イノベーション創出とデザイン思考

ビジネスモデルにイノベーションを起こす

Topic 54 お客さんにとって分かり難いことをしていませんでしょうか?それは、お客さんにとって大きなフラストレーション

自分がお客さんの立場であるときにフラストレーションを感じることはどんなことでしょうか?
人それぞれでしょうが、分かり難いことに対して、フラストレーションを感じてる方は多いのです。
 
料金のシステムが分かり難い
操作の仕方が分かり難い
どこにあるのか分かり難い
いつまで待たされるのか分かり難い
メニューが分かり難い
などなど。
 
分かり難いサービスもプロダクツもたくさんありますよね。
多くの人が何も言わずにイライラしたりモヤモヤしているのです。
ほとんどのお客さんがサイレントマジョリティです。何も言うことなく、自社のプロダクツやサービスが見捨てられてしまうのです。
 
お客さんに分かり難いと思わせないめに、何をしていますか?
 
自社のお客さん、あるいはお客さんになるかも知れない人には、どんなゲイン(gain)やペイン(pain)があるでしょうか?
ゲインとは得たいこと、ペインとは無くしたいことです。それを考えることが大切なんです。分かり難いことはペインの最有力候補です。
そのために、ペルソナを設定して、お客さんやお客さんになるかも知れない人に「共感」するのです。
デザイン思考において「共感」はポイントなのです。「共感」するためにペルソナを設定するのです。
 
「デザイナーは、思いやりを形に表わしていくのが仕事」デザインディレクター 川崎和男
 
ゲイン(gain)とペイン(pain)については、こちらでも述べています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/07/24/074029

 

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Topic 53 ビジネスモデルを知ることの意味、彼を知り己を知れば百戦殆うからず

ビジネスモデルが存在しないビジネスは存在しないです。どんなビジネスにもビジネスモデルはあります。

ビジネスモデルとは?の問いに対する答えは、いろいろとありますが、
筆者が問われたときは、「顧客にとっての価値を提供し、企業が利益を獲得する仕組み」と答えます。
経営戦略をどう具現化するのかがビジネスモデルです。
経営戦略を支えるのがビジネスモデルです。
ビジネスモデルを知ると言うのは、客観的にビジネスを知ると言うことでもあります。
 
3C分析と言われるフレームワークがあります。下記の項目に着目して現状を把握しようとするフレームワークです。
・Customer 顧客
・Competitor 競合
・Company 自社
 
次の3つの問いかけに客観的な視点で答えます。
・誰が自社の顧客なのか?
・競合他社の脅威はどの程度なのか?
・それに対して自社は勝てるのか?
 
「顧客の理解」「競合の理解」「自社の理解」は、ビジネスにおいて、極めて基本的なことです。
競合他社のビジネスモデルと自社のビジネスモデルの理解をしない状態で厳しいビジネスの環境で戦えるはずがないと言うことです。

「競合の理解」とは敵の戦い方を知るということです。敵の戦い方を知らずして、どのようにして戦えれば良いのでしょうか?

 
分析的なアプローチで新しい価値の創造は困難であるでしょう。だからこそ、デザイン思考が注目されているのです。
では、分析的なアプローチは意味がないものでしょうか?
そんなことはないです。
3C分析のようなフレームワークは客観的に現状把握をするためのチェックリストとしては有用であることには変わりないです。
フレームワークはロジカルシンキングで言うところのMECE(漏れなく、だぶりなく)とするものです。
このようなツールも適宜取り入れることは、デザイン思考でも有効であり、デザイン思考とロジカルシンキングは対立軸にはないと言うことです。
 
ビジネスモデルの全体像を俯瞰するには、ビジネスモデルキャンバスが有用です。
9つの項目に当てはめて、その項目間の相互関係を検証することでビジネスモデルを理解します。

