イノベーション創出とデザイン思考

ビジネスモデルにイノベーションを起こす

Topic 61 ストーリーテリングをビジネスに取り入れる、ビジネスを語るときに文字、数字、グラフのような情報が主人公になっていませんか?

ストーリーテリングの手法を取り入れて、プレゼンテーションをすることで、聞き手に強く印象付けるのです。
文字、数字、グラフのような情報を羅列するのではなく、ストーリー性をもって語ることで相手の気持ちを引き寄せる試みです。

あなたの会社のマネジメント層は変化を望んでいるでしょうか?
言葉では、新しい取り組みを望むようなことを言っても、いざとなったら新しいことを取り組むことによるリスクの話しになったりしていませんか?
なかなか革新的なビジネスモデルに対しては心を開いてはくれないのが現実だと思います。
そこで、ストーリー性をもって語ることで気持ちを引き寄せるのです。
これは、対外的なステークホルダーに対しても同じことです。

ビジネスモデルキャンバスは、ストーリー性を持ってビジネスモデルを語るツールとしても有効です。
ビジネスモデルキャンバスの9つの要素は密接につながっています。
そのつながりをストーリーで語るのです。

・どんな「顧客セグメント」に対して、
・どんな「価値提案」を提供して、
・顧客に対してどんな「チェネル」でアプローチをして、
・「顧客との関係」をどう構築することで、
・こんな「収益の流れ」を得て、
・それを実現するために、こんな「リソース」を活用して、
・そのリソースを活用して、こんな「主要活動」をして、
・それには、こんな「パートナー」が必要となり、
・それによって、こんな「コスト構造」が必要となる。

すべてがつながりますよね。

 

成功しているビジネスモデルは、ストーリーを語ることができるものです。
ビジネスモデルキャンバスはビジュアルで表現するツールです。ビジュアルで表現することで非常に分かりやすく伝わるのです。

まずは、自分でストーリーを語ってみることです。
ストーリー性を持たせて話してみると矛盾していることや話しのつながりがいけていないことに気がつくことがあります。
誰かに聞いてもらうまでもなく、自分で話すことで何か変だとか、何かが足りてないと気がついた経験がありませんでしょうか?

筆者が開催するセミナーでは、受講生に必ずストーリー性を持たせて話してもらう機会をつくります。
ビジネスモデルキャンバスの9つの要素はお互いに密接な関係があるので、組み合わせて考えることが必要とお話しをしています。
ですが、そのようにいくらお伝えしても、なかなかそうはならないものです。
きっと、頭の中ではつながりが出来ているのだろうなと思います。
それで、だいたいが自分で話しをしてみて気がつくのです。

もちろんのことですが、ストーリーテリングは新商品の紹介にも有効です。
新商品の開発のときに設定したペルソナを想定して説明をするのです。
ペルソナは、新商品であるサービスを利用するときやプロダクツを使用するとき、どんな状況にあるのか、コンテキスト(context)を想定して語るのです。
また、ペルソナ像となるような実在する人にストーリーテリングでプレゼンテーションをして、フィードバックをもらうのも有効となります。
お客さんとなる人が主人公なのです。
お客さんのどんな問題を解決するのでしょうか?
お客さんにどんな未来を提供しますか?
そんなことをストーリーで語るのです。
お客さんが知りたいのは、新商品の機能ではないのです。

とかく人は新しいことに懐疑的な動物です。
今までのやり方が正しいと信じていて、疑うことを知らないのかと思うことさえあります。
その根拠は何でしょうか?
今までがそうだったからでしょうか?
過去の成功体験がそうさせているのか、あるいは、さしたる根拠はないのかも知れないのです。
そのような方を相手にして、プレゼンテーションをすると言うことです。
誠意を持って、そのような方の心をいかにして開くかと言うことに尽きるのです。
そこで、聞き手と会話をしながら、徐々に自分のペースに巻き込むのも有効な手段となります。

参考文献
リーン顧客開発 ―「売れないリスク」を極小化する技術 シンディ・アルバレス(著)
ビジネスモデル・ジェネレーション アレックス・オスターワルダー,イヴ・ピニュール(著)

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Topic 60 ビジネスモデルを知ることの意味、ビジネスにも「型」がある

ビジネスモデルが存在しないビジネスは存在しないです。どんなビジネスにもビジネスモデルはあります。

 

ビジネスモデルとは?の問いに対する答えは、いろいろとありますが、

筆者が問われたときは、「顧客にとっての価値を提供し、企業が利益を獲得する仕組み」と答えます。

 

