イノベーション創出とデザイン思考

ビジネスモデルにイノベーションを起こす

Topic 64 ひとくちにイノベーションと言ってもいろいろ、企業のマネジメント層が可能性に気がつけるかどうか

イノベーションを分類してみます。
誰もが知るところの有名な分類の方法が下記です。

 

・持続的イノベーション
・破壊的イノベーション

 

持続的イノベーションは、既存市場の延長上にあるイノベーションです。
例としては、デジタルカメラの画素数、手ぶれ防止機能、防水機能です。

 

破壊的イノベーションは、今までに存在しなかった市場、価値観、ライフスタイルを形成してしまうようなことです。
例としては、フィルムカメラに対するデジタルカメラです。

 

デジタルカメラが登場したばかりのころは、フィルムカメラで撮影した画像の質感には、遠く及ばないとバカにされていたのを覚えています。
まったくもって、デジタルカメラには興味はないといったところです。
破壊的イノベーションは既存市場にいる人たちには受け入れてもらえない特徴があります。
もうひとつ特徴として、それ以前の商品と比較して性能が劣ることがあります。
デジタルカメラは現像する必要がなく、その場で写真を楽しんだり、写真を加工したりするライフスタイルを創り出しました。
このような可能性に気がつけるどうかです。

 

先ほどと似て非なる分類の方法が下記です。

 

・エボリューション 進化
・レボリューション 革新的

 

エボリューションは、例えば、液晶テレビに対する4Kテレビです。
レボリューションは、例えば、ブラウン管テレビから液晶テレビです。
エボリューションであろうが、レボリューションであろうが、既存市場にいる人たちをターゲットにし得るのです。
液晶テレビに対する4Kテレビであっても、ブラウン管テレビから液晶テレビであっても、既存市場にいる人たちにとっては、買い替え需要であることには変わりはないです。

 

イノベーションは組み合わせだとも言います。
例えば、スマホとカメラの組み合わせです。スマホはいつも持って歩いているものです。
そのカメラで撮影して、その場でSNSで情報発信をするのは日常の光景となっています。
いまどき、スマホのカメラがあるし、デジタルカメラをわざわざ購入する必要があるの?という議論さえもあります。
さらには、アプリとの組み合わせです。スマホで撮影した写真を可愛く加工するアプリがあります。
そのアプリで可愛く見えるように加工した写真をSNSにアップする女性は結構な数います。

 

デザイン思考によって生み出されるイノベーションは、マーケットを起点としています。
それは、人間中心設計が基本にあるからです。
その一方では、テクノロジーを起点としたイノベーションがあります。
インターネットの普及のようなテクノロジーを起点としたイノベーションでは、今までにない市場、価値観、ライフスタイルを形成してしまうことがしばしばあります。
インターネットは、コミュニケーションのありようを変えてしまいました。
SNSの普及へとつながり、個人による情報発信やコンテンツの提供が容易となりました。

まさに、ライフスタイルの変化です。

 

イノベーションは自分たちの生活をより良く、楽しくしてくれる可能性を秘めているのです。
企業のマネジメント層が、その可能性に気がつけるかどうかなのです。

 

既存市場のトップシェアを持つ企業は、なかなか新商品に乗り出すことができないものです。
既存のお客さんの声を聴けば、先ほどのフィルムカメラとデジタルカメラの例のように、新商品であるデジタルカメラを望んではいないからです。
既存のお客さんの声を重要視すれば、当然に既存商品の改良に注力することになるでしょう。
ところが新興勢力の企業によって、デジタルカメラの性能が日進月歩でアップしたのです。
気が付いたときは、既にとき遅しです。
デジタルカメラに対して、なんら眼中になかった人も、今となっては、すっかりとデジタルカメラのユーザーです。

 

いわゆるイノベーションのジレンマです。

 

デジタルカメラを発明したのはコダックです。
皮肉なことに、コダックはデジタルカメラの台頭によって市場から淘汰されたのです。
コダックは写真フィルムの覇者です。
その成功体験が写真フィルムにこだわるに至らしめたのです。

 

歴史からも学ぶことができます。
旧日本海軍は航空機の有用性を真珠湾攻撃で証明したにもかかわらず、巨大戦艦主義から抜け出すことができませんでした。
それは、日露戦争での成功体験によるところがあるのです。

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