競合他社のことも自社のことも同じビジネスモデルキャンバスに表現することで、比較検討することが容易となるメリットもあります。

 
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」 孫子
 

経営戦略の策定は、外部環境と内部環境の分析から始まります。外部環境と内部環境の分析ではSWOT分析が有名ですね。外部環境分析ではPEST分析が有名です。

外部環境の変化では、政治動向、マクロ経済的な動向、ライフスタイルや流行、新しいテクノロジーの登場などが企業経営にインパクトを与えます。これらの動向は戦略レベルでは、当然に検討されるべきものです。

一方で、ミクロな視点も必要となります。それが、先ほど述べた「顧客の理解」「競合の理解」「自社の理解」です。「競合の理解」「自社の理解」は先述したビジネスモデルキャンバスが強力なツールとなります。

 

2つの視点が必要ということになるのです。

・外部環境と内部環境の視点

・マクロとミクロの視点

  

ビジネスモデルとは経営戦略を実現するための具体的な手段です。経営戦略を支えるのがビジネスモデルです。言い換えれば、経営戦略を実現可能とする裏付けであります。

競合他社の経営戦略にはどんな裏付けがあるのでしょうか?

自社の経営戦略にはどんな裏付けが存在し得るのでしょうか?

 

また、「顧客の理解」ではペルソナマーケティングが強力な手法となります。

ペルソナとは顧客ターゲットのうち、最も重要で象徴的な顧客モデルのことです。顧客モデルを設定することで、お客さんやお客さんになるかも知れない人の本音に迫るのです。

 

「自社の理解」は最後です。

自社のことばかりに気持ちや力が偏っていませんか?

自社で何かを始めるまえに、「顧客の理解」や「競合の理解」からです。

市場が魅力的で、競合他社に対抗し得るだけの裏付けが確認できるなら、新ビジネスの開始です。

 

参考文献

グロービスMBAファイナンス

グロービスMBA経営戦略

ビジネスモデルの教科書 今枝昌宏()

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Topic 52 ヒューマンエラーですか?実はデザインがいけてないからではないでしょうか?

前回の投稿に続いて、「なぜ」「なぜ」と繰り返して根本的な理由を探ることについて述べたいと思います。
今回は、プロダクツに関してです。
 
何かエラーが発生したときに、ヒューマンエラーによることを原因にしていませんでしょうか?
本当にそれで良いのでしょうか?
「なぜ」「なぜ」と繰り返して、ヒューマンエラーが発見されると、そこで原因追求を止めていませんでしょうか?
ヒューマンエラーが発見されると原因追求を止めてしまう傾向にあるのは、D.A.ノーマン氏が著した「誰のためのデザイン?」でも指摘されています。
 
ヒューマンエラーが起きてしまっているのは、デザインがいけてないのかも知れないのです。
どんなに気を付けても、どんなに注意喚起をしても、ヒューマンエラーはなくならないものです。
それを‭人のせいにしますか?
それよりは、デザインを進化させて、ヒューマンエラーを防ぐようにすることを考えるべきです。
これこそが、持続的イノベーションです。
 
筆者は、アプリケーションの開発の現場において、設計やプログラミングがいけてないことを認めたくないがために、ヒューマンエラーによることを原因にしてしまっているのを何度も目の当たりにしています。
自分の保身のために、人のせいにしてしまっているのです。
これは、カスタマーサポートでもありがちなことです。
その発想は、人間中心設計からほど遠いものです。
 
前回投稿した記事はこちらです。「なぜ」「なぜ」と繰り返して、真のニーズを探ることについて述べています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/08/17/073627

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Topic 51 真のニーズを知るために「なぜ」を繰り返す、5つの「なぜ」はトヨタの生産方式で編み出された強力な手法

例えば、「料理教室に行きたい」のは、なぜでしょうか?
それは、人によりけりです。
うわべだけの理解に終わらせないように、どうして、そのようなことをしたいのか本当の理由を知ることが必要です。
そのために「なぜ」を繰り返して根本的な理由を探ります。
 