それぞれの企業に、それぞれのビジネスモデルがあります。

それらのビジネスモデルを抽象化して分類することが可能なのです。

 

例えば、フリーミアムです。基本的な機能は無料で提供して、より利便性が高いような機能は有料で提供するビジネスモデルです。

ゲームアプリではすっかりお馴染みですね。

ビジネスのアプリケーションでも、ドロップボックスがそうです。ビジネスで活用されている方も多いことでしょう。

まずは、より多くの人に利用してもらって、その商品の素晴らしさを体験してもらってから、お金をもらうビジネスモデルです。

 

このように、それぞれの企業レベルで見れば、違っているように見えるビジネスモデルでも、抽象度を上げて、類型化することで、同じビジネスモデルと見ることができるのです。

要するに、似たり寄ったりのビジネスをしている企業がたくさんあるということです。

言い換えれば、ビジネスモデルは模倣が可能ということなのです。

今枝昌宏氏が著した「ビジネスモデルの教科書」では、ビジネスモデルを将棋や囲碁の攻撃パターンや防御のパターンとなる定石になぞらえています。

 

アイデアとは全く無の状態から生まれることはまれです。新しいアイデアは既に存在するアイデアの組み合わせで生まれることが多いのです。

イノベーションは組み合わせだと、となえる方も居られます。筆者もその通りだと思います。

 

ビジネスモデルという概念があることで、成功した企業のビジネスを模倣することが可能となるのです。

なので、ビジネスモデルを知ることには意味があるのです。

 

日本古来の武道の考え方に「守破離(しゅはり)」があります。これは、師匠と弟子との関係を表現するものです。弟子には、それぞれにスキルのレベルがあります。

「守」とは、師匠に言われた型通りにする

「破」とは、自分流により良いと思う型を生み出す

「離」とは、師匠から離れて自由となる、自分の流派をつくれるレベル

 

最初は師匠に言われたことを確実に再現することからです。

これは、ビジネスの世界でも応用することができます。

それは、ビジネスモデルという概念があるからです。

まずは、ビジネスの「型」であるビジネスモデルを知ることからのスタートです。

その「型」を知ってからのイノベーションの発想です。

 

アマゾンのビジネスを模倣するのではなく、プラットフォームビジネスで何か面白いことができないかと発想するのです。

先ほど述べたフリーミアムもプラットフォームビジネスもビジネスモデルのほんの一例に過ぎません。

幸いなことに、ビジネスモデルの類型化は幾多の方々でなされています。それを活用して、どんなビジネスモデルが存在するのかを知ることができるのです。書店に行けば、その手の本を簡単に手にすることができます。

 

ビジネスモデルのことを語ると後付けだからと批判されることがあります。結果的にそのように類型化をしているのであって、理屈ではそうなるかも知れないけど、新しいビジネスのアイデアには使えるの?との疑問です。

このような発想になるのは、何もかもオリジナリティあるビジネスにしないといけないとの先入観があるからではないかと感じます。

「ビジネスモデルを既存の具体的なビジネスを抽象化した概念」とするならば、当然に後から出てくるものでしょう。企業それぞれのビジネスの本質的な部分を抽出して抽象化するのですから、当然に後からになります。

だからと言って無意味なものとなるのでしょうか?

 

抽象化した概念としてのビジネスモデルが整理されているからこそ、成功した企業のビジネスモデルを模倣することができるのです。

これは、あくまでも出発点です。「守破離」の「守」です。そこからどう発展するかが経営者の力量となるのです。あるいは、企業支援者であるコンサルタントの力量でもあります。

 

テレビのビジネスモデルはラジオのビジネスモデルの模倣そのものです。

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ビジネスモデルを知ることの意味については、こちらでも述べています。ご参照を頂ければと思います。

nakanomasashi.hateblo.jp

Topic 59 デザイン思考は顧客開発を行うプロセス、新商品開発は消費者に興味や関心を持ってもらえるかどうかが最大のリスク

新商品開発を進めると同時に顧客開発も進める必要があります。

顧客開発とは、ターゲットを定めて、そのターゲットが解決したい問題を特定する行為です。

ターゲットとする消費者の何かしらの問題が解決されるから、消費者に興味や関心を持ってもらえるのです。

何かしらの問題が解決できることが購入する理由となるのです。

 

自社で開発したサービスやプロダクツは可愛いものです。さぞかし素晴らしく見えるかも知れません。

なのですが、どんなに素晴らしいと思えるサービスでもプロダクツでも、消費者に興味や関心を持ってもらえないことには話しにならないのです。

 

