最小限の製品、MVP(Minimum Viable Product)からスタートし、いち早く学ぶ機会を得ます。
なぜならば、リリースすることが何よりも顧客のことを学ぶ機会になるからです。

 

UVP(Unique Value Proposition・独自の価値提案)で顧客の問題を解決することを約束します。
MVPで顧客と約束したことを実現します。

 

「1機能」→「1プロトタイプ」→「1テスト」を繰り返すのが、デザイン思考、リーンスタートアップ、アジャイル開発です。

 

いち早く学ぶべきことを学ぶとは、「学習」「速度」「集中」の全てを満たすということです。

 

・学習がないということは、リソースを食いつぶしてしまっているだけで進歩がないということになるでしょう。
・速度がないということは、成果を出す前に、限りあるリソースを使い果たすことになるでしょう。あるいは、機会を逸して、競合に追い抜かれてしまうことになるでしょう。
・集中がないということは、今しなくても良いこと、あるいは、今する必要のないことにもリソースが食いつぶされることになるでしょう。

 

自社に経済的なメリットをもたらす3つのこと。

・規模の経済
・範囲の経済
・スピードの経済

よく言われています。

 

なかでも、スピードの経済の重要性が高まっています。
スピードの経済とは、ビジネスの環境の変化に素早く対応することです。
昨今では、情報技術の発達により事業をとりまく環境の変化は加速しています。
言うまでもないですね。

 

ビジネスの環境の変化に対応ができていないのでは、市場における地位の存続は危ういものになります。
こういった意味では、スタートアップの時期にある企業に限らす、スピードの経済に対応することは、経営上の重要課題となります。

 

そこには、「学習」と「集中」が伴っていることが必要ということです。
特に、顧客に対する学習です。

 

それには、「共感」が必要です。
「共感」には、2種類があります。「Sympathize」と「Empathize」です。

 

・Sympathize 自分の実体験をもとにして、相手のことを思うこと
・Empathize 実体験はないけど、想像の中で相手のことを思うこと

 

日本語にすると「共感」のひとことになってしまいますが、両者には大きな違いがあります。
デザイン思考のメソッドでは、「Empathize」をすることからプロセスが始まります。

 

「Empathize」は、より能動的に相手のことを思うことです。
お客さんやお客さんになるかも知れない人の立場になってどれだけのことを考えているかに尽きます。
いけてないサービスやプロダクツは、お客さんやお客さんになるかも知れない人の立場になることが足りていないのです。

 

たくさん機能があるプロダクツが世の中にはあふれています。
機能の多さで差別化をしたい意図があるのでしょう。
それって、完全にプロダクトアウトの発想になっていないでしょうか?
使いもしない機能がたくさんあっても嬉しくはないです。
シンプルで必要最低限の機能に絞り込まれていることが、本質的に求められるニーズかも知れないのです。

 

お客さんやお客さんになるかも知れない人のことを「学習」した結果とは言い難いのでは?
と疑問符がつきます。

 

「あればなお良い」「あってもなくても良い」ような機能はバックログに置いておいて、本当に必要なのかを検討してからでも良いのではないでしょうか。

 

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