ニーズとは現在の状況と未来の理想像とのギャップを埋めることだと、前回の投稿で述べました。根本的な理由を知ると言うのは、未来の理想像を知ると言うことです。
真のニーズを知るために、本当の理由を探るのです。
真のニーズを知らないことには、ニーズに応えるアイデアを出すことはできないのです。
アイデアはたくさん出します。その中で優先順位をつけるにしても本当の理由を知っておかないとできないのです。
「なぜ」を繰り返すのは強力な手法であると、D.A.ノーマン氏が著した「誰のためのデザイン?」でも述べられています。
 
気をつけたいのは、「なぜ」の問いかけは、因果関係を論理的につなげて答える必要があり、そこに気持ちが行くばかりに発想が狭くなる可能性があることです。
論理的に思考するのは、思いのほかパワーが必要です。
さらに言えば、根本的な理由はひとつではないことがあると言うことです。
「なぜ」を繰り返すばかりに、根本的な理由をひとつにしてしまっていませんでしょうか?
 
「どうして、そうしたいのですか?」
この問いかけをリフレーミングして、
「そのようにしたいと思うようになったいきさつは、どんなことですか?いろいろとあれば挙げてみて下さい。」としても良いと思います。
とりあえずは、何となくでも良いです。理由は、漠然と何となくとしか思ってないこともあります。
その後で、因果関係でどうつながるのか、あるいはつながらないのかを確認する方法もあります。
 
「Why」から「What」へのリフレーミングをすれば、論理的に思考する必要なく、答えることができます。
「Why」の問いかけをするのか、「What」の問いかけをするのか、その時その時で使い分けてみてはどうでしょうか。
 
前回投稿した記事はこちらです。問題と課題の違いを認識して、顧客ニーズを把握することについて述べています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/08/16/073832

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Topic 50 問題と課題の違いを認識して、現在と未来の2つの視点を持って顧客ニーズを把握する

下記の2つを例にします。
・納期遅れが発生している
・短納期化をする
 
いずれも納期についてですが、この2つには大きな違いがあります。
「納期遅れが発生している」は、現在進行形のことであり明確に問題です。疑いようもなくネガティブな状況です。
一方で、「短納期化をする」は、ネガティブな状況なのかポジティブな状況なのかは、何とも言えないです。
それは状況次第です。
納期に遅れることがあり、お客さんに迷惑をかけているので短納期化をするのであれば、ネガティブな状況です。
納期の要請には応えられているが、他社に対して競争力を高めるために短納期化をするのであれば、ポジティブな状況です。
 
実はこの2つの違いはこんなところにあります。
「納期遅れが発生している」は問題であり、「短納期化をする」は課題なのです。
問題とは現在進行形で起きてしまっていることです。課題とは未来の理想像とのギャップを埋めるためのアクションなのです。
 
例えば、「料理ができない」は、問題でしょうか?
料理が出来なくとも困っていない方はたくさんいます。問題となるかどうかはその人の状況によりけりです。
「料理ができない」を問題意識として感じて何とかしたいとすれば、「料理ができるようになる」ことが課題として設定されるのです。
 
お客さん、あるいはお客さんになるかも知れない人のニーズとは、現在の状況と未来の理想像とのギャップを埋めることにあります。
従って、現在どんな状況にあるのかと未来の理想像とを理解することが必要となります。
ニーズの本質を知るには、どんな状況にあるのか、コンテキスト(context)を知らないことには話しが始まらないのです。
 
デザイン思考のプロセスは、いくつか示されているが、だいたいは同じです。
「共感」「問題定義」「創造」「プロトタイピング」「テスト」の順と捉えて頂いて大丈夫です。
ここで、問題定義とは、現在どんな状況にあるのかと未来の理想像とのギャップを見つけて、顧客ニーズを明確にすることです。
 
顧客ニーズを明確にするには、現在のコンテキスト(context)の理解、未来の理想像の理解の2つの視点が必要となるのです。
 
顧客の状況(コンテキスト)の理解についてはこちらの記事でも紹介しています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/07/17/142503

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Topic 49 寿司屋のビジネスモデル、寿司屋はどうしてランチも営業するのか?