シンディ・アルバレス氏が著した「リーン顧客開発 ―「売れないリスク」を極小化する技術」には、失敗を「計画した投資利益率に届かないこと」と定義すれば、ベンチャーキャピタルの投資先の95%が失敗となるとさえ述べています。もっとも何をもって失敗とするかは、いろいろな尺度があるでしょう。ですが、失敗する確率は成功する確率より高いのは揺るぎない事実なのです。

自社の商品だけは、例外的に売れることはないのです。売れるには、売れるだけの理由が必要となります。

そこで、成功確率を高めるために「アイデア創出」「形にする」「テスト」「学習する」を繰り返して、消費者に興味や関心を持ってもらえる商品にするのです。

これは、デザイン思考のプロセスそのものです。

デザイン思考は顧客開発を行うプロセスなのです。

 

とてもシンプルなことです。

この問いかけに答えることができるかどうかです。

開発したサービスやプロダクツを消費者が購入しなければならない理由は何ですか?

 

「顧客が何を求めているかについて探すのは、顧客の仕事ではない。あなたの仕事だ」

スティーブ・ジョブズ

 

ところで、「新商品開発は消費者に興味や関心を持ってもらえるかどうかが最大のリスク」と表題をつけています。リスクとはどんな意味でしょうか?

リスクと聞いて、どんなことをイメージするでしょうか?

 

何か悪いことが起こることだとイメージされる方々も多いことだと思います。何か想定外に嫌なことが起きたときに備えて保険に入りますよね。保険に入ることでリスクヘッジします。

という考え方からすれば、リスクは、想定外の何か悪いことが起こることで意味は合っています。

 

ですが、ビジネスにおいては、「不確実」なことをリスクと言います。良いことが起こるかもしないのもリスクなのです。何か日常生活でのリスクとはイメージが違うように感じる方もおられることでしょう。

実はとても身近にもあるのです。

「あと、どれだけの年数生きるのか?」です。

老後に備えて年金に加入したり、貯金をするのは長生きすることのリスクに備えるためなのです。要するに、どれだけ長生きするのか分からないというリスクなのです。

 

良いことが起こるかもしれないし、悪いことが起こるかもしれない、どちらに転ぶかわからないのがリスクなのです。商売は水物と言います。それは流動的でどうなるか、なかなか予想通りにならないから、そのように表現するのです。

どれだけ売れるのか、100%確実な需要予測ができるなら、さぞかしビジネスは楽になるでしょう。予想以上に売れるのもリスクなのです。正しく嬉しい悲鳴ですね。

 

デザイン思考で、「アイデア創出」「形にする」「テスト」「学習する」を繰り返すのは、流動的な要素をいち早く取り除くことなのです。

「新商品開発における消費者に興味や関心を持ってもらえるかどうかのリスク」を排除する行為とも言えるのです。

 

新商品を開発するのは、事業を継続して拡大することに意図があるはずです。新製品を開発しても、消費者に受け入れてもらえなければ意味はないでしょう。

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Topic 58 飲食店のオーナーが雑誌などのメディアに取り上げられることを拒む理由、それはお客さんを大切にしたいから

雑誌などのメディアに取り上げられることによる宣伝効果は大きいです。メディアによってはステータスさえ感じることでしょう。
それで、来店客が増えて売り上げが拡大すれば万々歳と言ったところでしょう。

 

ですが、必ずしもそうでしょうか?

 

飲食店のオーナーが雑誌などのメディアに取り上げられることを否とすることは珍しくないです。
飲食店を紹介するインターネットのサイトでも同じです。
それは、既存の上客を大切にしたいからです。

 

メディアに取り上げられて、新規の来店客があったとして、満席となって、既存のお客さんがお店に入れないことを是とはしないのです。
メディアでの紹介が来店動機となっている来店客が、継続的なお客さんになるでしょうか?
優れた飲食店であれば、口コミで来店客が増えるものです。口コミが一番手堅い宣伝なのです。
口コミが生まれるようなビジネスモデルが強いのです。

 

8対2の法則、パレートの法則とも言います。
2割の上客が8割の売り上げとなっているのです。その2割のお客さんのことを大切にするのは当然と言えます。
2割の上客に喜んでもらって、安定的な8割の売り上げを確保することで、飲食店とお客さんとでWin-Winの関係ができているのです。
一流と言われる飲食店のビジネスモデルとはそういうものです。

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Topic 57 顧客セグメントではなくペルソナでなければならない理由、お客さんは統計データではない

顧客セグメントとは、不特定多数の人々がいるマーケットを特定の属性で分類した集団のことです。
顧客セグメントの分類基準としては、下記となります。

 

