イノベーション創出とデザイン思考

ビジネスモデルにイノベーションを起こす

Topic 65 アンケートで新しいニーズを知るのは難しい、それは消費者は自分が何が欲しいのか分かっていないから

Apple社を創業したスティーブ・ジョブズの言葉に、
「多くの場合、人は形にして見せてもらうまで自分は何が欲しいのかわからない」とあります。

 

この言葉の通りで、人は体験してみて初めて、その価値に気がつく生き物です。
ガラケー携帯しかなかった時代に、アンケート調査をすればスマートフォンのニーズに気がつくことができたでしょうか?
だれもが「NO」と答えるのではないでしょうか。
今となっては、世の中はスマートフォン一色になっています。
それは、スティーブ・ジョブズがスマートフォンを形にして見せたからです。

 

これは、顧客に対するヒアリングにおいても然りです。

 

ADSLも光ファイバーも普及していなかったころに、どちらを望みますか?とアンケート調査をしたところ、多くの人が光ファイバーと答えたとのことです。
ところが、アンケート結果とは裏腹に、光ファイバーはなかなか普及しなかったのです。

 

ADSLを使ってみれば、快適にインターネットを楽しむことができたからです。
ADSLを体験していないころでは、単純に通信速度が速いであろう光ファイバーの方が良いと多くの人が答えたのです。

当然と言えば当然です。


でも、光ファイバーほどの通信速度は望んではいなかったのです。
いわゆるオーバースペックと言ったところでしょう。

 

ここでの教訓は、ニーズの本質を知るには、お客さんやお客さんになるかも知れない人がどんな状況にあるのか、コンテキスト(context)を理解することが必要だと言うことです。
要するに、光ファイバーの通信速度を求めないといけない状況にないと言うことだったのです。

 

そもそもアンケート調査やヒアリング調査の設計をするときには、何を解明したいのか、その問題が明確になっている必要があります。
お客さんやお客さんになるかも知れない人にとっての問題とは何か?
お客さんやお客さんになるかも知れない人は、どんな未来を望んでいるのでしょうか?
何を明らかにしたいのか?
それが分かっていることがアンケート調査やヒアリング調査の設計の前提となっているはずです。

 

解くべき問題が明確になっているとは、言い換えれば、お客さんやお客さんになるかも知れない人のニーズが分かっているということなのです。
それが分からないので、従来からのマーケットリサーチによるアプローチでは、限界があるのです

 

アンケート調査やヒアリング調査をしたとしても現状の改善にはつながるでしょうが、新しいニーズを発見することは、なかなかできないのです。
アンケート調査やヒアリング調査では、過去を知ることはできても、未来を知ることはできないからです。

 

破壊的イノベーションを起こすとなれば、なおさらです。
フィルムカメラが全盛だった頃にフィルムカメラのユーザーにデジタルカメラが欲しいか?と問いかけも、デジタルカメラが欲しいとは答えなかったでしょう。

 

フィルムカメラ全盛の時代に、デジタルカメラのような新しい商品のニーズがどこにあるのかを発見するにも、ターゲットにするべき顧客セグメントがどこにあるのかも分からないと言う根源的な問題があります。
なので、従来通りに計画を立てて、PDCAサイクルを回してのような具合では、破壊的イノベーションは生まれてはこないのです。

 

デザイン思考では「out of the box」に答えがあるといいます。
これまでと同じ社内や業界内の成功体験の中に居ては、新しいビジネスの発想は生まれては来ないのです。
従来のタクシー会社やホテル会社が従来の延長線上でPDCAサイクルを回せば、UberやAirbnbのような発想が生まれたでしょうか?
従来のタクシー会社やホテル会社がいくらアンケート調査やヒアリング調査をしても、そのような答えは導けないでしょう。

 

先ほど、ニーズの本質を知るには、お客さんやお客さんになるかも知れない人がどんな状況にあるのか、コンテキスト(context)を知ることが必要だと述べました。
このコンテキストは、時間の経過と共に変化をします。
例えば、コンビニエンスストアに行くとしても、朝と昼と夜とでは求めているものが異なっているでしょう。

 

ここにもアンケート調査やヒアリング調査の限界があるのです。過去と現在と未来の状況の変化でニーズが変化するのです。

 

日本マクドナルドでの出来事です。
お客さんにどんな商品が欲しいかと聞くと、オーガニック、ダイエット、ローカロリーなどのメニューが並ぶが、サラダを出しても売れなかったと言うことです。
昨今では、多く人の根源的な欲求として健康志向があるでしょう。
お客さんに聞けば、健康志向の商品が欲しいと答えが返ってくるでしょう。
ですが、マクドナルドにいる状況で、健康志向の食べ物を望むでしょうか?
ハンバーガーやフライドポテトをむさぼり食べたくて、マクドナルドに行くのではないでしょうか。

 

何を望んでいるかを知るには、お客さんやお客さんになるかも知れない人に対しての共感(Empathize)が第一歩となるのです。

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