前回の投稿に続いて、寿司屋を題材にして述べたいと思います。
 
寿司屋は言うまでもないですが、生鮮食品を取り扱っています。
鮮度や上品な味わい、ネタの色合いなどが重要であることは述べるまでもないと思います。となれば、当然に仕入れた食材を使える期間は短くなり廃棄ロスのリスクを抱えることになります。
そこで、ランチ営業もして廃棄ロスのリスクを回避しているのです。
 
廃棄ロスのリスクを回避する手段があるとすれば、夜の営業の終了間際までネタを揃えておくことによる廃棄ロスのリスクを感じることを軽減できます。
さらに言えば、店舗のテナント料はランチの営業をしても、しなくても同じです。であれば、ランチも営業した方が効率が良いと言うことになります。
一方で、お客さんの立場とすれば、閉店時間に近い時間帯に寿司屋に入っても自分が好きなネタを選ぶことができる体験価値を享受することができるのです。
なので、ランチも営業することで、お客さんと寿司屋との相互で利益を共有できることになります。
 
寿司屋に限らず、ケーキ屋やパン屋などの食品を取り扱う店舗では、在庫が少ないと何故か売れ残りに見えてしまって魅力を感じなくなるのです。これは、客足を遠のけることにつながります。
同じ商品であっても価値が違うように判断するのです。人間は必ずしも合理的な判断によって行動をしていないと言うことです。
かと言って、閉店間際まで品揃えを良くすると廃棄ロスとのジレンマが生じます。
なので、閉店間際に商品をたたき売りしたり、ダンピングするなどの対応に迫られるのです。
 
寿司屋によっては、オーナーの理念でランチを営業しないとしている店もあります。夜の営業に注力したいとの思いをお持ちの方も居られます。
オーナーの考え方次第です。
ランチも営業することとお客さんの立場になっているかどうかは、全く別問題であることを付け加えておきます。
筆者が利用している寿司屋はランチ営業はしていませんが、閉店間際でもネタの品揃えは良いです。
お客さんに共感(Empathize)して、お客さんの立場でサービスを提供することとサービスを提供する側の理念は相反するものではなく、そこはやり方次第ということなのです。
 
前回投稿した記事はこちらです。廃棄ロスと機会ロスについて述べています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/08/14/082052

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Topic 48 廃棄ロスと機会ロス 目先の廃棄ロスを避けようとするばかりに大きな機会ロスを生じている

閉店時間に近い時間帯に寿司屋に入ったところ、ネタが残り少なかったとしたらどうでしょうか?
がっかりしますよね。それとも閉店時間に近いし仕方ないとしますか?
 
寿司屋は言うまでもないですが、生鮮食品を取り扱っています。
今日売れ残った食材は明日の営業では使えない可能性があります。となれば、売れ残った食材は廃棄するしかなく、廃棄ロスとなるかもしれないと言うことです。
この廃棄ロスを回避するために、来店客の見込み数に応じて仕入れるとすれば当然に閉店近い時間帯となればネタは残り少なくなります。
そんな状況で来店したお客さんの立場となれば、売れ残りのネタを食べさせられているように気持ちになるでしょう。
 
ここでのポイントは、人は得られる満足より失う苦痛の方を大きく感じるということです。
行動経済学での損失回避性と言われる現象です。
お客さんに、損したような気持ちにさせたとすれば、それは想像以上に大きく損した気持ちになっているということです。
一方、寿司屋のオーナーとすれば廃棄ロスを出すと大きく損失したような気持ちとなって、それを回避しようとします。
お客さんと寿司屋とで利益が相反することになります。
 
ここで考えたいのは、損した気分にさせてしまったお客さんは、2度とリピートはしないと言うことです。
さらに言えば、悪い口コミは良い口コミの何倍も広がると言うことです。
寿司屋としては、その機会ロスは計り知れないものになります。
 