・デモグラフィック 性別、年齢、所得、職業などの統計データ
・ジオグラフィック 国や地域による地理的なこと
・サイコグラフィック ライフスタイル、趣味嗜好、価値観などの心理的要因
・購買行動 購買金額、利用頻度などの過去の購買履歴

 

そして、分類した顧客セグメントに応じてマーケテイング戦略を行うのです。
自社の製品が大量に売れるとなれば、顧客セグメントに応じた様々な顧客特性を得られるようになるでしょう。

 

ですが、これから新製品を開発するとなれば、話しは変わってきます。
顧客セグメントをいくら設定したところで、どうして、その製品を購入しなければならないのかの答えが導き出せないからです。言い換えれば、購入する本音の理由が見えないのです。
自社の価値提案がマーケットで受け入れられるには、マーケットにいる人々が購入する理由が必要なのです。
その理由を見つけるために、特定の個人であるペルソナを設定するのです。

 

戦略レベルでは、世の中のトレンドを把握することは重要なことです。
ですが、顧客ニーズを発見するには、ペルソナを設定して、共感(Empathize)し、お客さんやお客さんになるかも知れない人の本音を洞察する必要があると言うことです。

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Topic 56 プロトタイピングをすることの意味、失敗することは学習のチャンス

デザイン思考のプロセスは、いくつか示されているが、だいたいは同じです。
「共感」「問題定義」「創造」「プロトタイピング」「テスト」の順と捉えて頂いて大丈夫です。
 
どうして、プロトタイピングのプロセスが必要なのでしょうか?
たくさん失敗する、すばやく失敗することで学びのチャンスを得るためです。
 
プロトタイピングでは、ビジュアル化をします。ビジュアル化することで、下記の効果を得ることが期待できます。
・他の人の右脳を刺激して発想を誘発
・全体像や位置関係をイメージしやすい
・複雑に思えることの整理に役立つ
 
プロトタイピングでは、様々な背景、価値観、考え方を持つ人たちが協働して、プロダクツやサービスのアイデアをより良いものに高めるのです。
そこには、お客さんも巻き込みます。なぜならば、お客さん自身も何を求めているのかが分からないものだからです。
ビジュアル化することで、お客さんが求めているニーズも明確になって行くのです。
 
失敗することを受け入れて、そこから学ぶことを重んじる組織こそ、イノベーションを生むのです。
もちろんですが、失敗の内容にもよりけりです。失敗することで新しい気づきを得て、プロダクツやサービスがより顧客満足度を高めることにならないことには意味がありません。
 
参考文献 21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由 佐宗邦威(著)

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Topic 55 論理的な思考のみではビジネスでの成功はない。直感や感情も必要

論理的思考と言えば、
客観的な事実に基づく根拠があって、一貫性があり、因果関係があるものです。
そこには、個人の直感や感情などと言うものは入る余地はないです。
ビジネスにおいて物事を判断するのに必要なことであります。
 
ですが、それだけで十分でしょうか?
 
スティーブジョブズがマウスを見て、これはコンピューターのデバイスとして有用であると判断したのは、必ずしも論理的な思考によるものではないでしょう。
今でこそ、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)が当たり前になっていますが、30年もさかのぼれば、難解なコマンドをキーボードで入力してパソコンを動かすのが当たり前でした。
コマンドを知らなくても扱えるパソコンの普及は、レボリューション、言い換えれば革新的イノベーションの代表格と言えるものです。
その当時、スティーブジョブズのような発想で、マウスをつかったGUIの有用性に気がつくことができた日本のパソコンメーカーは無かったということです。
 
とにかく根拠はないけど、面白そう。
何だか遊び心をくすぐられる。
 
そんな、直感や感情も必要なんです。
消費者は、論理的な思考や合理的な判断ばかりで商品を選んでいるのではないのです。
だからこそ、デザイン思考が注目されているのです。
 
論理的思考による判断と直感や感情による判断をバランスよく取り入れることが必要なのです。
 
消費者が論理的な思考や合理的な判断ばかりで商品を選んでいないことについては、こちらでも述べています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/07/31/141347

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Topic 54 お客さんにとって分かり難いことをしていませんでしょうか?それは、お客さんにとって大きなフラストレーション

自分がお客さんの立場であるときにフラストレーションを感じることはどんなことでしょうか?
人それぞれでしょうが、分かり難いことに対して、フラストレーションを感じてる方は多いのです。
 
料金のシステムが分かり難い
操作の仕方が分かり難い
どこにあるのか分かり難い
いつまで待たされるのか分かり難い
メニューが分かり難い
などなど。
 
分かり難いサービスもプロダクツもたくさんありますよね。
多くの人が何も言わずにイライラしたりモヤモヤしているのです。
ほとんどのお客さんがサイレントマジョリティです。何も言うことなく、自社のプロダクツやサービスが見捨てられてしまうのです。
 
お客さんに分かり難いと思わせないめに、何をしていますか?
 
