Topic 59 デザイン思考は顧客開発を行うプロセス、新商品開発は消費者に興味や関心を持ってもらえるかどうかが最大のリスク
新商品開発を進めると同時に顧客開発も進める必要があります。
顧客開発とは、ターゲットを定めて、そのターゲットが解決したい問題を特定する行為です。
ターゲットとする消費者の何かしらの問題が解決されるから、消費者に興味や関心を持ってもらえるのです。
何かしらの問題が解決できることが購入する理由となるのです。
自社で開発したサービスやプロダクツは可愛いものです。さぞかし素晴らしく見えるかも知れません。
なのですが、どんなに素晴らしいと思えるサービスでもプロダクツでも、消費者に興味や関心を持ってもらえないことには話しにならないのです。
シンディ・アルバレス氏が著した「リーン顧客開発 ―「売れないリスク」を極小化する技術」には、失敗を「計画した投資利益率に届かないこと」と定義すれば、ベンチャーキャピタルの投資先の95%が失敗となるとさえ述べています。もっとも何をもって失敗とするかは、いろいろな尺度があるでしょう。ですが、失敗する確率は成功する確率より高いのは揺るぎない事実なのです。
自社の商品だけは、例外的に売れることはないのです。売れるには、売れるだけの理由が必要となります。
そこで、成功確率を高めるために「アイデア創出」「形にする」「テスト」「学習する」を繰り返して、消費者に興味や関心を持ってもらえる商品にするのです。
これは、デザイン思考のプロセスそのものです。
デザイン思考は顧客開発を行うプロセスなのです。
とてもシンプルなことです。
この問いかけに答えることができるかどうかです。
開発したサービスやプロダクツを消費者が購入しなければならない理由は何ですか?
「顧客が何を求めているかについて探すのは、顧客の仕事ではない。あなたの仕事だ」
スティーブ・ジョブズ
ところで、「新商品開発は消費者に興味や関心を持ってもらえるかどうかが最大のリスク」と表題をつけています。リスクとはどんな意味でしょうか?
リスクと聞いて、どんなことをイメージするでしょうか?
何か悪いことが起こることだとイメージされる方々も多いことだと思います。何か想定外に嫌なことが起きたときに備えて保険に入りますよね。保険に入ることでリスクヘッジします。
という考え方からすれば、リスクは、想定外の何か悪いことが起こることで意味は合っています。
ですが、ビジネスにおいては、「不確実」なことをリスクと言います。良いことが起こるかもしないのもリスクなのです。何か日常生活でのリスクとはイメージが違うように感じる方もおられることでしょう。
実はとても身近にもあるのです。
「あと、どれだけの年数生きるのか?」です。
老後に備えて年金に加入したり、貯金をするのは長生きすることのリスクに備えるためなのです。要するに、どれだけ長生きするのか分からないというリスクなのです。
良いことが起こるかもしれないし、悪いことが起こるかもしれない、どちらに転ぶかわからないのがリスクなのです。商売は水物と言います。それは流動的でどうなるか、なかなか予想通りにならないから、そのように表現するのです。
どれだけ売れるのか、100%確実な需要予測ができるなら、さぞかしビジネスは楽になるでしょう。予想以上に売れるのもリスクなのです。正しく嬉しい悲鳴ですね。
デザイン思考で、「アイデア創出」「形にする」「テスト」「学習する」を繰り返すのは、流動的な要素をいち早く取り除くことなのです。
「新商品開発における消費者に興味や関心を持ってもらえるかどうかのリスク」を排除する行為とも言えるのです。
新商品を開発するのは、事業を継続して拡大することに意図があるはずです。新製品を開発しても、消費者に受け入れてもらえなければ意味はないでしょう。