筆者が利用する寿司屋は地域でも人気店で出前の注文が多いです。
ですが、あまり出前注文を受けると来店してくれたお客さんのネタが無くなってしまうので、ほどほどのところで出前を断っています。
来店してくれるお客さんを大切にしたい気持ちなのです。
 
これは、バイキング料理でも同じです。
終了時刻に近い時間帯においても、人気メニューも含めテーブルいっぱいに料理がある店こそが、お客さんの立場になっている一流のお店なのです。
 
来店するまでにも、お客さんはコスト(お金・時間・手間)をかけているのです。
成功している飲食店のオーナーは、本能的にお客さんに共感(Empathize)しているのではないかと感じるところです。
価値とは体験すること、価値とは感じるものなのです。
寿司屋にしてもバイキングにしても好きな食べ物を好きなだけ選べることに体験価値があるのです。
 
価値に関してはこちらでも述べています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/08/01/083346

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Topic 47 日々の様子を深く知ることによる潜在的なニーズの発見

P&Gの「ファブリーズ」は、日頃洗うことができない衣類や布製品に対して、消臭・除菌を行うものです。
これは、日常生活を深く知ることから生まれた製品とのことです。
「ファブリーズ」の登場によって、洗えない衣類や布製品をスプレーで「消臭・除菌」するという新しい需要を生み出しています。
デザイン思考が新市場の開拓にも有効であることを示す好例と言える製品です。
 
このようなアプローチはエスノグラフィーと言われます。
もともとは、文化人類学、社会学で用いられているフィールドワークによる社会や集団を調査する手法です。その手法がビジネスの現場でも活用されています。
日常の生活やビジネスの日常でどんなことが起こっているのかをフィールドワークで知って、そこから潜在的なニーズを発見するのです。
コピー機のコピー開始のときのボタンが緑色なのはビジネスの現場で起きていることを知ることで生まれたアイデアです。
コピー機を操作するのに四苦八苦している様子をみて、どのボタンを押せばコピーが開始できるのか分かりやすくしたのです。
 
プロダクツやサービスを開発した人が想像もできないような行動を消費者はするのです。
そのような行動をしてしまう理由を知ることもイノベーション創出のヒントとなるのです。
デザイン思考では、お客さんを巻き込んだ新製品の開発を行います。その中でエスノグラフィーは常套手段とも言えます。
もっともデザイン思考などと言わずとも、お客さんの立場となったプロダクツやサービスを開発している企業の多くで行われていることでしょう。
 
外部の人間を巻き込むことによって、何を開発しようとしているのかの機密情報が洩れてしまうのではないか?と思われる方が居られます。
もとより、何を開発しようとしているのかを観察対象者に知らせないのが基本です。そのようなことを知られてしまって変に先入観を持たれて、いつもと違う行動をされては、元も子もないのです。
さらに言えば、他社が、どんな新製品を開発しようとしているのか知ったとしても、だからと言って、その新製品を開発できるかどうかは全く別次元の問題です。
 
顕在化したニーズと潜在的なニーズについては、こちらで述べています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/06/29/075854

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Topic 46 セブンプレミアムは「手軽さ」と「上質さ」のトレードオフであるという固定観念を捨てて実現した

コンビニエンスストアの価値はどんなところにあるでしょうか?
価値とは選ばれる理由です。
コンビニエンスストアで買い物をする理由は何ですか?と問われると「手軽さ」「便利さ」と答える方が多いのではないでしょうか。
 
流通業者が独自に開発した商品のことをプライベートブランドと言います。一方で、メーカーが開発した商品のことをナショナルブランドと言います。
プライベートブランドはナショナルブランドより割安感があります。
ところが、セブンプレミアムはプライベートブランドでありながらも割安感による「手軽さ」を最優先としないことに基本コンセプトがあります。
それよりは、「上質さ」を優先して追求することにしたのです。
消費者は、「手軽さ」だけでも、「上質さ」だけでも満足しないと発想したのが発端とのことです。
お客さんの立場で発想するとすれば、割安でなかろうと良いものであれば買うと言うことです。
コンビニエンスストアを利用するお客さんで「上質さ」を求めている人は少数派です。そこであえて「上質さ」を求める少数派をターゲットにしたということです。
 