自社のお客さん、あるいはお客さんになるかも知れない人には、どんなゲイン(gain)やペイン(pain)があるでしょうか?
ゲインとは得たいこと、ペインとは無くしたいことです。それを考えることが大切なんです。分かり難いことはペインの最有力候補です。
そのために、ペルソナを設定して、お客さんやお客さんになるかも知れない人に「共感」するのです。
デザイン思考において「共感」はポイントなのです。「共感」するためにペルソナを設定するのです。
 
「デザイナーは、思いやりを形に表わしていくのが仕事」デザインディレクター 川崎和男
 
ゲイン(gain)とペイン(pain)については、こちらでも述べています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/07/24/074029

 

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Topic 53 ビジネスモデルを知ることの意味、彼を知り己を知れば百戦殆うからず

ビジネスモデルが存在しないビジネスは存在しないです。どんなビジネスにもビジネスモデルはあります。

ビジネスモデルとは?の問いに対する答えは、いろいろとありますが、
筆者が問われたときは、「顧客にとっての価値を提供し、企業が利益を獲得する仕組み」と答えます。
経営戦略をどう具現化するのかがビジネスモデルです。
経営戦略を支えるのがビジネスモデルです。
ビジネスモデルを知ると言うのは、客観的にビジネスを知ると言うことでもあります。
 
3C分析と言われるフレームワークがあります。下記の項目に着目して現状を把握しようとするフレームワークです。
・Customer 顧客
・Competitor 競合
・Company 自社
 
次の3つの問いかけに客観的な視点で答えます。
・誰が自社の顧客なのか?
・競合他社の脅威はどの程度なのか?
・それに対して自社は勝てるのか?
 
「顧客の理解」「競合の理解」「自社の理解」は、ビジネスにおいて、極めて基本的なことです。
競合他社のビジネスモデルと自社のビジネスモデルの理解をしない状態で厳しいビジネスの環境で戦えるはずがないと言うことです。

「競合の理解」とは敵の戦い方を知るということです。敵の戦い方を知らずして、どのようにして戦えれば良いのでしょうか?

 
分析的なアプローチで新しい価値の創造は困難であるでしょう。だからこそ、デザイン思考が注目されているのです。
では、分析的なアプローチは意味がないものでしょうか?
そんなことはないです。
3C分析のようなフレームワークは客観的に現状把握をするためのチェックリストとしては有用であることには変わりないです。
フレームワークはロジカルシンキングで言うところのMECE(漏れなく、だぶりなく)とするものです。
このようなツールも適宜取り入れることは、デザイン思考でも有効であり、デザイン思考とロジカルシンキングは対立軸にはないと言うことです。
 
ビジネスモデルの全体像を俯瞰するには、ビジネスモデルキャンバスが有用です。
9つの項目に当てはめて、その項目間の相互関係を検証することでビジネスモデルを理解します。

競合他社のことも自社のことも同じビジネスモデルキャンバスに表現することで、比較検討することが容易となるメリットもあります。

 
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」 孫子
 

経営戦略の策定は、外部環境と内部環境の分析から始まります。外部環境と内部環境の分析ではSWOT分析が有名ですね。外部環境分析ではPEST分析が有名です。

外部環境の変化では、政治動向、マクロ経済的な動向、ライフスタイルや流行、新しいテクノロジーの登場などが企業経営にインパクトを与えます。これらの動向は戦略レベルでは、当然に検討されるべきものです。

一方で、ミクロな視点も必要となります。それが、先ほど述べた「顧客の理解」「競合の理解」「自社の理解」です。「競合の理解」「自社の理解」は先述したビジネスモデルキャンバスが強力なツールとなります。

 

2つの視点が必要ということになるのです。

・外部環境と内部環境の視点

・マクロとミクロの視点

  

ビジネスモデルとは経営戦略を実現するための具体的な手段です。経営戦略を支えるのがビジネスモデルです。言い換えれば、経営戦略を実現可能とする裏付けであります。

競合他社の経営戦略にはどんな裏付けがあるのでしょうか?

自社の経営戦略にはどんな裏付けが存在し得るのでしょうか?

 

また、「顧客の理解」ではペルソナマーケティングが強力な手法となります。

ペルソナとは顧客ターゲットのうち、最も重要で象徴的な顧客モデルのことです。顧客モデルを設定することで、お客さんやお客さんになるかも知れない人の本音に迫るのです。

 

「自社の理解」は最後です。

自社のことばかりに気持ちや力が偏っていませんか?

自社で何かを始めるまえに、「顧客の理解」や「競合の理解」からです。

市場が魅力的で、競合他社に対抗し得るだけの裏付けが確認できるなら、新ビジネスの開始です。

 

参考文献

グロービスMBAファイナンス

グロービスMBA経営戦略

ビジネスモデルの教科書 今枝昌宏()

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Topic 52 ヒューマンエラーですか?実はデザインがいけてないからではないでしょうか?

前回の投稿に続いて、「なぜ」「なぜ」と繰り返して根本的な理由を探ることについて述べたいと思います。
今回は、プロダクツに関してです。
 
何かエラーが発生したときに、ヒューマンエラーによることを原因にしていませんでしょうか?
本当にそれで良いのでしょうか?
「なぜ」「なぜ」と繰り返して、ヒューマンエラーが発見されると、そこで原因追求を止めていませんでしょうか?
ヒューマンエラーが発見されると原因追求を止めてしまう傾向にあるのは、D.A.ノーマン氏が著した「誰のためのデザイン?」でも指摘されています。
 
ヒューマンエラーが起きてしまっているのは、デザインがいけてないのかも知れないのです。
どんなに気を付けても、どんなに注意喚起をしても、ヒューマンエラーはなくならないものです。
それを‭人のせいにしますか?
それよりは、デザインを進化させて、ヒューマンエラーを防ぐようにすることを考えるべきです。
これこそが、持続的イノベーションです。
 
筆者は、アプリケーションの開発の現場において、設計やプログラミングがいけてないことを認めたくないがために、ヒューマンエラーによることを原因にしてしまっているのを何度も目の当たりにしています。
自分の保身のために、人のせいにしてしまっているのです。
これは、カスタマーサポートでもありがちなことです。
その発想は、人間中心設計からほど遠いものです。
 
前回投稿した記事はこちらです。「なぜ」「なぜ」と繰り返して、真のニーズを探ることについて述べています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/08/17/073627

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Topic 51 真のニーズを知るために「なぜ」を繰り返す、5つの「なぜ」はトヨタの生産方式で編み出された強力な手法

例えば、「料理教室に行きたい」のは、なぜでしょうか?
それは、人によりけりです。
うわべだけの理解に終わらせないように、どうして、そのようなことをしたいのか本当の理由を知ることが必要です。
そのために「なぜ」を繰り返して根本的な理由を探ります。
 
ニーズとは現在の状況と未来の理想像とのギャップを埋めることだと、前回の投稿で述べました。根本的な理由を知ると言うのは、未来の理想像を知ると言うことです。
真のニーズを知るために、本当の理由を探るのです。
真のニーズを知らないことには、ニーズに応えるアイデアを出すことはできないのです。
アイデアはたくさん出します。その中で優先順位をつけるにしても本当の理由を知っておかないとできないのです。
「なぜ」を繰り返すのは強力な手法であると、D.A.ノーマン氏が著した「誰のためのデザイン?」でも述べられています。
 
気をつけたいのは、「なぜ」の問いかけは、因果関係を論理的につなげて答える必要があり、そこに気持ちが行くばかりに発想が狭くなる可能性があることです。
論理的に思考するのは、思いのほかパワーが必要です。
さらに言えば、根本的な理由はひとつではないことがあると言うことです。
「なぜ」を繰り返すばかりに、根本的な理由をひとつにしてしまっていませんでしょうか?
 
「どうして、そうしたいのですか?」
この問いかけをリフレーミングして、
「そのようにしたいと思うようになったいきさつは、どんなことですか?いろいろとあれば挙げてみて下さい。」としても良いと思います。
とりあえずは、何となくでも良いです。理由は、漠然と何となくとしか思ってないこともあります。
その後で、因果関係でどうつながるのか、あるいはつながらないのかを確認する方法もあります。
 
「Why」から「What」へのリフレーミングをすれば、論理的に思考する必要なく、答えることができます。
「Why」の問いかけをするのか、「What」の問いかけをするのか、その時その時で使い分けてみてはどうでしょうか。
 
前回投稿した記事はこちらです。問題と課題の違いを認識して、顧客ニーズを把握することについて述べています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/08/16/073832

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Topic 50 問題と課題の違いを認識して、現在と未来の2つの視点を持って顧客ニーズを把握する