プライベートブランドとは割安感があるものと言う固定観念を捨てたのです。
人はだれでも何かしらの「パラダイム」に囚われています。
それをあえて捨てて発想することも必要なのです。
 
参考文献 売る力 鈴木敏文(著)

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Topic 45 共感(Empathize)がどうして必要なのか?お客さんの期待に応えるには、お客さんをより深く理解することが必要

プロダクツもサービスもあふれている世の中では、ただ良ければ売れるというわけではないです。単に良いというだけなら十分に世の中にあります。
そこで、より深くお客さんのインサイトを理解して、顧客インサイトに合致した商品を開発する必要性があるということになります。
 
マーケティングでは「顧客インサイトを理解」と言います。「顧客インサイト」とは顧客の気持ちとか顧客の本音の意味で使われています。
「insight」の意味を調べると「洞察、眼識、識見」です。顧客の行動や発言から洞察して顧客の気持ちや本音を捉えると理解できます。
あるいは、「in sight」の意味を調べると「(…の)見える所に、視界に、間近」の意味です。顧客の気持ちを視界に捉えて理解するとすれば意味が通ります。
インサイトの言葉自体は、かなり曖昧な使われ方をしているのは否定できないです。
インサイトを「Think」思考、「Feel」感じる、「Interest」興味や関心、「Desire」望む、あたりに置き換えるとしっくりと来ます。
 
昨今では、ペルソナマーケティングと言われるマーケティング手法の活用がいろいろと行われています。
ペルソナとはある特定の人物像のことです。その人物像に的を絞って商品開発をし、マーケティングを行うと言うことです。
顧客セグメントではなく、どうしてペルソナなのでしょうか?
それは、特定の具体的な人物像の方が顧客インサイトを理解しやすいからです。
顧客セグメントのようなザックリとした人物像では共感(Empathize)は難しいのではないでしょうか。
「Think」「Feel」「Interest」「Desire」のような人の内面を理解する行為が共感(Empathize)なのです。
そのためには、 特定の人物像を想定する必要があるということです。
 
共感(Empathize)するには、ゲイン(gain)とペイン(pain)の2方向からアプローチをする方法があります。
ゲインとは得たいこと、ペインとは無くしたいことです。
自社のお客さん、あるいはお客さんになるかも知れない人には、どんなゲイン(gain)やペイン(pain)があるでしょうか?
 
ゲイン(gain)とペイン(pain)については、こちらでも述べています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/07/24/074029
 
共感については、こちらでも述べています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/06/25/094823

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Topic 44 お客さんの声を大切にしていますか?知らず知らずのうちにお客さんに見捨てられています!

自社のプロダクツやサービスに対しての忠誠心の高い顧客のことをロイヤルカスタマーと言います。ロイヤルカスタマーになってくれたお客さんは競合他社に心移りをすることはないのです。
クレームの連絡があったときは、クレームの対応次第でロイヤルカスタマーにしてしまうチャンスなのです。
クレームに限らず、問い合わせに対してきっちりと対応をすれば、お客さんから信頼を得られ、気持ちは大きく近づくことになります。
 
シンディ・アルバレス氏が著した「リーン顧客開発 ―「売れないリスク」を極小化する技術」にお客さんから問い合わせがあったときに4つの「A」で対応することが述べられています。
・Apologize 謝る
・Admit 非を認める
・Ask 質問する
・Appreciate 感謝する 
 