下記の2つを例にします。
・納期遅れが発生している
・短納期化をする
 
いずれも納期についてですが、この2つには大きな違いがあります。
「納期遅れが発生している」は、現在進行形のことであり明確に問題です。疑いようもなくネガティブな状況です。
一方で、「短納期化をする」は、ネガティブな状況なのかポジティブな状況なのかは、何とも言えないです。
それは状況次第です。
納期に遅れることがあり、お客さんに迷惑をかけているので短納期化をするのであれば、ネガティブな状況です。
納期の要請には応えられているが、他社に対して競争力を高めるために短納期化をするのであれば、ポジティブな状況です。
 
実はこの2つの違いはこんなところにあります。
「納期遅れが発生している」は問題であり、「短納期化をする」は課題なのです。
問題とは現在進行形で起きてしまっていることです。課題とは未来の理想像とのギャップを埋めるためのアクションなのです。
 
例えば、「料理ができない」は、問題でしょうか?
料理が出来なくとも困っていない方はたくさんいます。問題となるかどうかはその人の状況によりけりです。
「料理ができない」を問題意識として感じて何とかしたいとすれば、「料理ができるようになる」ことが課題として設定されるのです。
 
お客さん、あるいはお客さんになるかも知れない人のニーズとは、現在の状況と未来の理想像とのギャップを埋めることにあります。
従って、現在どんな状況にあるのかと未来の理想像とを理解することが必要となります。
ニーズの本質を知るには、どんな状況にあるのか、コンテキスト(context)を知らないことには話しが始まらないのです。
 
デザイン思考のプロセスは、いくつか示されているが、だいたいは同じです。
「共感」「問題定義」「創造」「プロトタイピング」「テスト」の順と捉えて頂いて大丈夫です。
ここで、問題定義とは、現在どんな状況にあるのかと未来の理想像とのギャップを見つけて、顧客ニーズを明確にすることです。
 
顧客ニーズを明確にするには、現在のコンテキスト(context)の理解、未来の理想像の理解の2つの視点が必要となるのです。
 
顧客の状況(コンテキスト)の理解についてはこちらの記事でも紹介しています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/07/17/142503

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Topic 49 寿司屋のビジネスモデル、寿司屋はどうしてランチも営業するのか?

前回の投稿に続いて、寿司屋を題材にして述べたいと思います。
 
寿司屋は言うまでもないですが、生鮮食品を取り扱っています。
鮮度や上品な味わい、ネタの色合いなどが重要であることは述べるまでもないと思います。となれば、当然に仕入れた食材を使える期間は短くなり廃棄ロスのリスクを抱えることになります。
そこで、ランチ営業もして廃棄ロスのリスクを回避しているのです。
 
廃棄ロスのリスクを回避する手段があるとすれば、夜の営業の終了間際までネタを揃えておくことによる廃棄ロスのリスクを感じることを軽減できます。
さらに言えば、店舗のテナント料はランチの営業をしても、しなくても同じです。であれば、ランチも営業した方が効率が良いと言うことになります。
一方で、お客さんの立場とすれば、閉店時間に近い時間帯に寿司屋に入っても自分が好きなネタを選ぶことができる体験価値を享受することができるのです。
なので、ランチも営業することで、お客さんと寿司屋との相互で利益を共有できることになります。
 
寿司屋に限らず、ケーキ屋やパン屋などの食品を取り扱う店舗では、在庫が少ないと何故か売れ残りに見えてしまって魅力を感じなくなるのです。これは、客足を遠のけることにつながります。
同じ商品であっても価値が違うように判断するのです。人間は必ずしも合理的な判断によって行動をしていないと言うことです。
かと言って、閉店間際まで品揃えを良くすると廃棄ロスとのジレンマが生じます。
なので、閉店間際に商品をたたき売りしたり、ダンピングするなどの対応に迫られるのです。
 
寿司屋によっては、オーナーの理念でランチを営業しないとしている店もあります。夜の営業に注力したいとの思いをお持ちの方も居られます。
オーナーの考え方次第です。
ランチも営業することとお客さんの立場になっているかどうかは、全く別問題であることを付け加えておきます。
筆者が利用している寿司屋はランチ営業はしていませんが、閉店間際でもネタの品揃えは良いです。
お客さんに共感(Empathize)して、お客さんの立場でサービスを提供することとサービスを提供する側の理念は相反するものではなく、そこはやり方次第ということなのです。
 
前回投稿した記事はこちらです。廃棄ロスと機会ロスについて述べています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/08/14/082052

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Topic 48 廃棄ロスと機会ロス 目先の廃棄ロスを避けようとするばかりに大きな機会ロスを生じている

閉店時間に近い時間帯に寿司屋に入ったところ、ネタが残り少なかったとしたらどうでしょうか?
がっかりしますよね。それとも閉店時間に近いし仕方ないとしますか?
 