そもそもお客さんに電話をさせるような事態にしてしまったことは、デザインとしていけてないのです。
素直に非を認めて、お客さんが話しやすいようにするのです。お客さんに非があるように思わせるなんてもってのほかです。
そこで、どのような状況で、どのような使い方をしたのか話しを聴くチャンスができるわけです。お客さんの声にはイノベーション創出のヒントがあるかも知れません。
ほとんどのお客さんがサイレントマジョリティです。何も言うことなく、自社のプロダクツやサービスが見捨てられてしまうのです。
問い合わせを頂けたことに感謝をする気持ちが必要です。
 
筆者は、とある会社のカスタマーサポートに電話をしたところ「そのような事象の問い合わせは受けたことがないです」と言われたことがあります。だから対応するのは難しいような様子でした。
その後は、その会社の製品とは関わらないことにしています。
他社製品に乗り換えて、カスタマーサポートも親切な対応であり、良かったと思っています。
 
カスタマーサポートは、お客さんに対する姿勢を量るには、あまりにも分かりやすいバロメーターです。

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Topic 43 ニールセンのユーザビリティ特性、プロダクツの開発は使う人の立場になることが最重要課題

ニールセンはユーザビリティには5つの特性が備わっている必要があると説いています。
プロダクツに不満が生じるときは、次のうちのいずれかがいけてないと言われると納得感があります。これらの項目は人間の本質的な願望として満たされて当然と考えるべきでしょう。
・学習しやすさ 
 簡単に学習が出来ること。分厚いマニュアルは読みたいとは思いません。
・効率性が良い 
 使い方を覚えてしまえば生産性が良く、効率的にやりたいことが出来ること。
・記憶しやすい 
 しばらく使わなくとも、次も悩むことなく、すぐに使えること。人間は忘れる動物であることを前提に。
・間違いにくい 
 エラーの発生率は小さく、エラーが起きてしまっても回復可能で、致命的なエラーは起こらないこと。簡単にエラーが起きてしまうのはデザインがいけてないということ。
・主観的満足度
 楽しく使えて、満足感を得られること。体験価値は欠かせません。
 
D.A.ノーマン氏が著した「誰のためのデザイン?」には、印象深いフレーズが多く登場しますが、その中に人間中心デザインであるためには、使う人の「願望」「ニーズ」「能力」に合致する必要があると述べているフレーズがあります。
製品は人が使うことが大前提です。人間中心デザインはデザイン思考の基本です。
機能を実現することばかりに囚われて、人が使うことが前提になっているとは言えなくなっていませんでしょうか。

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Topic 42 お客さんからの声は十人十色です。そこで、どのように対応しますか?

日頃、仕事をしていればお客さんからいろいろな声が聞こえてきます。
十人十色です。それぞれに置かれた状況、コンテキスト(context)によりけりでもあります。
 
ぞれぞれに違ったニーズがあるように聞こえたとしても、実は同じモノを求めているのかも知れません。
逆もしかりです。同じモノを求めているように聞こえたとしても、それぞれに違うニーズがあるのかも知れません。
 
居酒屋を例にします。
居酒屋でお酒を飲む人は様々ですが、楽しいひと時を求めているのは同じです。
居酒屋を宴会の会場として利用する行為は同じでも、そこで何を成し遂げたいかはお客さんによって異なります。
 
要するに、お客さんの声をそのまま受け取らないことです。
どうして、そんなことを言っているのか、一歩踏み込んで、何を求めているのか?お客さんのニーズは何なのかを考えるプロセスが必要なのです。

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Topic 41 デザイン思考は新市場の開拓に向いていないのか?

市場を大きく2つに分けるとします。
・既存の市場
・新市場
 
デザイン思考の根源的なところは「人間中心」「人間が起源」にあります。
なので、お客さんの声を聴いたり、お客さんの様子を観察したりします。
今いるお客さんを対象にすれば、既存の市場に対するイノベーション創出となりましょう。
 
そこで、デザイン思考は新市場の開拓に向いていないのか?と問われるとすれば、答えは「NO」です。
新市場の開拓にも使えるメソッドだからです。
 
デザイン思考のプロセスは、いくつか示されているが、だいたいは同じです。
「共感」「問題定義」「創造」「プロトタイピング」「テスト」の順と捉えて頂いて大丈夫です。
 
ポストイットを例にします。
発端は教会にいる人の行動観察からです。
教会にいる人が本に挟んであるしおりを落としている様子を見たのが始まりです。
言うまでもなく、挟んであるだけなので落としてしまうのです。誰もが経験があると思います。
 
ポストイットに至る経緯がデザイン思考のプロセスになっています。
「共感」、教会にいる人に対しての共感で、挟んであるしおりが落ちなければ快適に本を読むことができるはずと気づきを得る。
「問題定義」、挟んであるしおりが落ちないようにする。
「創造」、貼ったり、はがしたりを繰り返して行えるしおりを開発する。
 
もとはと言えば、強力な接着剤を開発するはずが、弱い接着剤を偶然に開発してしまって、どうしたらいいのかと思っていたときの発想とのことです。
ポストイットはしおりの役目にとどまらず、メモ用紙やブレインストーミングのアイデア出しなどにも使われています。
ポストイットをしおりと言う人はいないです。ポストイットはポストイットです。しおりとしても使える便利な事務用品と言うことなのです。
今となっては、ポストイットは事務所に欠かせない存在であり、ポストイットの市場ができています。
 
マーケテイングリサーチをすれば、ポストイットの需要を発見することができたでしょうか?
きっと、答えは「NO」です。
 
デザイン思考は、マーケテイングリサーチでは発見できない需要を顕在化するメソッドです。
メソッドなので、それを活用する人次第なのです。それはデザイン思考に限った話しではないですね。
 
以前、革新的なイノベーションでなくともデザイン思考は活用できることを投稿しました。
こちらもご参照ください。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/08/02/080951

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Topic 40 ガーリーテストによる持続的な競争優位性を求める方程式

ベンチャーキャピタリストであるビル・ガーリー氏が提言するガーリーテストがあります。
そのガーリーテストに持続的な競争優位性の項目があります。
持続的な競争優位性は、「顧客価値×独自性×模倣困難性」で求められるとのことです。
 
顧客価値とは、顧客にとってのメリットやベネフィットです。
独自性とは、顧客から見て異質な存在に見えるかどうかです。どれだけ尖がって見えるかです。
模倣困難性とは、競合他社のただ乗りリスクの回避です。
 
この式の顧客価値と独自性と模倣困難性は、VRIO分析のVRIに置き換えて見ることが可能です。
VRIO分析とは、経営資源の力を量るバロメーターです。
・Value(経済価値) 市場に対して経済的な価値を生み出せるのか?
・Rarity(希少性) 経営資源を保有する競争相手は少ないのか?
・Inimitability(模倣困難性) 経営資源を他の競争相手が模倣するのは困難か?
・Organization(組織の有効活用性) 経営資源を活用できる組織を保持できているのか?
 
顧客価値、独自性、模倣困難性は「人」にも依存するものでもあります。
接客の重要要素に、「目配り」「気配り」「心配り」があります。これは言うまでもなく属人的であり、相当の教育と経験がなければ高いレベルに上げることはできず、模倣は困難です。
お客さんに対して、この店ならではと独自性を感じさせ、体験価値を提供するものです。
また、製造業であれば従業員が持っているノウハウや技術は他社が真似できるものではなく、顧客価値、独自性、模倣困難性を生み出す源泉となります。
 
「人」を大切にして、育てることは企業の成長に欠かせないのです。
従業員による日々の試行錯誤が継続的なイノベーションにつながるのです。
試行錯誤こそがデザイン思考そのものとも言えます。
 
デザイン思考の根源的なところは「人間中心」「人間が起源」にあります。
ここでの「人間」とは、お客さんに限ったことではないのかも知れないのです。
 
メリットとベネフィットについては、こちらでも述べています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/08/01/083346
 
VRIO分析については、こちらでも述べています。
http://nakanomasashi.hateblo.jp/entry/2017/08/04/073328
 

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