寿司屋は言うまでもないですが、生鮮食品を取り扱っています。
今日売れ残った食材は明日の営業では使えない可能性があります。となれば、売れ残った食材は廃棄するしかなく、廃棄ロスとなるかもしれないと言うことです。
この廃棄ロスを回避するために、来店客の見込み数に応じて仕入れるとすれば当然に閉店近い時間帯となればネタは残り少なくなります。
そんな状況で来店したお客さんの立場となれば、売れ残りのネタを食べさせられているように気持ちになるでしょう。
 
ここでのポイントは、人は得られる満足より失う苦痛の方を大きく感じるということです。
行動経済学での損失回避性と言われる現象です。
お客さんに、損したような気持ちにさせたとすれば、それは想像以上に大きく損した気持ちになっているということです。
一方、寿司屋のオーナーとすれば廃棄ロスを出すと大きく損失したような気持ちとなって、それを回避しようとします。
お客さんと寿司屋とで利益が相反することになります。
 
ここで考えたいのは、損した気分にさせてしまったお客さんは、2度とリピートはしないと言うことです。
さらに言えば、悪い口コミは良い口コミの何倍も広がると言うことです。
寿司屋としては、その機会ロスは計り知れないものになります。
 
筆者が利用する寿司屋は地域でも人気店で出前の注文が多いです。
ですが、あまり出前注文を受けると来店してくれたお客さんのネタが無くなってしまうので、ほどほどのところで出前を断っています。
来店してくれるお客さんを大切にしたい気持ちなのです。
 
これは、バイキング料理でも同じです。
終了時刻に近い時間帯においても、人気メニューも含めテーブルいっぱいに料理がある店こそが、お客さんの立場になっている一流のお店なのです。
 
来店するまでにも、お客さんはコスト(お金・時間・手間)をかけているのです。
成功している飲食店のオーナーは、本能的にお客さんに共感(Empathize)しているのではないかと感じるところです。
価値とは体験すること、価値とは感じるものなのです。
寿司屋にしてもバイキングにしても好きな食べ物を好きなだけ選べることに体験価値があるのです。
 
価値に関してはこちらでも述べています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/08/01/083346

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Topic 47 日々の様子を深く知ることによる潜在的なニーズの発見

P&Gの「ファブリーズ」は、日頃洗うことができない衣類や布製品に対して、消臭・除菌を行うものです。
これは、日常生活を深く知ることから生まれた製品とのことです。
「ファブリーズ」の登場によって、洗えない衣類や布製品をスプレーで「消臭・除菌」するという新しい需要を生み出しています。
デザイン思考が新市場の開拓にも有効であることを示す好例と言える製品です。
 
このようなアプローチはエスノグラフィーと言われます。
もともとは、文化人類学、社会学で用いられているフィールドワークによる社会や集団を調査する手法です。その手法がビジネスの現場でも活用されています。
日常の生活やビジネスの日常でどんなことが起こっているのかをフィールドワークで知って、そこから潜在的なニーズを発見するのです。
コピー機のコピー開始のときのボタンが緑色なのはビジネスの現場で起きていることを知ることで生まれたアイデアです。
コピー機を操作するのに四苦八苦している様子をみて、どのボタンを押せばコピーが開始できるのか分かりやすくしたのです。
 
プロダクツやサービスを開発した人が想像もできないような行動を消費者はするのです。
そのような行動をしてしまう理由を知ることもイノベーション創出のヒントとなるのです。
デザイン思考では、お客さんを巻き込んだ新製品の開発を行います。その中でエスノグラフィーは常套手段とも言えます。
もっともデザイン思考などと言わずとも、お客さんの立場となったプロダクツやサービスを開発している企業の多くで行われていることでしょう。
 
外部の人間を巻き込むことによって、何を開発しようとしているのかの機密情報が洩れてしまうのではないか?と思われる方が居られます。
もとより、何を開発しようとしているのかを観察対象者に知らせないのが基本です。そのようなことを知られてしまって変に先入観を持たれて、いつもと違う行動をされては、元も子もないのです。
さらに言えば、他社が、どんな新製品を開発しようとしているのか知ったとしても、だからと言って、その新製品を開発できるかどうかは全く別次元の問題です。
 
顕在化したニーズと潜在的なニーズについては、こちらで述べています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/06/29/075854

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